領地改革、現場へ落とし込む
お父様には、もう一度しっかりと説明する。
生産計画。原料の配分。人員の配置。
そして、各現場への指示。
「とにかく、各現場への落とし込みを徹底してください!」
「分かった」
「一度伝えただけでは駄目です。ちゃんと現場の責任者が理解しているかも確認してください!」
「そこまでか?」
「そこまでです!」
今までのパンパ領には、こういう仕組みがなかった。だから、恐らく最初は混乱する。
「何で今までと違うんだ?どうして毎日報告するんだ?こっちの仕事を減らして、あっちに回すのか?」
そんな声も出るだろう。
でも……。
「慣れれば便利だと気付いてもらえるはず!」
毎日、何を作るのか。何をどれだけ使うのか。
誰がどこで働くのか。それが決まっていれば、現場も動きやすくなる。
そして、それが定着すれば――。
「生産性は上がる!」
私は自信を持って言った。
その横で、話を聞いていたリヒトさんが苦笑する。
「あちゃー……」
「?」
「なんだか軍隊みたいな仕組みですなぁ」
「はい?」
私は首を傾げる。
「そこまでの物じゃありません」
「そうですか?」
「通常作業です!」
毎日やることを決めて、必要な材料を用意して、作業して、報告する。普通の仕事だ。
「これが定着すれば、生産性は上がります!」
「まあ……話は分かりますが」
リヒトさんは納得したように頷く。
だが――。
「リヒトさん!」
「はい?」
「あなたも部外者ではありません!」
「……え?」
私は新しい木板を取り出した。
「椎茸の種菌の生産と、椎茸の栽培を指示します!」
「はい?」
「椎茸の原木の準備も!」
「…………」
「種菌の準備から、原木への植菌、栽培まで全部です!」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
リヒトさんが慌てる。
「私は料理人ですよ!?」
「知っています!」
「なら、なぜ!?」
「椎茸の種菌を作ったのはリヒトさんですよね?」
「……まあ、そうですが」
「なら、分かりますよね?」
「いや、分かるというか……」
「早く種菌の準備を!」
「ええ!?」
私は木板をリヒトさんに突き出す。
「椎茸の大量生産を命じます!」
「…………」
リヒトさんは木板と私を交互に見る。
そして――。
「……軍隊より厳しくないですか?」
「気のせいです!」
「そうかなぁ……」
こうしてリヒトさんも例外なく、新しい生産体制の中へ組み込まれることになった。
……これで椎茸も、もっと食べられる。
いや。違う。
領地のためだ。領地のためだからね!




