カタログに見つけた、二つのヒント
「クルーク」
「はい。お父様。どうしましたか?」
父が一冊の冊子を持って、私のところへやって来た。
「商人からカタログが手に入った」
「カタログ?」
「少し古い物だがな」
父は私に冊子を渡す。
「以前、お前が市場にある商品を知りたいと言っていただろう?」
「あ!」
そういえば頼んでいた。
この世界で、どんな商品が売られているのか。
何が普通に手に入り、何が珍しいのか。
それが分かれば、新商品を考えるヒントになる。
「何かのヒントになるかと思って、商人に頼んでおいた」
「ありがとうございます!」
私は両手で受け取る。
「お借りします!」
「うむ」
父は満足そうに頷く。
「これで世の中の市場状況が分かるかもしれん」
「なるほど!」
私はカタログを持ち上げる。
「中々良い物を手に入れましたね!」
「やるな! お父様!」
「……なぜお前が偉そうなんだ?」
「気にしないでください!」
さてさて。どんな商品が載っているのかな?
私は早速、ページをめくる。
「まずは……日用品か」
鍋。食器。衣類。道具。
「…………」
「うーん」
思ったより少ない。
いや。これは載っている物が少ないのか?
それとも――
「載せる必要がないほど、普通の物しかない?」
日用品なんて、わざわざカタログで紹介する必要がないのかもしれない。
「これは……あまり参考にならないかな」
さらにページをめくる。
「次は……金属類」
鍋。工具。金具。釘。
「これは……」
続いて鉱石。鉄。銅。銀。その他の鉱石。
「うーん……」
パンパ領でも砂鉄は採れけど、鉱石そのものを大量に売るのは難しい。運ぶのが大変だからだ。
「これも、今すぐには使えないかな」
さらにページをめくる。
すると――
「ん?」
そこに載っていたのは。
「磁石?」
「磁石があるんだ」
磁石。これは知っている。前世でも普通にあった。鉄を引き寄せる物。
「なるほどねぇ」
そして、その下には別の商品が並んでいた。
「液体?」
なんだこれ?液体?
液体って分類するものなの?
「液体肥料もあるのね」
へぇ。肥料まで商品として売っているのか。
「なるほど……」
さらに見ていく。
「酸に、酢……」
酢も液体。酸も液体。
「漆……」
これも液体。
「…………」
「まあ、液っちゃー液体だけど……」
なんか分類がおかしくない?私は首を傾げる。
「液体って、そんなに大雑把な分類なの?」
それでもカタログを読み進める。
そして――ふと、ページを戻した。
「…………」
磁石。
「…………」
酸。
「…………」
私は二つの商品を交互に見る。
そして――
「……ん?」
何かが頭の中で繋がった。
磁石。酸。
「…………」
これ。もしかして――
「…………ふふ」
自然と口元が緩んでいく。
「ふふふ……」
私はカタログを見つめながら、ニヤリと笑う。
これは――いけるかもしれない。
「…………ふふふふ」
世にも悪巧みをしているような顔。
それを――たまたま部屋の入り口から見てしまった人物がいた。
「…………」
リヒトだった。
「…………」
クルークを見る。
ニヤニヤしている。カタログを見ている。
そして――
「ふふふ……」
もう一度、不気味に笑った。
リヒトはそっと後ずさる。
「…………こえー」
小さく呟く。
「絶対に、何か企んでる……」
そして、何も見なかったことにして――そっと、その場から離れていった。




