紙作りの道具を改良しよう
「リヒト!」
「はい?」
ストラグルは、机の上に置かれた紙を指差した。
「これを再現させる」
「紙を、ですか?」
「ああ」
この紙を作るために使われた道具。
石臼。繊維をすくう道具。それ以外にも、クルークが適当に用意した物があるはずだ。
「恐らく、石臼やら、すく道具やら……クルークがどこかから使っていない物を探して、無理やり作った物だろう」
「なるほど……」
「ならば、その道具をしっかりした物に変えるだけでも、完成品が変わるかもしれん!」
今ある道具は、あくまで試作品。
もっと使いやすい道具を作れば、作業そのものが楽になる。
そして、生産量も増えるかもしれない。
「確かに」
リヒトも紙を眺める。
「クルークお嬢様なら、物置から探し出したのかもしれませんな」
「だろうな」
ストラグルは頷く。
「よし。職人を探してくれ」
「職人ですか?」
「手先の器用な者を数名だ」
紙作りの道具を作る。繊維を細かくする道具。
すくための道具。乾燥させるための道具。
それぞれを、実際の作業に合わせて改良していく。
「……私が?」
リヒトが自分を指差す。
「えー。私が探すんですか?」
「料理だけしていても、飽きるだろ?」
「いやいや!」
リヒトは慌てて首を振る。
「クルークお嬢様から、椎茸菌を大量に作って、原木を作れって言われていますし……」
「……そうなのか?」
ストラグルが振り返る。
「はい」
リヒトは遠い目をする。
「椎茸栽培を軌道に乗せて、干し椎茸まで作れと……」
「…………」
ストラグルは少し考える。
そして――。
「待て」
「はい?」
「なら、同じく乾燥させる場所が必要なら、同じようなものだ!」
「……え?」
「椎茸も紙も、乾燥させる必要がある」
「…………」
「なら、乾燥場所をまとめて作ればいい」
「…………」
リヒトの顔が引きつる。
「げぇ……」
「何だ?」
「仕事が増えてません?」
「領地のためだ」
「そうですけど……」
リヒトは深いため息をつく。
料理人だったはずなのに。いつの間にか、椎茸を育て。紙まで作ることになっている。
「……私、料理人なんですが」
「知っている」
「ですよね?」
「だからこそ頼んでいる」
「どういう理屈ですか!?」
ストラグルは気にせず紙を見る。
「まずは職人を集めるぞ」
「……はい」
こうしてリヒトは、紙作りの道具探しと、椎茸栽培と、乾燥場所の確保という――さらなる仕事を抱えることになった。




