パンパ領、増産開始!
「おーい! おめーら!」
炭焼師の作業場に、大きな声が響く。
「炭の生産を増やすぞ!」
「親方?」
職人の一人が振り返る。
「もう暖かい時期ですぜ。増やしてどうするんですか?」
炭焼師はニヤリと笑う。
「この前作った、新しい炭を作り始めるぞ!」
「あー! あれか!」
職人たちも思い出したようだ。
「使えない炭も細かく砕けば使える!」
「あれは便利でしたね」
「それが大量に必要だそうだ」
「なるほど……」
職人が腕を組む。
「じゃあ、炭窯をもう一つ増やせばいいですかね?」
「それくらいでいいだろ!」
「分かりました」
「それと、炭ペンにも渡すぞ」
「あー、あの便利なペンか」
別の職人が笑う。
「俺も欲しいな」
「その材料が炭だ!」
「……あれ?」
「出来たら、木工師に渡すぞ」
「ああ、なるほど」
炭焼師が手を叩く。
「じゃあ、準備を始めますぜ!」
「おう!」
こうして炭焼師たちの作業場では、さっそく増産の準備が始まった。
◇
「おーい! 暇人鍛冶師! いるかー!」
「なんだ?」
鍛冶師が作業場から顔を出す。
「例の炭ペンの件でな」
「あー、あれか」
鍛冶師は思い出したように頷く。
「あれ、便利そうだな?」
「そうだろ?」
「完成したら分けてくれ」
「まあ、考えとく」
「頼むぞ!」
「で?」
鍛冶師が尋ねる。
「今回は何の用だ?」
「そのペンだが、生産することになってな」
「ほう」
「だから、専用の道具が欲しい」
「削り出しの部分だな?」
「そうそう!」
炭焼師が頷く。
「今の道具じゃ、数を作るのが大変なんだ」
「なるほどな」
「小さい鉋も欲しい!」
「分かった!」
鍛冶師が笑う。
「任せろ!」
「頼んだぞ!」
◇
その頃。
リラスクは、椿の木の下にいた。
「はーい! みなさん!」
「はい!」
集まっているのは、領内の女性たち。
「頑張って種を拾いましょう!」
「奥様?」
一人の女性が不思議そうに尋ねる。
「この種を食べるんですか?」
「違います!」
リラスクは笑顔で答える。
「ここに集まっている女性陣には、画期的な物を作ります!」
「私たちに?」
「そう!」
リラスクは頷く。
「女性にも作れます!」
「じゃあ、頑張らないとね!」
「そうですよ!」
「さー! 拾いますよ!」
「はい!」
女性たちが一斉に椿の種を拾い始める。
リラスクは、その様子を眺めながら満足そうに頷く。
「さて……ここは、これでいい」
そして次の目的地へ向かう。
「後は、焼物師のところへっと」
◇
「奥様?」
焼物師が驚いた顔をする。
「わざわざ作業場まで来られなくとも……」
「仕事の依頼です!」
「仕事?」
「小瓶を大量に焼いて下さい!」
「小瓶を?」
「はい!」
リラスクは指を一本立てる。
「一種類は、貴族が喜びそうな見た目のデザイン」
「ほう」
「もう一つは、一般向けで簡素な物を!」
焼物師が頷く。
「分かりました」
「お願いします!」
リラスクが作業場を出ていく。
すると。
「んー……」
焼物師が振り返る。
「おーい!」
「はい!」
「仕事だ!」
「仕事?」
「小瓶の大量生産だ!」
「ええ!?」
「土と炭の注文もしといてくれ!」
「はーい!」
◇
炭を増やす。道具を作る。木工の生産量を増やす。椿の種を集める。小瓶まで作り始める。
パンパ領のあちこちで、人が動き始めていた。
そして誰もが、まだ知らない。
これまで。
「木と竹しか売る物がない」
そう思われていたパンパ領が――少しずつ。
「作って売る領地」へ変わり始めていることを。




