紙があれば、木板はいらない
まあ、初めてにしては、なかなか上手くいったんじゃないかな?
私は完成した紙を手に取り、眺めてみる。
薄い。少し色もついている。
表面も、まだ綺麗とは言えない。
でも――。
「文字は書ける」
これなら十分。少なくとも、今まで使っていた木板よりはずっと扱いやすい。
「量産はまだまだ先だとしても……」
私は、積み上げられた木板を見る。
これを紙に置き換えることが出来れば――。
「嵩張らなくて済むわ」
木板は、とにかく場所を取る。
一枚一枚が厚い。何枚も積み上げれば、それだけでかなりの量になる。
それに比べれば、紙ならずっと薄い。
大量に作っても保管しやすい。
「よし」
私はさっそく、紙の横に製造方法を書いていく。
材料。使った植物。細かくする方法。
灰を加えること。煮込む時間。
水で繊維をほぐすこと。すくい上げる方法。
乾燥させる方法。
「……こんな感じかな」
もちろん、正確な時間までは分からない。
今回は試作品だ。
だからこそ、実際に作った手順を出来る限り残しておく。
「これを……」
紙と製造方法を書いた試作紙にまとめる。
「お父様に提出!」
あとは――。
「お父様、判断よろしく!」
丸投げである。
私が出来るのは、ここまで。量産するなら、職人さんたちに任せた方がいい。
もっと効率の良い方法を見つけてくれるかもしれない。
「これが上手くいけば……」
私は、もう一度木板を見る。
今、領内では書き物をするためにも木板を使っている。
報告書。記録。指示書。帳簿。
そういうものに使っている木板を紙に置き換えられれば――。
「その分の木材を、製品に回せるかな?」
固形炭。炭ペン。木の鎖。小箱。
他にも、木材を必要とする商品は多い。
紙の材料は、今回使った雑草に近い植物。
領内にはいくらでもある。
「これなら、他の商品と材料がぶつからない」
木材を取り合う必要もない。
もちろん、紙を大量生産するようになれば別の問題も出てくるかもしれない。
でも、少なくとも今のところは――。
「悪くないね」
私は完成した紙を眺める。
一つの商品を作るために、別の商品を犠牲にする。
それでは意味がない。使っていない資源から、新しい商品を作る。そして、今まで使っていた資源を別の場所へ回す。
「これも領地開発ってことかな」
私は満足して頷いた。あとは――。
「お父様、頑張って!」
やっぱり、最後は大人に丸投げである。




