↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生した貧乏男爵令嬢、領地を開発して大金持ちになります!  作者: 稔


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
146/152

遊びを知らない領民に、遊びを広めよう!

「お嬢様! 少しよろしいでしょうか?」


「……ツーシュさんか」


開拓地で地図を眺めていると、ツーシュさんが声をかけてきた。何か報告があるのだろう。

でも、その前に……。


「ツーシュさん! ちょっと聞きたいことがあるんだけど?」


「はい。何でしょうか?」


「休みたいと思うことはある?」


「……休みたいと思うこと、ですか?」


ツーシュさんは、不思議そうに首を傾げた。


「うーん……。休んでいますし?」


「…………」


またか。また、この反応か!


「えっと……。仕事をしないで、好きなことをして過ごしたいと思うことはない?」


「好きなこと、ですか?」


「そう。例えば、仕事を忘れて一日中のんびりするとか!」


「……仕事が終われば、休みますが?」


「…………」


駄目だ。やっぱり、噛み合わない。

ヴァイプさんのときと同じだ。

この領地では、仕事が終われば休む。

疲れたら休む。


でも、仕事があっても定期的に休む、という発想がない。


「……じゃあ、小さい頃は何をして遊んでいたの?」


「小さい頃ですか?」


「ええ!」


「そうですね……。山菜採りや木の実拾い、それから魚釣りでしょうか」


「…………」


私は、思わず顔を覆った。


「……分かったわ! ありがとうね!」


「……はぁ?」


ツーシュさんが、きょとんとした顔をしている。


しまった。また、途中で話を遮ってしまった。

でも、もう分かった。

これ以上、聞く必要はない。


「それで、何か報告があったんでしょう?」


「ああ、はい。建物の件ですが……」


ツーシュさんは、気を取り直して報告を始めた。

私は、その話を聞きながらも、頭の中では別のことを考えていた。


……やはり、これは単純に「休日を作りましょう」と言っても駄目だ。

そもそも、仕事をしない時間を積極的に作るという考え方がないのだから。


◇


「……うーむ」


私は、屋敷に戻ってからも考え続けていた。


休日。休息。遊び。


この三つを、どうすれば領民たちに理解してもらえるのだろう。

いきなり領地全体の働き方を変えるのは難しい。

それなら、少しずつ考え方を変えていくしかない。


「……そうだ!」


私は、ぽんと手を打った。


「小さい頃から、遊ぶことを習慣にすればいいんじゃない?」


そう。大人になってから、突然、仕事をしない日を作りましょうと言われても、戸惑うだけかもしれない。


でも、子供の頃から遊ぶことが当たり前になっていれば?


遊ぶ時間があるのが普通。

好きなことをして過ごすのも普通。


そういう感覚が身につけば、大人になってからも、休むことに抵抗が少なくなるのではないだろうか。


「……うん。悪くないかも!」


まずは、子供たちが遊べる環境を作る。

そこから、少しずつ広げていく。

いきなり領地全体を変えるより、ずっと現実的だ。 


……でも。


「…………」


そもそも、この世界の遊びって何だろう?


ヴァイプさんたちは、山菜採りや木の実拾い、魚釣りをしていたと言っていた。

もちろん、それが楽しくないとは思わない。

家族や友達と一緒に出かければ、楽しい時間になるだろう。


でも、それって……。


「仕事してるじゃないかーい!」


思わず叫んでしまった。

いや、正確には、遊びと生活が一緒になっているのだろう。


山菜を採る。木の実を拾う。魚を釣る。

楽しみながら食料を手に入れる。

それ自体は、合理的だ。


でも、そうした経験ばかりをしていれば、遊ぶことと働くことの境目が曖昧になってしまうのかもしれない。


そして、大人になれば、生活のために働く。

仕事が終われば休む。

仕事があれば働く。

……うん。


これが普通になっているのだ。


「……こりゃ、どうすればいいのかしら」


私は、椅子にもたれかかった。


前世での遊び。

小さい頃は、何をしていたっけ?

ネット?

本を読む?

スマホゲーム?

……そんなもの、ここにあるわけないじゃん!


「…………」


いやいや。落ち着こう。

前世の遊びを、そのまま持ち込む必要はない。

大事なのは、仕事や生活とは関係なく、楽しむためだけに遊べるものを用意することだ。

そう考えれば……。


「……ホームセンター!」


私は、前世の職場を思い出した。


ホームセンターには、いろいろなものがあった。


積み木。パズル。リバーシ。ボードゲーム。

野球用品。テニス用品。

ほかにも、子供が遊ぶための道具がたくさんあった。


「……そうよ!」


別に、同じものを全部作る必要はない。

まずは、木材を使って簡単な玩具を作ればいい。

積み木なら、木を切って形を整えるだけでも作れる。

パズルだって、木の板を切り分ければできるはず。

リバーシのような遊びも、石や木片があれば作れるだろう。

ボードゲームも、工夫すれば作れそうだ。


この領地には、木材が豊富にある。

職人だっている。

材料には困らないはずだ。


「……ふふふ」


これは、いけるかもしれない。

まずは、子供たちが集まって遊べる場所を作る……と言いたいところだけど。


「…………」


広場がない。


そもそも、パンパ領は山の中だ。

平らな土地は貴重。

建物を建てる場所を確保するだけでも大変なのに、遊ぶためだけの広場を作るとなると、場所の確保から考えなければならない。


「……うーん」


また問題が出てきた。


でも、広場がなくても、遊び道具は作れる。

家の中でも遊べるものなら、場所を取らない。

積み木やパズル、リバーシのようなものなら、机の上でも楽しめる。


まずは、そういうものから始めればいい。

そして、子供たちが遊ぶようになれば、親たちもその様子を見ることになる。


「遊ぶのって、こんなに楽しいんだ」

そう思ってもらえれば、少しずつ考え方も変わるかもしれない。

もちろん、それだけで休日が定着するとは限らない。

でも、何もしなければ、何も変わらない。


「……よし!」


私は、紙を取り出した。

まずは、作れそうな玩具を書き出してみよう。

積み木。木製パズル。リバーシ。それから……。


「……あれ?」


気がつけば、また仕事を始めていた。


「…………」


遊びを広めるために、遊び道具を作る仕事。

休日を作るために、仕事を増やしている。


「……何やってるんだろう、私」


思わず、ため息が出た。

でも、ここで諦めるわけにはいかない。

いつか、パンパ領にも休日を。

そして、子供たちが心から楽しめる遊びを。


「……よし!」


私は、再び紙に向かった。


……ただし。


遊び道具を作る職人さんたちには、ちゃんと休んでもらおう。そう心に決めた。

自分が休めていないことは、ひとまず棚に上げておく。


……うん。


まずは、そこからね!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。