最大の問題は物流
「うーむ……」
私は再び、お祖父様の書庫に籠もっていた。
机の上には、いくつもの資料が広げられている。
パンパ領の地図。各集落の位置。
これまでの生産量や、商人との取引記録。
そして――山道についての記録。
「……資源は、結構あるんだよね」
木。竹。椿。山菜やキノコ。
それに、まだ私が知らない物もきっとある。
商品だって少しずつ増えてきた。
固形炭。炭ペン。椿油。椿石鹸。
椎茸だって、上手くいけば新しい産業になる。
「問題は……」
私は地図を見る。
「どうやって運ぶか」
これだった。
商品を作る。
↓
集落へ運ぶ。
↓
麓へ運ぶ。
↓
商人に渡す。
↓
領外へ運ばれる。
「……遠い」
とにかく遠い。
しかも――
「山道なんだよね……」
パンパ領は山の中。
領主館は、そのほぼ中央。
各集落も山の中に散らばっている。
しかも平地は少ない。
「人力が中心」
荷物を背負う。
あるいは、ロバのような小型の馬に積む。
「それじゃあ、時間が掛かりすぎる」
商品を増やせば増やすほど、運ぶ量も増える。
つまり――
「運賃も増える」
せっかく商品を作っても、運ぶだけで利益が減ってしまう。
「これじゃあ……」
私は頭を抱える。
「大量生産しても意味がないじゃない!」
工場を作る。商品を増やす。売る。
それだけでは駄目なのだ。
物流。
これを何とかしなければ。
「山の上に荷物を運ぶ……」
私は椅子に座ったまま、天井を見る。
車はない。鉄道もない。
当然、トラックなんてない。
舗装された道路もない。
「……何かないかな?」
山道を歩かずに荷物を運ぶ方法。
少ない人数で大量に運ぶ方法。
しかも、このパンパ領でも作れそうな物。
「うーん……」
私は再び書庫の本を探し始める。
「何か……」
ページをめくる。
「何かあるはず……」
木材も竹もある。人もいる。
鍛冶師もいる。簡単な道具なら作れる。
「だったら……」
私は地図を見る。
山の斜面。集落。領主館。そして麓。
「……山だからこそ、使える方法ってないのかな?」
山の中。平地が少ない。道路を作るのも大変。
だからこそ――平地を作るのではなく。
山そのものを利用する。
「…………」
何かが引っかかった。
「……そうだ」
私は呟く。
「下へ運ぶだけなら……」
上から下へ。山には高低差がある。
その高低差を利用すれば――
「もしかして……」
私は書庫の本をもう一度めくる。
「これ、使えるんじゃ……?」
まだ具体的な形にはならない。
けれど。パンパ領の次なる課題は決まった。
どうやって、この山から荷物を運び出すか。
「……よし」
私は立ち上がる。
「物流を何とかしよう!」
領地開発は、商品を作るだけでは終わらない。
作った物を売れる場所まで運んで、初めて商売になるのだから。




