次の発明は何だ?
二人は、山道を登って帰路についていた。
「はぁ……」
リヒトが額の汗を拭う。
「本当に登山ですなぁ」
「お互いに訓練になるだろ?」
「訓練と言われましても……」
リヒトは苦笑する。
確かに。麓から領主館まで戻るだけで、かなりの運動になる。
「……そう言えば」
リヒトが何かを思い出したように口を開く。
「ちびすけですが、竹の子の保存方法を思いついたようで」
「保存?」
私は振り返る。
「竹の子を?」
「はい」
「竹の子というより……竹になる前のやつですね」
「ほう」
あの長く伸びた竹の子か。
あれを保存するというのか?
「少し手間は掛かりますが」
リヒトが続ける。
「今は私が味の調整をしていますので、そのうちお出し出来ると思いますよ」
「なら、食してみるか」
「酒に合いそうです」
「ほう」
それは楽しみだ。
竹の子を保存食にするという発想も面白いが、酒のつまみになるなら、さらに需要があるかもしれない。
「それに……」
リヒトが意味ありげに続ける。
「今度は妙な物を集めさせていますよ」
「妙な物?」
「ええ……」
リヒトが少し困った顔をする。
「あの……椿の実ですよ」
「椿の実を?」
思わず聞き返す。
「あんな物、食えないぞ?」
「まあ……」
リヒトが苦笑する。
「竹の子も、最初はそう思いましたけどね」
「……」
確かに。あれだけ成長した竹の子を食べるとは、私も思わなかった。
「まあ、あの成長した竹も食えるようになりそうですし」
「そうなのか?」
「もしかしたら、椿の実も何かあるのかもしれません」
「……」
そう言われると、少し気になる。
「ん?」
私は歩きながら考える。
「竹になる前の竹?」
「はい」
「ちびすけぐらいの竹になったやつですよ」
「あれか」
あれはもう、ほとんど竹だった。
「硬くて食えんのでは?」
「私も最初はそう思いました」
リヒトが笑う。
「それがまたまた……これがどうしたことか」
「?」
「悪くない」
「……本当か?」
「ええ」
リヒトは自信ありげに頷いた。
「味付け次第では、かなりいけますよ」
「ほう……」
私は思わず笑う。
「クルークは、また何か見つけたのかもしれんな」
「そうかもしれません」
「しかし……」
私は前方へ目を向ける。
まだまだ山道は続いている。
「次は椿の実か」
「ええ」
「一体、何をするつもりなんだ?」
「それは私にも分かりません」
二人は顔を見合わせる。
そして。
「……まあ、楽しみにしておきますか」
「そうですね」
山の中にある、何気ない植物。
誰も気に留めなかった物。
それを、四歳の少女が拾い上げる。
パンパ領では、そんな小さな発見が、少しずつ増え始めていた。




