捨てられていた木から、新しい燃料を
とは言え。お母様の反応を見る限り――。
炭を作るだけでは、いまいち反応が良くない。
「…………」
そりゃそうか。炭を作って、それを売る。
私にとっては普通のことでも、この世界の人からすれば、
「わざわざ木を炭にして何になるの?」
という話なのだろう。
なら――付加価値を付ければいい。
炭そのものではなく。
「今まで捨てていた炭を、使いやすい商品にする」
そうすれば、価値が生まれるかもしれない。
「うーん……」
何か使えそうな物はないか。
そう考えた私は、家の横にある倉庫へやって来た。
ここには、使わなくなった道具や古い農具などが色々と置かれている。
何か使える物はないかな?
「…………」
すり鉢。いや。大きさが足りない。
もっと何か――。
「お?」
あった。
「薬研!」
昔の道具だ。
薬草などをすり潰すために使うもの。
これなら使えそう。
「これでいいか」
私は調理場から、少しだけ炭をもらってきた。
そして薬研に入れる。
「よいしょ……」
ゴリ。ゴリゴリ。ゴリゴリゴリ。
「…………」
意外と力がいる。
四歳児の身体には、なかなかの重労働だ。
「何してるんだ?」
突然、声がした。振り返る。
そこにいたのは――。
「お兄様!」
ブレイだった。
「それ、何だ?」
「炭を砕いてます!」
「炭を?」
「はい!」
ブレイは不思議そうに薬研を見る。
「何するんだ? そんなの」
「新しい燃料を作ります!」
「へー」
思ったより反応が薄い。
まあ、まだ何をするのか分からないから仕方ない。するとブレイが、
「俺も手伝う!」
と言った。
「お願いします!」
助かる!この身体。やっぱりすぐ疲れる。
炭を砕くだけでも、かなりの重労働だ。
私は薬研を兄に渡した。
「では、お兄様。お願いします!」
「任せろ!」
ゴリ。ゴリゴリ。ゴリゴリゴリ。
「…………」
やっぱり私より大人。力は凄い。
私はその間に、別の準備をする。
調理場へ行き、小麦粉と水を用意してもらう。
それを火に掛けてもらう。
「もう少し……」
混ぜる。混ぜる。すると――。
「よし」
小麦粉が水に溶けて、粘りのある状態になった。
これでいい。私は兄のところへ戻った。
「お兄様!」
「おう!」
「砕けました?」
「こんなもんかな?」
薬研の中を見る。
「まあ……ちょっと荒いけど」
炭の細かな欠片が大量にできている。
これなら十分だろう。
「それはお湯か?」
「小麦を溶かして、のりにしました!」
「へー」
ブレイが興味深そうに覗き込む。
「で、どうするんだ?」
「この砕いた炭に入れて、混ぜます!」
「これを?」
「はい!」
私は炭に小麦粉のりを少しずつ加えていく。
「お願いします!」
「分かった!」
兄が両手で混ぜ始める。
コネ。コネコネ。コネコネコネ。
「おっ」
炭の粉が、少しずつまとまっていく。
「固まってきたぞ!」
「そうです!」
いい感じだ。
次に――。
「これに入れてください!」
私が持ってきたのは、小さな四角い木枠。
「この中に入れて、押し固めてください!」
「分かった!」
炭の混合物を木枠に詰める。
そして――。
「ギューーー!」
兄が力いっぱい押し固める。
「こんなもんか?」
「はい!」
木枠をひっくり返し、トン。
「ほい!」
ポコッ。
「おー!」
出てきたのは――。
「真四角の炭だ!」
そう。炭の粉を固めたもの。
今までなら細かすぎて使いにくかった炭の欠片。それを一つにまとめた。
「これを燃やすわけか?」
「はい!」
私は頷く。
「乾いてから燃やします!」
「なるほどなぁ……」
兄が四角い炭を手に取る。
「…………」
そして、少し考えた後。
「これって、すごくないか?」
「え?」
「今までなら細かくて使えなかった炭まで、全部使えるぞ!」
「…………!」
そう。そこだ。私が作りたかったのは、それ。
木を炭にする。それだけなら普通。
でも――炭を作るときには、どうしても細かな欠片が出る。
普通なら使いにくい。なら、固めればいい。
「どうです?」
私は兄を見る。
「すげーいいと思う!」
よし!第一関門突破!
「これなら商品に出来るのでは!」
「本当に?」
「うん!」
兄と二人で四角い炭を眺める。
……ただ。一つ問題がある。
「…………」
私も兄も顔も服も手も――真っ黒だった。
「ちょっと、二人とも!」
突然、声がした。振り返る。
そこにいたのは――。
「そんなに真っ黒になって!」
ワイズお姉様だった。
「お姉様!」
「一体何をしているの?」
「クルークが新しい燃料を作った!」
兄が嬉しそうに答える。
「燃料?」
ワイズお姉様が、四角い炭を見る。
「そうです!」
「これが?」
「はい!」
「…………」
お姉様は不思議そうな顔をしている。
まあ、当然か。
まだこれは――ただの黒い塊。
本当に燃料として使えるのか。
火力はどうなのか。燃え方は?燃焼時間は?
煙は?臭いは?まだ何も分からない。
「乾いたら、実験しましょう!」
私はそう言った。
まずは――本当に使えるのか。
そこからだ。もし成功すれば、今まで捨てられていた炭の欠片が――パンパ領の新しい商品になるかもしれない。




