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転生した貧乏男爵令嬢、領地を開発して大金持ちになります!  作者: 稔


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職人が見つけた可能性

「ほう。これを?」


木工工房の親方は、目の前に置かれた木の鎖をじっくりと眺めていた。


「どうやら領主様のお子さん達が考えたようです」


隣にいる職人が答える。


「子供達が?」


「はい」


「……確かに、理屈はこれで分かった」


親方は木の鎖を持ち上げ、繋ぎ目を確認する。


「子供が作った物にしちゃー……」


「凄くありません?」


「うむ」


親方は頷いた。


「荒削りな部分は仕方ねぇ。だが……考え方が凄すぎる」


この木工工房では、現在も炭ペンの製造準備を進めている。


そこへ持ち込まれた、新たな品物。しかもこれは――


「商品じゃないんですよね?」


「ああ」


親方は答える。


「物を移動させるための代物だ」


木材や竹。これから作られる新しい商品。

パンパ領では、何をするにも問題になるのが山道だった。


だからこそ。


「こいつが実用化できりゃ……」


親方は木の鎖を見る。


「荷物を運ぶ手間が大幅に減る」


「そうですね」


「しかし、どうやって動かすんだ?」


「手でこっちの歯車を回すそうです」


「なるほどな」


親方が歯車を回す。


ギギギ……。


木の鎖が動く。


「設置する場所を考えれば……」


親方が指で空中に線を描く。


「上下にも、左右にも移動させられる。この鎖部分に籠を付ければ……荷物を乗せて運べる」


「極端な話……」


別の職人が木の鎖を見る。


「長くして、遠くまで運ぶこともできますね」


「まあ、重さや強度次第だがな」


親方は頷く。


「この木板がどれだけ荷重に耐えられるか。歯車がどれだけ持つか。それを調べる必要はある」


「でも、仕組みそのものは……」


「ああ」


親方が笑う。


「面白い」


そして一人の職人が、ふと思いついたように口を開いた。


「それに親方」


「ん?」


「これ……片方に水車を上手く付けられれば」


職人が歯車を指差す。


「人が回さなくても動かせるんじゃないですか?」


「……」


親方の手が止まる。


「水車で?」


「はい」


「水車の回転を歯車に伝えて……」


「この鎖を動かす」


親方が考える。


「……確かに」


「水が流れている間なら、ずっと動かせますよ」


「そうだな」


親方の顔が、少しずつ変わっていく。


「こいつは……」


木の鎖を見る。


「使い方によっちゃー……」


「ええ」


「えらい事になるぞ」


ただ荷物を運ぶだけではない。

水の力を使えば、人の力を使わずに動かせる。

そしてパンパ領には――山がある。

山には、川がある。


「……水車」


親方は呟く。


「木の鎖」


そして。


「歯車」


まだ誰も知らない。

クルークが思いついた小さな試作品が――やがてパンパ領の物流と動力そのものを変える可能性を秘めていることを。


「おい! お前ら!」


突然、親方が振り返る。


「炭ペンの方は、任せた!」


「……へ?」


職人たちが一斉に親方を見る。


「親方?」


「くくく!」


親方は、目の前の木の鎖を手に取る。


「俺はこっちの方をやる!」


「いやいや!」


「炭ペンの製造準備はどうするんです?」


「お前らなら、もう出来るだろ!」


「まあ……」


「作り方も分かってる。道具の改良も進めてる。だったら――」


親方は木の鎖を指差す。


「俺は、こっちに集中する!」


「……」


職人たちは顔を見合わせる。


「親方……」


「なんだ?」


「完全に楽しんでますよね?」


「当たり前だ!」


即答だった。


「こんな面白そうな物、目の前に置かれて放っておけるか!」


親方は木の鎖を動かしてみる。


ギギギ……。


「これをもっと丈夫にする」


「……」


「もっと長くする」


「……」


「もっと重い物を運べるようにする!」


親方の目が輝いている。


「そして――」


歯車を見る。


「水車を組み合わせる!」


「親方……」


「なんだ?」


「炭ペンより、こっちの方が楽しそうですね」


「……」


親方がニヤリと笑う。


「当たり前だろ!」


「ですよね……」


「さあ! まずは材料だ!」


こうして。


炭ペンを作るはずだった木工工房では――新たな研究が始まった。木の鎖を、どうすれば実際の山で使える物にできるのか。


職人たちの挑戦が始まったのだった。

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― 新着の感想 ―
なんだろう? 今、頭の中で「風の中のスーバルー」って音楽が流れたぞ!
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