丸投げしたら、現場指揮が返ってきた!
お父様から、書類が回ってきた。
そこには、簡潔にこう書かれていた。
『新集落の開拓を許可する。資金の件は心配するな。領主代行として、現場指揮を取ること!』
…………。
「現場指揮を!?」
思わず声が出た。
いやいやいや!待ってください、お父様!
私は、棚田を作ったらどうかと提案しただけですよ?
実際に土地を調べて、必要な人材を集めて、道具を用意して、開拓を進める。
そういう面倒なことは、大人たちにお願いするつもりだったのに!
「何てこった……」
丸投げしたつもりが、書類になって戻ってきてしまった。しかも、領主代行という肩書きまでついている。
四歳児に現場指揮を任せるって、どういうことなの!?
……いや、今さらか。
この領地では、私が何かを提案すると、なぜか大人たちが本気で動き始める。
そして気がつけば、私の仕事が増えている。
「はぁ……こんなことになるとは……」
書類を机の上に置き、椅子の背もたれに体を預けた。逃げられそうもない。
お父様から正式に命じられた以上、途中で放り出すわけにもいかないだろう。
……うん。
やるしかないか。
「まずは……開拓に必要な人材と道具、かな?」
人材については、お父様やお母様に相談すればいい。新しく来る人たちの中にも、木工や土木に詳しい人がいるかもしれない。それぞれの得意分野を確認して、適した仕事を任せる。
問題は、道具だ。
「んー……まずは、道具がなければ始まらんか」
鍬やスコップ、鶴嘴くらいは、この領地にもある。けれど、それだけで山の斜面を開拓するのは大変だろう。
木を切り、根を掘り起こし、土地を平らにして、水路を作る。
考えるだけでも、かなりの重労働だ。
「人手が限られているんだから、少しでも作業を楽にしないとね」
そこで、ふと思いついた。
「……抜根機とクレーンもあるといいかな?」
木を切り倒すだけなら、斧や鋸で何とかなる。
しかし、切り株や太い根は厄介だ。
根が地中に張っていると、掘り起こすだけでも大変だし、棚田にするなら邪魔になる木もある。
人力で引っ張るにしても、人数が必要になるだろう。だったら、少ない力で大きな力を生み出せる道具があればいい。
「抜根機は、滑車や歯車を使って、引っ張る力を増やす仕組みにして……」
もちろん、木の大きさや根の張り方によっては、それだけで抜けるわけではない。
根の周囲を掘り、必要なら根を切り、それから引っ張る。
それでも、ただ大勢で綱を引くよりは楽になるはずだ。
「クレーンも欲しいなぁ」
開拓では、石や木材を動かすことも多い。
特に、棚田の石垣を作るなら、重い石を運ぶ機会もあるだろう。
人間が持ち上げられないものでも、滑車や巻き上げ機を使えば動かせる。
「現地で組み立てられるようにして……木材を使った、原始的な人力式でいいかな」
立派な機械を作る必要はない。
木材を組み合わせ、滑車とロープを使って、必要な場所で組み立てられるようにする。
持ち運びやすく、修理しやすく、領地の職人たちが作れるもの。
それが一番だ。
「よし。これも絵を描いて、職人さんに作ってもらおう!」
私は紙を広げ、まずは抜根機の構造を描き始めた。
滑車の数はどうするか。ロープをどこに掛けるか。支柱はどれくらいの太さが必要か。
……うん。
細かい強度計算なんて、私にはできない!
そこは職人さんに相談しながら調整してもらおう。
大事なのは、どういう道具が欲しいのかを伝えることだ。
次に、人力クレーンの絵も描いた。
こちらも、現場で組み立てられる構造にしたい。
「これで、少しは開拓が楽になるはず……!」
描き終えた図面を眺め、満足して頷いた。
これを職人さんに渡せば、試作品を作ってくれるだろう。道具ができるまでには、少し時間がかかるはずだ。
それまでに、ほかにできることはないだろうか?
「えーっと……ほかに、やっておくことは……」
開拓する土地の調査。
水源の確認。水路の計画。
作業する人たちの住居や食料。
必要な木材や石材の確保。
……あれ?
「やること、多くない!?」
思わず机に突っ伏した。
棚田を作るという、ちょっとした提案だったはずなのに。気がつけば、新しい集落の開拓計画になっている。
しかも、現場指揮は私。
「……お父様、絶対に丸投げしたわね?」
いや、私も丸投げしようとしたから、人のことは言えないけど!
「はぁ……」
私は顔を上げ、もう一度書類を手に取った。
逃げられないなら、やるしかない。
どうせ開拓するなら、少ない人数でも作業が進むようにしたい。
そして、できるだけ早く、新しい集落を形にする。
「よし。まずは道具を作ってもらって、その間に現地調査と人材の確認ね!」
こうして私は、四歳にして新集落の開拓責任者として、最初の準備に取りかかることになったのだった。
……誰か、私に優秀な秘書をもう一人つけてくれませんかね?
ヴァイプだけでは、絶対に足りない気がするんだけど!




