針金で、洗濯ばさみを作ろう
数日後。
「……ん?」
私は、お父様の机の上に置かれていた物を見つけた。丸く纏められた、細い鉄の線。
「おー!」
私は思わず声を上げる。
「針金だ!」
わざわざ届けてくれたんだ!
私は針金を手に取ってみる。
細い。ちゃんと丸められている。
「やったぜ!」
そして、一緒に置かれていた木板を見る。
そこには、鍛冶屋さんからの返事が書かれていた。
『変わった物を聞いてくるな?』
『何で気になるか分からんが、これぐらいならあげるぞ!』
「…………」
私は笑ってしまう。
なんだ、この回答。
でも――。
「グッジョブ! 鍛冶屋さん!」
ありがとう!これで色々作れる!
さて……。
「まずは、お兄様に工作を頼むと!」
◇
「ブレイお兄様!」
「ん? どうした、クルーク?」
私は木片と、針金。
そして自分で描いた絵を持って、お兄様のところへ向かった。
「この木片で、私が書いた絵の物を削ってください!」
「何だこれ?」
お兄様が絵を見る。
「洗濯ばさみってのを作りたいです!」
「洗濯ばさみ?」
「はい!」
「洗濯に使うのか?」
「干す時に使います!」
私は絵を指差して説明する。
二枚の木を組み合わせて、中央を動くようにする。そして、その周りに針金を通してバネの代わりにする。
「これぐらいなら、すぐに削れるな」
「お願いします!」
「任せろ」
ブレイお兄様は木片を手に取る。
ガリガリガリ……。
器用に木を削っていく。
「この穴に木を通して、動くようにするのか?」
「そうです!」
「なるほど……」
さらに削って形を整える。
「そして最後に、この針金を輪っかのように通します」
「ほうほう……」
お兄様が針金を曲げて、木の部品に取り付ける。
「出来たぞ!」
パチン。
木の先端が閉じる。
「確かに挟めるな!」
「洗濯ばさみの完成です!」
「これ、結構面白いな」
お兄様も気に入ったようだ。
「何個か作れますか?」
「簡単だから出来るぞ!」
「お願いします!」
こうして――数個の洗濯ばさみが完成した。
「よし!」
私はそれを持って、今度はお母様のところへ向かう。
◇
「お母様!」
「なに?」
「これ、使ってみてください!」
「これは……?」
私は洗濯ばさみを渡す。
「洗濯ばさみです!」
「洗濯ばさみ?」
「はい!」
「何に使うの?」
「洗った服を干す時に使ってください!」
私は実際に布を挟んでみせる。
パチン。
「こうやって挟んでおけば、風が吹いても落ちにくくなります!」
お母様は洗濯ばさみをじっと見る。
「…………」
そして――。
「便利そうね!」
「はい!」
「使ってみるわ!」
「お願いします!」
よし!これでいい!
便利なら、お母様がきっと気づく。
そして――。
「たぶん、お母様が指示を出すはず!」
私はニヤリと笑う。
一つの商品を作る。
というより――生活の中の「ちょっと不便」を一つ解決する。それだけでも、領地の暮らしは少しずつ変わっていく。
「……こういうのも、悪くないな」
私は新しい発見に満足しながら、その場を後にした。




