領地経営は、まず数字から
あかん……これはマジであかん……。
クリークは資料を見ながら、心の中で頭を抱えていた。
そもそも私調べでは、この領の製造スケジュールは、その場その場の対応が普通だ。
木がある。じゃあ切る。炭が足りない。
じゃあ作る。炭ペンが足りない。じゃあ作る。
そんな感じ。
「まあ、ざっくり作って送ればいいだろ」
今までは、それで特に問題が起きなかった。
そもそも大量の商品を作る必要なんてなかったからだ。
でも……今は違う。ちゃんと注文は来ている。
しかも、お客様は商人。
商人からすれば、注文した数の商品が届くのが当たり前だ。
十個注文したのに八個しか届かなかった。
そんなことが何度も続けば……。
「信用を失うよね……」
しかも話を聞いているお祖父様も、かなりざっくりしている。
「沢山送れ!」
……いや。それじゃ、こっちも困る。
お祖父様がざっくり。指示もざっくり。
現場もざっくり。これでは、商人からの信用を勝ち取るのは難しい。
「納品数は絶対……」
クリークは小さく呟く。
欠品はアウト。
もちろん、多少の融通が利くこともあるだろう。でも、それを最初から当たり前にしてはいけない。
「ここを変えないと……」
私の金持ちになる計画が頓挫する!
それだけは絶対に避けたい!
「まずは……」
私は資料を並べる。
「大元の木材の切り出しからだね」
何本の木を、一日に切り出せるのか。
そこから始める。
切り出した木が、どれだけ固形炭に回るのか。
どれだけ炭ペンに回るのか。
そして、他の商品にはどれだけ使われるのか。
「物の流れを全部把握しないと」
どこか一か所が詰まれば、その先の商品が作れなくなる。
逆に言えば、詰まっている場所さえ分かれば、そこを改善すればいい。
「よし!」
私は紙を取り出した。
◇
「お父様!」
「クルーク、どうした?」
私は作ったばかりの木板を、お父様の前に広げる。
「まずは物の流れを把握したいので、この雛形を作りました!」
「雛形?」
「はい!」
木材。
↓
固形炭。
↓
炭ペン。
それぞれに、
「一日に何個作れるか?材料をどれだけ使うか?どこへ出荷するか?」
などを書き込めるようにしてある。
「まずは、一日の木の切り出し本数を調べてください!」
「木の切り出し本数?」
「はい!」
私はさらに指を動かす。
「そして、そこから固形炭と炭ペンに、どれだけ木を回せるのか!」
「……なるほど」
「それを大至急調べて下さい!」
「お、おう!」
「出来れば毎日報告させて下さい!」
「毎日!?」
「毎日です!」
お父様が目を丸くする。
だが、ここは譲れない。
一日ごとの生産量が分からなければ、注文に対してどれだけ余裕があるのか判断できない。
「お願いします!」
「お、おう! 分かった!」
お父様は慌てて木材を受け取った。
「……毎日、か」
「はい!」
こうしてパンパ領では――四歳児による、初めての生産管理が始まった。




