職人たちの底力
ある日のこと。
「……ん?」
クルーク宛に荷物が届いた。
「私に?」
エルンから荷物を受け取り、さっそく中身を確認する。
「お!? これは!」
出てきたのは――。
「養蜂箱!」
前に木工師の棟梁へ頼んでおいたものだ。
私が木板に描いた、かなり雑な絵。
正直、自分でもよく分からない部分があった。
「これを……」
箱を開けて確認する。
「ちゃんと再現されてる……」
木枠まで綺麗に作られている。
「すごいな……」
私が描いたのなんて、本当に大雑把な絵だったのに。さすが職人。
「これなら使えそう!」
あとは蜂が住み着いてくれるかどうか。
これは実際に設置してみないと分からない。
「さて、次は――」
荷物の中を探る。
すると。
「……ん?」
見覚えのある細長い物が出てきた。
「炭ペン?」
私は首を傾げる。
「私、こんなの頼んだっけ?」
一本取り出してみる。
「……」
いや。普通の炭ペンに見えるが――。
「ワイズお姉様宛?」
包みに書かれた名前を確認する。
「炭ペンをわざわざ?」
何だろう。私は何気なく炭ペンを手に取る。
そして――。
「……ん?」
よく見る。
「……黒じゃない?」
いや、黒いのもある。
だが、それ以外に――。
「白系……青……赤……黄色!?」
色の違う炭ペンが並んでいる。
「げっ!」
思い出した。
以前、ワイズお姉様が言っていた。
「色があると良いわね」
そう。新しい商品について考えていた時に、ワイズお姉様が出した案だ。
「まさか……」
私は色付き炭ペンを一本持ち上げる。
「完成させたの!?」
職人が?あの時の話を覚えていて?
「すげーなー……職人!」
私が思いついたわけじゃない。
ワイズお姉様が言ったことを聞いて、職人が実際の商品にした。
これって――。
「領地のみんなで作ってるってことよね」
クルークが考え、ワイズがアイデアを出す。
職人が形にする。そして、それを売る。
「……」
なんだか、ちょっと嬉しくなってきた。
私は色付き炭ペンを眺める。
「これ、絶対売れると思う」
特に子供向けには良さそうだ。
絵を描いたり、色を分けて文字を書いたり。
もしかしたら、貴族向けにも使えるかもしれない。
「ワイズお姉様、喜ぶだろうなぁ」
そう思ったところで――。
「あ」
養蜂箱の存在を思い出した。
「まずは蜂!」
甘い物の確保が先だ。
「蜂蜜、待ってなさい!」
私は養蜂箱を抱える。
「蜂を住まわせてみせる!」
……色付き炭ペンを完成させた職人たちの凄さに感心しつつ。クルークの頭の中は、もう次の実験へ向かっていた。
まあ、新商品が出来たことは、嬉しい限りね。
これで領に仕事とお金が入れば――。
「ふふふ!」
少しずつだけど、パンパ領が変わってきている。炭ペンも売れる。
椿油や石鹸も商品になりそう。
椎茸の栽培にも成功した。
そして、色付き炭ペンまで完成した。
「そっちは、大人に任せてと」
私が全部やる必要はない。
というか、全部やっていたら身体がもたない。
私はまだ四歳なのだ。
「私は、巣箱の設置を……」
今回届いた養蜂箱を持って、裏庭へ向かう。
どこに置こうか。蜂が飛び回っている。
花もある。
「んー……」
周囲を見回す。
「この辺りでいいかな?」
日当たり。雨風。花までの距離。
前世で見た養蜂の動画を思い出しながら、置く場所を決める。
「よし!」
養蜂箱を設置する。
「蜂さん、上手く巣を作ってくれ!」
これで準備は完了。
あとは――。
「待つだけね」
こればかりは、人間が頑張ってどうにかなるものじゃない。蜂さんの気分次第だ。
「気長に待たないとね」
巣箱の周りを飛んでいる蜂を眺める。
そのうち、この箱を気に入ってくれればいいんだけど。
「……」
入るかな?
「……」
まだかな?
「……」
いや、そんなすぐには入らないか。
「まあ、いいや」
私は立ち上がる。蜂蜜が採れるかどうかは、しばらく先のお楽しみ。
それよりも――。
「次は何を探そうかなぁ」
パンパ領には、まだまだ知らない資源が眠っている。そう思うと、四歳児の私は今日も忙しい。




