商品より先に、人手が足りない
さてさて。集落ごとの距離については、まだ分からない。まあ、あれだけヒントを出したんだ。あとは大人たちが考えてくれるだろう。
私が四歳児だということを考えれば、十分すぎるほど仕事はしている。
……うん。しているよね?
「まあ、何とかなるでしょ」
木の鎖が集落同士を繋ぐことができれば、物流コストはかなり軽減できるはずだ。
今までは人が運んでいた。当然、人が動けば食事も必要だし、時間もかかる。
それに山道。平地とは違って、移動そのものが大変だ。木の鎖なら、最初に設備を作る必要はある。その後も、木材の交換や修理など多少の維持費はかかるだろう。
それでも――
「人件費よりは安くなるだろうな」
しかも、一度整備してしまえば、何度でも使える。パンパ領のような山間部では、かなり重要な設備になるはずだ。
「さて……」
問題は、次だ。
新商品については、これからさらに商人へ卸していく。固形炭。炭ペン。椿油。椿油石鹸。紙。そして、最近作られた便利な道具。
まだまだ売上は伸びるだろう。
「更なる売上が見込める……と」
うん。お金は増える。なら――
「次の手は何だ?」
私は考える。
この領地には、まだまだ売れる物があるはずだ。木。竹。椿。炭。山菜。キノコ。それ以外にも、私が知らないだけで資源はたくさんある。
「となると……」
新商品。新商品。新商品。
「…………」
ふと、あることに気づく。
「……人手か?」
商品を増やせば、当然それを作る人が必要になる。今だってそうだ。炭を作る人。炭ペンを作る人。椿の種を集める人。椿油を作る人。石鹸を作る人。瓶を作る人。木箱を作る人。紙を作る人。木の鎖を作る人。そして、今後はさらに増える。
「……人手が足りなくなるんじゃない?」
今はまだ何とか回っている。
でも、商品が売れれば売れるほど――生産量を増やす必要がある。生産量を増やすには、人が必要だ。
「人手を増やすって言ってもなぁ……」
パンパ領の人口は、約千人。
しかも、その全員が働けるわけではない。
子供もいる。老人もいる。農業や林業をしている人もいる。生活に必要な仕事だってある。
「単純に、人を増やせばいいって話じゃないよね」
そもそも――
「人って、どうやって増やすの?」
移住してもらう?近隣の領地から人を呼ぶ?
それとも――今いる人たちが、もっと少ない時間で多くの仕事をできるようにする?
「…………」
最後の方が、パンパ領には合っている気がする。木の鎖だってそうだ。人が荷物を運ぶ仕事を減らした。紙だってそう。記録を木板から紙に変えれば、運ぶ量も減る。
便利な道具もそう。
一つ一つは小さな改善でも、積み重なれば大きな差になる。
「だったら……」
新商品を増やすだけじゃない。
一人あたりの仕事量を減らしながら、生産量を増やす。これも大事なんじゃないか?
「……生産性を上げるってことか」
前にもやった。でも、まだまだできることはあるはず。
「そう考えると……」
私は領館の中を見回す。
「この領地、まだまだ改善できるところだらけじゃん」
最初は金がなかった。だから何もできなかった。今は違う。お金もある。商品も売れる。
設備にも投資できる。
「だったら――」
次は、人を増やす前に、人がもっと楽に働けるようにする。これだ。
「……うん。次はそこを考えてみよう」
ただし。私は四歳児。
自分で全部やるつもりは――
「もちろん、ない!」
うん。ここは大人と職人さんたちに頑張ってもらおう。
私はアイデアを出す係。実際に作るのは――
「リヒトさん、よろしく!」
……まだ何も言ってないのに、どこかでリヒトが「げっ」と言った気がした。




