椎茸栽培、始めます!
「うーむ……これでいいのかな?」
リヒトは、手に持った瓶をじっと眺めていた。
「クルークお嬢。例の瓶ですが……」
「ん?」
「真っ白になりましたよ」
「はや!?」
私は思わず瓶を覗き込む。
中には、白い菌糸がびっしりと広がっていた。
「じゃあ……」
私はニヤリと笑う。
「試しにやってみますか!」
「何をです?」
「もちろん、次の実験よ!」
◇
館の裏庭。
そこには、数十本のクヌギやコナラが運び込まれていた。
「こんなに木を集めて、何をするんです?」
リヒトが並べられた原木を見る。
「これに穴を開けるの!」
「穴を?」
「そう!」
私は小さな道具を手に取る。
「道具はこれでいいかな?」
「……それで穴を?」
「やってみましょう!」
私は原木に道具を当てる。
「よいしょ……」
グリグリ。
「こんな感じかな?」
小さな穴が開いた。
「これでいいです?」
「うん!」
私は別の場所を指差す。
「何ヶ所も開けて!」
「何ヶ所も?」
「そうそう!」
リヒトが原木に次々と穴を開けていく。
グリグリ。グリグリ。
「これくらいでいいですか?」
「いいわね!」
次に私は、白くなった木片を取り出す。
「じゃあ、これを打ち込んで!」
「これを?」
「そう!」
「分かりました」
リヒトが木片を穴に入れる。
「トン!トン!トン!」
小さな木片が、原木の中へ入っていく。
「これでいいです?」
「うん!」
「じゃあ、次も」
「はい!」
「トン! トン! トン!」
一本。また一本。
原木に、白い菌糸の広がった木片が埋め込まれていく。
「瓶の中身、全部使っちゃって!」
「全部ですか?」
「全部!」
「分かりました!」
「トン! トン! トン!」
◇
「ふぅ……終わりました」
リヒトが額の汗を拭う。
裏庭には、穴を開けられた原木が並んでいる。
「後は――」
私は原木を眺める。
「気長に待つだけ!」
「……へ?」
リヒトが首を傾げる。
「一体、何を待つんです?」
「もちろん――」
私は笑う。
「椎茸が出てくるのを!」
「…………」
リヒトが原木を見る。
「この木から?」
「そう!」
「椎茸が?」
「そう!」
「…………」
しばらく沈黙。
「まあ……後でのお楽しみよ」
「……はぁ」
リヒトは納得していない顔で頷いた。
しかし私は知っている。
ここから時間をかけて菌糸が原木の中へ広がっていけば――やがてこの木は、ただの薪でも建材でもなくなる。椎茸を生み出す原木になる。
「ふふふ……」
パンパ領の山には、木がいくらでもある。
もしこれが成功すれば――今まで捨てていたような木材まで、価値を持つかもしれない。
「……これは、結構すごいことになるかも!」
私は並んだ原木を眺めながら、期待に胸を膨らませた。




