祖父が連れてきた三百人
ペラペラ。
「…………」
私は、お祖父様の日記を読み進める。
そして――
「……あった」
奴隷について書かれている部分。
そこには、短くこう書かれていた。
奴隷と契約を結ぶ。二百名。
「…………」
私は固まった。
「二百名!?」
思わず声が出る。二百人?そんなに!?
パンパ領の最初の開拓者って、確か三百人くらいだったはず。
ということは――
「開拓に来た人のほとんどが奴隷……?」
私は日記を見つめる。でも、何だろう?
なんとなく引っかかる。
「……お年寄り?」
さらにページをめくる。
「子供?」
そして――
「怪我人に、病人……?」
日記には、契約した奴隷たちについて細かく書かれている。年齢もバラバラ。体力にも差がある。当然、働ける量も違う。
「…………」
私は考える。
何故?これから開拓を始めることを分かっているのに?山の中。道もない。家もない。畑もない。そんな場所を開拓するなら――若い人。
体力のある人。働ける人。
そういう人を集めた方がいいに決まっている。
「なのに……」
どうして?わざわざ働けない人まで?
私は日記を読み返す。
そして――ある可能性に気づいた。
「まさか……」
私は呟く。
「わざと……働けない人を?」
父が言っていた。
奴隷とは――借金を返すために働く制度。
働いてお金を返す。返済できれば自由になる。
「でも……」
お年寄り。子供。怪我をしている人。病気の人。
「……働けないよね」
少なくとも、普通の人と同じようには働けない。そんな人たちは、借金を返すことができない。だったら――
「ずっと奴隷のままになる……?」
私は日記を見る。
お祖父様が契約した二百人。もし、その中に本当に働けない人たちが多く含まれていたのだとしたら。
「……お祖父様は」
わざわざ、その人たちを選んで契約した?
いや。それなら理由は一つしかない。
「……助けるため?」
私は椅子から立ち上がる。
これなら分かる。お祖父様は開拓をする。
人手が必要。でも、働けない人たちには行き場がない。借金を返すこともできない。
だから――自分の領地で暮らせるようにした。
働ける者には働いてもらう。働けない者には、できる範囲の仕事をしてもらう。
そして、食事と住む場所を与える。
「…………」
私は日記を見つめる。
二百人。開拓のために集めた人数だと思っていた。でも――もしかすると。
「お祖父様は、三百人を助けたのかもしれない」
もちろん、日記を全部読んだわけじゃない。
まだ確定ではない。だけど――
「どうやら……」
私は小さく笑う。
「お祖父様は、良い人に違いない!」
なんだか嬉しくなってきた。
いつも書庫に残してくれていた本。
領地の始まりを書いた日記。
そして――二百人もの人たちを、この山奥へ連れてきたこと。
「お祖父様……」
私は日記をそっと閉じる。
「今度会ったら、もっと色々聞いてみよう」
パンパ領が、どうやって始まったのか。
そして――お祖父様が、どうして二百人もの奴隷と契約したのか。まだまだ知らないことがある。
でも、一つだけ。私は確信し始めていた。
私のお祖父様、結構いい人なのかもしれない。




