我が領民、フットワークが軽すぎる!
道具も人材も集まってしまった……しかも、短期間に。いや、短期間どころじゃない。募集した次の日だぞ!?
「……フットワーク軽すぎやろ! 我が領民!」
思わず、心の中で突っ込んでしまった。
目の前には、開拓作業に参加する人たちが集まっている。
皆、やる気に満ちた顔をしていた……うん。
集まってくれたのは、ありがたい。
ありがたいのだけれど!
もう少し、こう……準備期間とか、心の準備とか、あるでしょう!?
私なんて、まだ開拓の手順を全部決めていないんですよ!
「……さて」
私は、目の前の人たちを見渡した。
これだけ集まっているのだから、改めて話をしておいた方がいいだろう。
何も説明せずに出発させるわけにもいかない。
「……演説でもした方が良いのか?」
いや、演説というほど大げさなものではないけれど。とにかく、最初にやるべきことを伝えよう。私は一歩前に出た。
「では、皆さん!」
集まっていた人たちが、こちらを向く……四歳児の私が、大人たちに指示を出す。
いつまで経っても、慣れない光景だ。
「目的地は、既に分かっていると思いますが……」
「はーい!」
……元気だな!
「そうですね。まずは、木材確保のために、目的地周辺を切り拓くことから始めます!」
新しい集落を作るには、木材が必要だ。
家を建てるためにも、作業用の設備を作るためにも、木は欠かせない。
もちろん、全部の木を切り倒せばいいわけではない。
住居を建てる場所、畑にする場所、道を通す場所。
それぞれを考えながら、必要な範囲を少しずつ切り拓いていく。
まずは、現地を確認しながら木材を確保する。
そして、集落を作るための準備を進めてもらうのだ。
「分かりました!」
領民たちが力強く返事をした。
うん。いい返事だ。
「それから、作業を進めていて、何か足りない物や必要そうな道具があれば、遠慮せずに教えてください!」
私は、皆を見ながら続けた。
「私が考えますので!」
……そう。
道具については、多少の知識がある。
もちろん、何でも作れるわけではない。
けれど、こういう道具があれば便利だという案なら、出せるかもしれない。
現場で作業をする人たちの意見を聞けば、私が気づかなかった問題も見つかるだろう。
「必要なものは、どんどん教えてくださいね!」
「はい!」
「遠慮はいりません!」
「ありがとうございます!」
……あれ?
ちょっと待って。私、今、自分から仕事を増やすようなことを言わなかった?
いやいやいや!
現場で困るよりは、先に教えてもらった方がいい。道具が足りないせいで作業が止まるのは避けたいし、工夫できるところがあれば改善したい。
そう考えれば、間違ったことは言っていない……言っていないはずだ。
「そして!」
私は、気を取り直して声を張った。
「安全第一でお願いします!」
これだけは、絶対に伝えておかなければならない。山の斜面での作業だ。
木を切るにも、石を動かすにも、危険はある。
急いで開拓を進めた結果、誰かが怪我をしてしまっては意味がない。
「無理はしないこと。危険だと思ったら、作業を止めて相談してください。早く進めることより、皆さんが無事に帰ってくることの方が大切です!」
「分かりました!」
今度は、先ほどよりも真剣な返事が返ってきた。
よし。伝えるべきことは、伝えられたと思う。
「それでは、よろしくお願いします!」
私は頭を下げた。
領民たちも、それぞれ準備を始める。
道具を確認する者。荷物をまとめる者。
先発の人と作業の段取りを相談する者。
皆、手際よく動いていた……本当に、行動が早い。
「お嬢様、皆さん、すぐに出発できそうですね!」
隣にいたヴァイプさんが言った。
「そうですね……」
私は頷いた。
「私は、後から向かいますので!」
現地の状況を確認しながら、必要な準備を整える。抜根機とクレーンも、実際に使える状態なのか確認したい。
それに、水路や住居の配置など、まだ考えることは多い。
まずは皆に現地で作業を始めてもらい、私は後から合流する。
それが今のところ、一番よさそうだった。
「では、行ってきます!」
「気をつけてくださいね!」
開拓に参加する人たちを見送りながら、私は大きく息を吐いた。
……ふぅ。
ひとまず、第一歩は踏み出せた。
道具もある。人材もいる。
目的地も決まっている。
あとは、実際に開拓を進めていくだけだ。
「よし……これで、少しは領地が豊かになるわね!」
私は拳を握った。
新しい集落ができれば、住める場所が増える。
棚田を作ることができれば、食料の生産量も増やせるかもしれない。そして、領地が豊かになれば……。
「ふふふ……私の贅沢三昧計画にも、一歩前進ね!」
……そのためにも、まずは開拓だ。
私は机に戻り、次に必要な準備を考え始めた。
ところで。
「……私、現場に行くの、いつになるんだろう?」
まだまだ、やることは山積みだった。




