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転生した貧乏男爵令嬢、領地を開発して大金持ちになります!  作者: 稔


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お祖母様、領内偵察のお土産は熊でした

『数日後、妻が領内を回ってきた。どうやら、私の領地はどこも山だったようだ。話を聞くと、水源は至る所にあるらしい。木や竹の資源は、腐っても困らないほどあるという。

しかし……妻の足でも、領内を回るのに五日か。かなり広い』


「……はい?」 


私は、思わず日記から顔を上げた。


「五日……? どういうこった!?」


妻の足でも五日……いや、待ってほしい。


お祖母様の足でも、というところが重要だ。

あの人、普通の人間の移動速度じゃないんですけど!?


山道を歩いているのか、それとも木から木へ飛び移っているのか。


いや、今はそこを考えるのはやめよう。 


「……とにかく、パンパ領は広いんだな」


私は、改めて日記を読み進めた。


『久々に妻と二人だ。家はまあまあ上手くできていると褒められた。嬉しい!』


「……ふふっ」


思わず笑ってしまった。


お祖父様、嬉しかったんだ。

普段の様子を見ていると、褒められたくらいで喜ぶようには思えないのだけれど。


やっぱり、好きな人に褒められるのは嬉しいものなのだろう……まあ、家を蹴り倒した木で作ったという話は、いまだに理解できないけど。


『……』


「……ん?」


次の行は、なぜか少し間が空いていた。

そして、その後に続いていたのは――。


『妻が仕留めた熊を焼くとするか』


「……熊!?」


私は思わず声を上げた。


いやいやいや!ちょっと待って!

久々に夫婦二人で過ごして、家を褒められて喜んで、その後に熊!?


どうして、そんな流れになるの!?

しかも、仕留めたのはお祖母様らしい。


「……お祖母様、昔から強かったんだなぁ」


いや、昔からどころではない。

今でも十分に強い。


この前だって、鹿を背負って屋敷まで来たのだから。熊を仕留めたと聞いても、驚くべきなのに、どこか納得してしまう自分がいる。


……慣れって怖い。


私は気を取り直して、続きを読むことにした。


『食事をしながら、妻から偵察の話を聞いた。

やはり平らな土地は点在しているが、田畑をたくさん作れるほどの広さはないようだ。さて……どうしたものか』


「……偵察!?」


私は、日記を持つ手に力を込めた。


いや、熊の方に気を取られていたけれど、こっちも重要な情報じゃないか!お祖母様が領内を回り、地形や資源を調べていた。


水源は豊富。木や竹も大量にある。


しかし、平らな土地は少ない。

田畑を広げるには厳しい環境だったということだ……今のパンパ領と、ほとんど変わっていない。


「なるほど……」


私は、机の上に地図を広げた。


山が多く、水源はあちこちにある。木材や竹材には困らない。けれど、広い農地を確保するのは難しい。だからこそ、棚田を作るという考えが出てくるわけだ。


「……うーん」


私は、しばらく考え込んだ。


棚田を作るには、斜面を整え、水を引き、土が流れないようにしなければならない。

平らな土地が少ないからといって、斜面ならどこでも田畑にできるわけではないのだ。


水が引ける場所なのか。

土が十分にあるのか。

大雨で崩れる危険はないのか。


実際に現地を調べてみないと、何とも言えない。


「……これは、読む分には楽しいけど……」


私は、日記に目を落とした。


「これからの開拓に、役に立つのか?」


お祖父様の開拓初期の生活は、確かに面白い。

木を蹴り倒して家を作ったり、お祖母様が熊を仕留めたり……いや、最後のは普通じゃないけど。


しかし、私が知りたいのは、開拓を進めるための具体的な方法だ。どこに家を建てたのか。

どうやって道を作ったのか。

水をどう引き、どんな土地を畑にしたのか。

そういう記録があれば、参考になるはずなのに。


「……もう少し、詳しい記録はないのかな?」


私は、日記のページをめくった。


もしかしたら、これから先に書かれているかもしれない。

開拓が進むにつれて、家や道の作り方も変わっていった可能性がある。

最初は適当に作った家でも、後から改善したかもしれない。

道だって、木を倒しただけでは終わらなかったはずだ。


「よし。もう少し読んでみよう!」


私は、再び日記に集中した。


……ただし。お祖父様の日記には、開拓の記録だけでなく、夫婦の日常もたっぷりと書かれていた。

そして、その日常は、私の常識では理解できないことばかりだった。


「……次は何が出てくるんだろう?」


私は少しだけ期待しながら、ページをめくった。


開拓の知識を得るために始めた読書は、いつの間にか、お祖父様とお祖母様の規格外な昔話を読む時間になっていたのだった。

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