利益の使い道と、次の物流改革
「へ?」
父から呼び出された私は、思わず間の抜けた声を出した。
「商品の売れ行きは、上々だ」
「良かったですね!」
「うむ。さらに、新商品もこれから卸し始める予定だ」
「それなら、もっと売上が増えそうですね!」
「そうだ」
父は頷く。
そして――少し真剣な顔になった。
「そこでだ、クルーク」
「はい?」
「この利益を、領内への投資に使いたい」
「はぁ?」
思わず首を傾げる。
投資?そりゃ、いいことだと思うけど。
「良いことだと思いますが?」
「問題は……」
父が腕を組む。
「何処に、いくら予算を回した方が効率的なのか、ということだ」
「…………」
なるほど。この感じは……貧乏で金がなくて四苦八苦していたのに、ようやく金が入るようになったら――今度は、何に使っていいのか分からないってことね。
「……なるほど」
「何か思いつくか?」
「そうですね……」
私は少し考える。
まず思いついたのは――
「木の鎖ですが」
「木の鎖?」
「今は、第一集落内での運用が中心ですよね?」
「そうだな」
「出来れば、他の集落にも広げたいです」
「それなら今、進めているぞ」
「え?」
「第二集落、第三集落にも木の鎖を導入する予定だ」
「いえいえ」
私は手を振る。
「それはもちろん、やっていただきたいのですが」
「では、何だ?」
「集落そのものを繋ぐんです」
「…………」
父の動きが止まった。
「え?」
「第一集落と第二集落、それから第三集落自体を、木の鎖で繋ぐということです」
「……集落と集落を?」
「はい」
私は頷く。
「私には、それぞれの集落がどれくらい離れているのか分かりませんけど」
そう。私はまだ四歳。
パンパ領の三つの集落を全部見て回ったことなんてない。
「可能な限り繋げられれば、集落同士の物の移動がかなり効率よくなると思います」
父は黙って考え込む。
「…………なるほど」
「木の鎖なら、既に実用化できています」
「確かに」
「だったら、それを領内全体の物流に使えないかなって」
「…………」
父は地図を見る。
パンパ領は山に囲まれている。集落と集落の間にも、山道がある。距離だけではない。
高低差もある。
「集落同士を繋ぐとなると……」
父が地図を指でなぞる。
「かなり長いものになるぞ」
「そうでしょうね」
「山の斜面もある」
「そこは木の鎖を分割すればいいんじゃないですか?」
「分割?」
「一つの長い鎖にする必要はありません」
私は机の上に指で線を描く。
「途中に中継地点を作って、そこから次の木の鎖へ繋げればいいんです」
「…………」
父の目が少し大きくなる。
「つまり……」
「第一集落から中継地点まで」
指を動かす。
「そこから次の中継地点まで」
さらに動かす。
「そして第二集落へ」
「…………」
「第三集落も同じように繋げられれば、集落間の物の移動が楽になると思います」
父はしばらく地図を見つめていた。
「……これは、一度調べる必要があるな」
「はい」
「距離だけではなく、高低差や設置場所も調べなければならん」
「そうですね」
「それに、途中で木の鎖を支える設備も必要になる」
「そこは職人さんたちに考えてもらいましょう!」
「……そうだな」
父が頷く。
「可能かどうか、まず調べてみる」
「お願いします!」
これなら、今までよりずっと物を運びやすくなる。そして――集落同士の距離が縮まれば。
商品だけじゃない。食料も。木材も。道具も。
人の行き来だって、今より楽になるかもしれない。
「……クルーク」
「はい?」
「お前は、本当に四歳なのか?」
「…………」
またそれか。
「四歳です!」
私は即答した。
「そうか……」
父は苦笑する。
「では、次は何を考える?」
「え?」
「せっかく利益が出たんだ。ほかにも投資すべき場所があるのだろう?」
「…………」
うーん。そう言われると……屋根の修理。道路の整備。木の鎖。紙。工房。
まだまだありそう。
でも――お金があるって、やっぱり楽しい!
私はニヤリと笑った。
どうせなら、パンパ領をもっと便利にして――もっともっと稼げる領地にしてやろうじゃない!




