領地を動かす仕組みを作ろう
報告の木板を一枚ずつ確認していく。
原料の偏り。人員の偏り。生産量の偏り。
私は数字を見比べながら、少しずつ人の配置や原料の流れを修正していく。
「ここは、この人たちをこっちへ……」
「この材料は、こっちに回して……」
「ここは作りすぎだから、少し減らして……」
そうやって整理していくと、少しずつ全体が見えてきた。
でも……。
「うーむ……」
クルークは腕を組む。
これは……。
「そもそも、全体を見る責任者がいないのが問題なんじゃない?」
各作業場には、それぞれ責任者がいる。
木を切る人。炭を作る人。炭ペンを作る人。
椿油を作る人。小瓶を作る人。
みんな、それぞれの仕事はちゃんとしている。
でも、その人たちをまとめて、
「今日はこれだけ作ってください。こっちに人を回してください。材料はこれだけ使ってください」
と指示する人がいない。
「だから、各々が勝手に動いてしまう……」
いや。勝手に動いているというより……。
「動かざるを得ないのか」
自分の仕事だけなら、自分で判断出来る。
でも、全体を見る人がいなければ、他の作業場との調整なんて出来ない。
「……仕組み作りが先か」
人を増やす。材料を増やす。それだけじゃ駄目だ。その人たちを、どう動かすのか。
誰が指示を出すのか。
どこからどこへ材料を回すのか。
それを決める仕組みが必要だ。
「うむ」
クルークは木板を見る。
「少し先が見えた」
あとは……。
「大元の注文数だな」
ここが分からない。
どれくらい注文が来ているのか。
いつまでに必要なのか。
それが分からなければ、本当の意味で生産量を決められない。
「まだ、麓からの連絡はないか……」
クルークは少し考える。仕方がない。
今ある情報から、予測値を作るしかない。
「とりあえず、平均的な製造数で指示を出してもらおう」
もちろん、現場を実際に見ていないから、完璧には出来ない。でも、何もしないよりはいい。
それに――。
「輸送も出来る限り木の鎖を使って、自動化を目指そう」
木の鎖なら、人が荷物を運ぶ回数を減らせる。
人が減れば、その分だけ別の作業に回せる。
「木の鎖も大量生産してもらおう」
そして、その木の鎖を作るにも木材が必要。
「大元の木の伐採も増やす!」
私は次々と木板に書き込んでいく。
木を切る。
↓
木材を各作業場へ回す。
↓
商品を作る。
↓
木の鎖で運ぶ。
↓
出荷する。
「こういう流れを作ればいいんだ」
今までは、それぞれの作業場が独立して動いていた。これからは違う。
全体を一つの流れとして考える。
「よし!」
私は木板をまとめる。
「お父様にお願いしよう!」
こうしてパンパ領は――商品を作るだけの領地から、商品を効率よく作り、運び、出荷する領地へと変わり始めた。




