木の鎖、早くも大活躍!
クルークは、母のリラスクと一緒に、領館から一番近い第一集落へ来ていた。
今日は、お母様の用事についてきただけなのだが――
「何か、更に何かないかなぁ……」
せっかく集落まで来たのだ。
新しい商品になりそうな物。
まだ利用されていない資源。
何か見つからないかな?
そんなことを考えながら歩いていると。
カタカタカタカタ……
「ん?」
どこからか、妙な音が聞こえてきた。
「何の音?」
私が音のする方を見る。
「そうね……」
お母様も首を傾げる。
すると――
「あら?」
お母様が指を差した。
「あれ! クルークが作った鎖じゃない?」
「本当だ!」
見覚えのある木の鎖。
だが、私が作った試作品とは違う。
しっかりと固定され、両端には大きな歯車。
そして――
「籠がついてる!」
木の鎖には籠が取り付けられていた。
カタカタカタカタ……
歯車が回る。
すると籠が、ゆっくりとこちらへ向かってくる。
「何を運んでるのかしら?」
近づいてきた籠を覗き込む。
「板だ!」
籠の中には、木板が三枚ほど入っている。
そして。
カタカタカタカタ……
籠が空になると、今度は別の籠がやってくる。
また木板が三枚。
「次から次へと……」
私はしばらく、その動きを眺めていた。
そして、運ばれた木板の行き先を見る。
「……あ」
そこには木工師の工房があった。
籠から木板を取り出しているのは――
「子供?」
何人かの子供たちが、運ばれてきた木板を一枚ずつ取り出している。
そして、それを工房の中へ運んでいく。
「なるほど……」
私は工房の中を覗き込む。
「炭ペンの木板か!」
炭ペンの生産に必要な木材。
今までは、木材を取りに行って。
工房まで運んで。加工して。また別の場所へ運ぶ。それだけでも、かなりの手間が掛かる。
でも。
「これなら、わざわざ取りに行ったり、持ち込んだりしなくて済む」
木の鎖が、代わりに運んでくれる。
しかも――
「子供でも作業を手伝えるんだ」
籠から木板を取り出すだけなら、大人ほど力も必要ない。
そして、よく見ると。
「ん?」
籠の中に何か入っている。
紙だ。
「……メモ?」
次の籠にも紙。
工房から戻ってくる籠にも紙が入っている。
「これ、やり取りに使ってるんだ!」
私は思わず笑ってしまう。
「やるわね……」
私が考えたのは、ただ荷物を運ぶ仕組み。
でも領民たちは、それを自分たちの仕事に合わせて使い始めている。
材料を運ぶ。完成した物を運ぶ。
そして、籠にメモを入れて連絡まで行う。
「もう、普通に仕事の一部になってるじゃない」
私は木の鎖を見上げる。
カタカタカタカタ……
今日も籠が行ったり来たりしている。
「……」
なんだか、不思議な気分だった。
自分が考えた物が自分の知らないところで、こうやって使われている。
「クルーク?」
お母様が私を見る。
「どうしたの?」
「ううん」
私は笑う。
「なんでもない!」
でも――これは、かなり良い兆候だ。
商品を作るだけじゃない。
仕事そのものが効率化され始めている。
そして、それによってパンパ領の人たちが、今までより多くの商品を作れるようになる。
「……もっと、こういうの作った方がいいかも」
私は、また新しいことを考え始めていた。
物流を変える。それは――単に荷物を楽に運ぶだけではなかった。
人の働き方まで、少しずつ変えていくことになるのだった。




