斜面を利用して、平らな土地を増やそう!
開拓地で、私は悩んでいた。
「うーん……」
目の前に広がるのは、山と斜面。
木を切り、少しずつ土地を切り開いているものの、平らな場所は限られている。
これから人が増えれば、家を建てなければならない。
畑も必要だし、水路や道だって必要になる。
でも、そもそも土地がない。
「普通の一戸建てを建てるのは、難しいわよねぇ……」
一軒ずつ家を建てていたら、あっという間に平地がなくなってしまう。
それに、ここは山の中だ。
斜面を無理に削って平地を作れば、土砂崩れの危険もある。
せっかく開拓した土地が崩れてしまったら、目も当てられない。
「となると……マンションタイプ?」
一つの建物に、複数の家族が住む。
前世の日本では珍しくもない建物だけど、この領地ではまだ一般的ではない。
木造でも作れないことはないだろうけど、せっかくセメントやモルタルができたのだ。
これを利用すれば、もっと頑丈な建物を作れるかもしれない。
もちろん、まだ試作段階だ。
いきなり大きな建物を作るのは危険だし、強度だって確かめなければならない。
でも、考えるだけなら自由よね!
「斜面に沿って、段々に建物を建てる……」
私は地面を見ながら、頭の中で建物を組み立てていく。
山の斜面に沿って、下の階より上の階を少しずつ後ろに下げる。
そうすれば、階段状の建物になる。
そして、上の階の屋根を平らにすれば……。
「屋上が、平らな土地になる?」
そう。建物の屋根を利用して、平らな場所を作るのだ。
もちろん、屋上に土を盛って畑にするのは、まだ難しいと思う。
土の重さに耐えられる構造も必要だし、水はけも考えなければならない。
それに、田畑には日当たりも重要だ。
建物の影になってしまったら、作物が育ちにくくなるかもしれない。
でも、広場ならどうだろう?
子供たちが遊ぶ場所。
領民が集まって話をする場所。
あるいは、ちょっとした休憩場所。
それくらいなら、屋上を活用できるかもしれない。
「土地を増やすんじゃなくて、土地を重ねるのよ!」
……いや、正確には土地じゃなくて建物なんだけど。
でも、考え方としては悪くないはず!
山の斜面を利用して建物を段々にすれば、限られた土地を有効に使える。
さらに、建物の屋根を広場として利用できれば、一石二鳥だ。
「うん。これは一度、相談してみよう!」
私は開拓地の責任者であるツーシュさんを呼んだ。
「ツーシュさん!」
「はい、クルーク様」
やって来たツーシュさんに、私は紙を広げて見せた。
そこには、斜面に沿って段々に並ぶ建物の簡単な絵が描かれている。
「このような感じの建物を、建てられないかしら?」
「これは……」
ツーシュさんは紙を受け取り、じっくりと眺めた。
「斜面に沿って、建物を段々にするのですか?」
「そう。下の階よりも上の階を少しずつ後ろに下げるの。そうすれば、屋根を平らな場所として使えるんじゃないかと思って」
「なるほど……」
ツーシュさんは絵を傾けたり、指で建物の形をなぞったりしながら考え込んだ。
「確かに、このような形なら、斜面を大きく削らずに建てられる場所もあるかもしれません。ただ……」
「ただ?」
「建物の重さを、どこで支えるかが問題です。斜面の土が崩れないようにしなければなりませんし、雨水が建物の裏側に溜まるのも避けなければなりません」
うん。
さすがに、そこはちゃんと考えているのね。
「それに、上の階の屋根を人が歩けるようにするなら、屋根自体にも十分な強度が必要です。雨水を流す仕組みも要りますな」
「そうね。そこは大事ね」
屋根が抜けました、では笑い話にもならない。
ましてや、その上で子供たちが遊んでいたら大惨事だ。
「それと、斜面の状態によっても、建てられるかどうかが変わるでしょう。まずは土地を調べる必要があります」
「なるほど……」
私は頷いた。
やっぱり、絵を描いただけですぐに建てられるわけではない。
でも、最初から諦める必要もない。
「だったら、まずは緩やかな斜面で試してみない?」
「緩やかな斜面ですか?」
「そう。いきなり急な場所に大きな建物を建てるのは危ないでしょう? まずは小さな建物で試して、どんな問題があるのか調べたいの」
「それがよろしいでしょうな」
ツーシュさんも納得したように頷いた。
「小さなものから始めれば、必要な技術や材料も分かるでしょう。セメントやモルタルについても、建物に使える強度があるのか、実際に確かめる必要があります」
「そうね。無理に大きくする必要はないわ」
建物の強度。地盤の状態。雨水の処理。
屋上の防水。
考え始めると、確認することはたくさんある。
でも、一つずつ解決していけばいい。
「まずは試作品を作って、少しずつ経験を積んでいきましょう!」
「分かりました、クルーク様。職人たちと相談し、建てられそうな場所を探してみます」
「お願いね!」
ツーシュさんは、図面を大切そうに抱えて歩いていった。
よし。
これでまた一歩、前進ね!
山ばかりのパンパ領では、平らな土地そのものが貴重だ。
だからこそ、限られた土地をどう使うかが重要になる。
斜面を削るだけではなく、建物の形を工夫する。屋根を利用して、平らな場所を作る。
上手くいけば、住居だけでなく、集落の広場を確保する方法にもなるはずだ。
もちろん、まだ構想段階。
実際に使えるものになるかは、これからの試作次第だ。
「ふふふ……」
思わず笑みがこぼれる。
土地がないなら、工夫すればいい。
木がたくさんあるなら、木を使う。
竹がたくさんあるなら、竹を使う。
石灰があるなら、建築資材にできないか考える。
そして、山しかないなら……山を活用する!
「パンパ領、まだまだ開発の余地があるわね!」
……その分、私の仕事も増えている気がするけど。
まあ、今さら気にしても仕方がない。
まずは、段々式の建物が上手くいくことを祈ろう!
そうすれば、いつか屋上に広場を作って、領民たちが集まれる場所も増やせるかもしれない。
うん。これは、楽しみになってきたわ!




