まずは現状を把握しよう
うーむ。とは言え……。
一番近い集落へ行ったことは、お母様に連れて行ってもらった、あの一回のみ。
しかも数時間だけ。
木の鎖が導入されていたのは確認した。
となると……。
出来れば、実際の現場をしっかりと見たい。
何を作っているのか。どこで作っているのか。
どれくらいの人数で作っているのか。
そして、どこで詰まっているのか。
そこを見ないと、生産量を増やす方法なんて考えられない。
でも……私はまだ四歳。
一人で集落まで行くのは無理。
「じゃあ、どうするか……」
私は腕を組んで考える。
現場を見られないなら、まずは数字だ。
生産量と出荷状況。注文数。現在の在庫。
何が不足していて、何が出荷出来ていないのか。その辺りから把握しないと、まずいんじゃないかな?
そう考えた私は、お父様を見る。
「どういうわけで、お父様!」
「何だ?」
「生産量と注文状況の資料を!」
「分かった。後で見せる」
よし。これで現状把握が出来る。
私は期待しながら待つことにした。
◇
「これか?」
「はい!」
お父様から渡された紙を見る。
注文書……かな?文書のようにも見える。
そこには大きく、
『沢山送れ』
と書いてあった。
「…………」
私は無言で紙を見つめる。
「……お父様」
「何だ?」
「これ、注文書ですか?」
「ああ。そうだ」
「数字が書き込まれてないですし、沢山送れと言われても、これじゃ何個必要なのか分からないじゃないですか!」
「……そうなのか?」
「そうですよ!」
いやいやいや。
何個注文されているのか分からない。
何個作れているのかも分からない。
何個出荷したのかも分からない。
これじゃ、生産量を増やす以前の問題じゃない!
「お父様。誰からの注文なんですか?」
「あー……親父からだ」
「ん?」
親父?私は首を傾げる。
「親父……?」
ということは……。
「私のお爺ちゃん!?」
「ん? そうだが?」
「えええええっ!?」
私は思わず立ち上がった。
お爺ちゃん!?生きてるの!?
書籍を残したって言っていたから、てっきりもう亡くなっていたと思っていた!
というか!
今まで聞いてなかったんだけど!
「お父様!」
「な、何だ?」
「すぐに正確な注文数を聞いてください!」
「あ、ああ。分かった!」
「あと、今まで何をどれだけ出荷したのかも!」
「分かった!」
「それと、現在の生産量も!」
「……分かった」
お父様が慌てて紙を取りに行く。
私はその背中を見ながら、ため息をついた。
……まずは数字。
現状を知らなければ、何も始まらない。
それにしても……。
「お爺ちゃん、生きてたんだ……」
まさか、こんなところで初めて知ることになるとは思わなかった。




