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転生した貧乏男爵令嬢、領地を開発して大金持ちになります!  作者: 稔


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領主が頼る、四歳児

ストラグルは、悩んでいた。

商売は順調にいっている。

それは分かる。

親父から届いた文を見れば、一目瞭然だ。


商品は売れている。

商人から催促まで来ている。

普通なら、喜ぶところだ。


実際、嬉しい。嬉しいのだが――。


「…………」


どうすればいい?それが分からない。


「嬉しいことじゃないですか?」


向かいにいたリヒトが、ストラグルの顔を見ながら言う。


「顔も緩んでますよ」


「まあ、そうなんだが……」


ストラグルは苦笑する。


「初めての状況で戸惑ってるんでしょ?」


「……そうだな」


これまでパンパ領では、商品が売れすぎて困るなどということはなかった。

そもそも、売る物自体が少なかったのだ。


それが今では――。


「注文が来ているのに、作る物が足りない」


「手詰まり、ということですね」


「そんなところだ」


ストラグルは机の上にある書類を見る。


「そもそも生産力は、以前と何も変わっていない」


「まあ、そうですね」


「職人たちが、あの木の鎖で多少は効率を上げているようだが……」


それにも限界がある。

人間が作業する以上、増産にも限界がある。


設備を増やすにも金が必要。

職人を増やすにも人が必要。

原材料を集めるにも人手が必要だ。


「なるほど」


リヒトが頷く。


「どう対応するか悩んでる感じですね」


「そうだ」


ストラグルは深く息を吐く。


「なら、答えはあるでしょう!」


「答え?」


「クルークお嬢ですよ!」


「……」


ストラグルが黙る。


「全て、お嬢から始まってるじゃないですか」


炭。炭ペン。椿油。石鹸。椎茸。

そして木の鎖。


「確かに……」


「ならば、話を聞くか、考え方を聞くのも良いでしょう?」


「しかし……」


ストラグルは腕を組む。


「まだ四歳だぞ?」


「でも、今まで何度も私たちが思いつかなかったことを思いついてますよ?」


「……」


「もしかしたら、手詰まりから抜け出せるかもしれませんよ?」


「…………そうか」


ストラグルは考える。

確かに自分たちだけで考えて、行き詰まっている。


ならば――。


「聞いてみるか」


「そうしましょう」


リヒトが笑う。


「お嬢なら、また何か変なことを言い出すかもしれませんが」


「……それが怖いんだがな」


「でも、今までそれで上手くいってますから」


「……確かに」


ストラグルは苦笑する。

こうして――領主ストラグルは、四歳の娘に相談することになった。


その日の夕食時。家族全員で食事をしているところで、ストラグルが口を開いた。


「みんな、そのままでいい。少し聞いてくれ」


「?」


全員が父親を見る。


「今、我が領は新商品の製造が追いついていない」


「まあ……そうね」


リラスクも頷く。


「そこでだ」


ストラグルは全員を見回す。


「この状況を打開したい。何か考えてくれ」


「…………」


食卓が静かになる。


「生産量を増やす方法がないか?」


リラスクが口を開く。


「職人を増やすとか、作業場を増やすとか……」


「そうなんだが、それも簡単ではない」


「人手も必要ですからね」


「うむ」


そんな話をしている横で――。


「……」


クルークは黙々と食事をしていた。

まあ、大人の話だ。

新商品の生産が追いついていない。

そんなことを言われても、私には関係ない。


職人さんたちが頑張ってくれているんだから、あとは大人同士で考えるでしょう。


「……」


ぱくぱく。


私は食事を続ける。

ところが――。


「クルーク」


「ん?」


突然、父親から名前を呼ばれた。


「クルークは、特に考えてくれ!」


「えっ!?」


思わず箸が止まった。


「私!?」


「そうだ」


「…………」


いやいや。ちょっと待って。さっきまで完全に他人事だと思って聞いてたんだけど?


「えっと……」


私は家族を見回す。

お父様。お母様。ブレイお兄様。ワイズお姉様。全員が私を見ている。


「…………」


なんで?


「私、四歳なんだけど……」


「だが、今まで多くのことを考えてきただろう?」


「…………」


それを言われると弱い。


「特にクルークの考えを聞きたい」


お父様が真剣な顔で言う。


「何か、生産量を増やす方法はないか?」


「…………」


これは……逃げられないやつだ。


「うーん……」


私は箸を置く。生産量を増やす。今ある設備。

今いる職人。今ある材料。

そして――。


「……」


頭の中で、色々な方法を考え始める。

まさか夕食中に、領地の生産計画を考えることになるとは。


「……困ったなぁ」


私は小さく呟いた。

でも――ちょっと面白そうでもある。

パンパ領の次の問題は、どうやって、もっとたくさん作るかだった。

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