新商品、三人三様のアイデア
「うーん……」
私は木板を眺める。
「なんも思いつかない!」
ブレイお兄様が、頭を抱えて呟いた。
「ワイズは何か思いついた?」
「うーん……」
ワイズお姉様も木板を眺める。
「どうやるか分からないけど……炭ペンあったでしょ?」
「うん」
「黒しか出来ないから、例えば他の色にするとか!」
「おー!」
ブレイお兄様が顔を上げる。
「確かに! やり方は分からないけど、ありだな!」
なるほど。ワイズお姉様、応用力が凄いな。
色を変える。
つまり――色鉛筆。
確かに、ありだ。
今ある炭ペンを見て、そこから「別の色にしたら?」と考えられるのは、普通に凄いと思う。
「じゃあ、ワイズはそれだな!」
「うん!」
ブレイお兄様が木板に書き込む。
『色のついた炭ペン』
……まあ、実際には炭ではなく別の材料になるだろうけど。
それでも商品としては面白そうだ。
そして。
「クルークは?」
「え?」
突然、私に話が振られた。
「私のは……」
うーん。何にしよう。
色々と思いつく物はある。
でも、あまり難しい物を出すと、また私の存在感が強くなってしまう。
そこで。
「竹を使った竹扇子!」
「何それ?」
ブレイお兄様が首を傾げる。
しまった。この世界には扇子がないのか。
私は木板に簡単な絵を描く。
「こんな感じの!」
「ほぉ……」
ブレイお兄様が絵を覗き込む。
「これは、竹を薄くして開くって感じか?」
「そうそう!」
私は頷く。
「それでパタパタする!」
「パタパタ?」
「暑い時に、こうやってパタパタと」
私は手を動かして扇ぐ真似をする。
「なるほど……」
ブレイお兄様が少し考える。
「竹なら、この領地にはたくさんあるしな」
そう。そこがポイント。材料がある。
しかも竹は、この領地の主要産業の一つ。
今まで籠やふるいなどに加工しているけど、他にも使い道はあるはず。
扇子なら、そこまで難しい加工も必要ない。
……たぶん。
「これも面白そうね!」
ワイズお姉様も興味津々だ。
「じゃあ、二人のを書いて、お父様に渡しておくか!」
ブレイお兄様が言う。
「うん!」
「そうしましょう!」
二人が頷く。私も木板を見る。
そこには三人のアイデアが並んでいた。
固形炭。炭ペン。
そして――色のついた筆記具。
竹扇子。
まだ商品になるかどうかも分からない。
作り方すら分からない物もある。
でも。こうして三人で考えてみると、意外と色々出てくるものだ。
「じゃあ、お父様のところへ持っていこう!」
「おー!」
「行きましょう!」
三人で木板を持って、執務室へ向かう。
……ふふふ。私一人の発明じゃない。
これなら、私が目立つこともない。
そう思っていた。
この時の私は。まさか、この三人の発明品が、パンパ領の新しい産業になっていくなんて思ってもいなかった。




