鉄から、針金を作れる?
「来た!」
私は、お父様の机の上に置かれていた木板を手に取る。
鍛冶屋さんからの回答だ!
さっそく読んでみる。
『作れる物は、鍋、農具、工具など。物によるが、鉄を多く使う物は時間が掛かる。鉄は砂鉄というのを川から採るぞ!』
「…………」
私は木板を見つめる。
「うむ」
なんというか……。
「子供が聞いて、子供が読んで分かるように書いてるのが丸分かりだわ」
まあ、そりゃそうか。
領主の子供からの問い合わせ。
難しい言葉を並べても分からないだろう。
「こんな感じで分かるかな?」
くらいの感覚で答えてくれたんだろう。
私はもう一度、木板を見る。
鍋。農具。工具。大体の物は作れるらしい。
そして――。
「砂鉄」
川から採れる。
「砂鉄ってことは……」
私は前世の記憶を探る。確か、日本にも昔から砂鉄を使った鉄作りがあった。
「たたら……みたいな感じなのかな?」
実際の製鉄方法なんて、詳しくは知らない。
動画やテレビで見た程度だ。
でも、砂鉄から鉄を作るというのなら、イメージとしては近そうだ。
「うーむ」
実際に見てみたい。
どんな場所で砂鉄を採っているのか。
どうやって鉄にしているのか。
どんな炉を使っているのか。
「……でも」
私はため息をつく。
「絶対、見学は却下されるよね」
四歳児が製鉄現場へ行きたい。
火もある。熱い鉄もある。重い道具もある。
「危ないから駄目!」
そう言われる未来しか見えない。
なら、今は無理に見に行く必要はない。
まずは、分かる範囲で調べればいい。
「小物なら、結構作れそうだし……」
鍋や農具が作れる。
ならば、もっと小さな鉄製品も作れるはず。
「だったら……」
私は木板を取り出す。
「まず、針金は作れますか?」
針金。細い鉄線。
これが作れるなら、色々と使い道がある。
木の鎖にも応用出来るかもしれない。
道具にも使える。細かい製品にも使える。
「これは聞いてみる価値がある」
もちろん、作り方までは聞かない。
まだそこまで踏み込むと怪しまれる。
「針金って作れる?」
まずは、それだけ。私は木板に書き込む。
そして――。
「これも、お父様の机に置いておけばいいか」
前と同じだ。お父様の机に置いておけば、そのうち鍛冶屋さんへ届く。
そして回答が戻ってくる。
「便利だな、これ」
わざわざ私が鍛冶屋へ行かなくてもいい。
私は木板をお父様の机の上へ置く。
「さて……」
あとは回答待ち。針金が作れるのか。
それとも、そんな細い物は無理なのか。
「どっちかな?」
私は少し楽しみになりながら、返事を待つことにした。




