紙作りの実験
「うむ……」
紙を作る。
そう決めたものの、どうやって作るか。
クルークは腕を組んで考えていた。
そして――。
「あっ」
ふと思い出した。前世でホームセンターに勤めていた頃、子供たち向けの夏休みイベントで、紙作りをしたことがある。
確か……。
「ススキから紙を作ったことがあるな」
もちろん、専門的な製紙方法まで知っているわけではない。
だが、基本的な流れなら覚えている。
「ススキ……じゃなくても、繊維質の多い雑草なら使えるか?」
領内には雑草など、いくらでもある。
問題は木材。
そして――。
「木の灰なら、恐らく腐るほどある」
木を大量に使う領地だ。
薪を燃やせば灰も出る。
これなら材料として使えるかもしれない。
「細かく刻んで……」
そこで少し考える。
「いや。石臼で細かくした方がいいか」
繊維を細かくする。
それから、灰を使って一緒に煮込む。
その後、灰汁を取り除いて、水に溶かす。
そして――。
「すく」
前世で見た光景を思い出す。
すく。水を切る。乾かす。
「……これで出来るはず」
たぶん。
「……実験してみるか」
書庫で植物図鑑を見てみたけど流石に繊維質が多いとかまでは書いて無かったから。
となるとまずは、身近にある雑草を集める。
「これと……これも使えそうだな」
何種類か集めてみる。
同じ方法で作って、どれが紙になりやすいのか比べてみればいい。
「とりあえず、やってみよう」
こういう時は、頭で考えるより実際に作った方が早い。
◇
集めた草を細かくする。
石臼に入れて、少しずつ潰していく。
「……結構、大変だな」
思ったより力が必要だ。
それでも、何度も石臼を回す。
細かくなった繊維を鍋に入れ、灰を加える。
そして水を入れて煮込む。
「さて……どうなるか」
しばらくしてから取り出し、灰汁を落とす。
残った繊維を水の中へ。
「これを……すく」
簡単な道具を使い、水の中から繊維をすくい上げる。
薄く広げる。
「……」
水が落ちていく。
残った繊維が、薄い膜のようになっていく。
「これを乾かして……」
まだ紙とは呼べない。だが――。
「……ちょっと、それっぽいな」
乾燥したものを、そっと持ち上げる。
薄い。少し色もついている。
表面も綺麗ではない。
それでも――。
「紙……なのか?」
私は指先で触れてみた。
破れない。試しに文字を書いてみる。
「……書ける」
思わず笑みがこぼれた。
完璧な紙ではない。真っ白でもない。
けれど――。
「これなら、記録には使える」
紙作りの第一歩。
どうやら、踏み出せたようだ。




