私にも専属メイドができました!
「クルーク! 奴隷の件は手紙に書いた通りじゃ。まだ暫く時間を貰うぞ!」
お昼ご飯を食べながら、お祖父様が言った。
「……分かりました!」
怪我をしている人や、体力が落ちている人もいる。無理に連れてくるわけにはいかない。
まずは第三集落で休んでもらって、体調が戻ってから考える。
それがいいだろう。
「それでじゃ。最終的に何人送れるかは、まだ何とも言えんが……」
お祖父様が私を見る。
「二百名程度の受け入れ準備をしていてくれ」
「……はい?」
二百名?に、二百人!?
「えっと……二百人ですか?」
「うむ。今のところ、そのくらいを想定しておる」
「……分かりました」
私は頷いた。
二百人か。住む場所は?食事は?仕事は?
色々と考えなければいけないことがある。
まあ、受け入れると決めた以上、準備を進めるしかない。
「それとじゃ」
「はい?」
お祖父様が、隣にいる少女を手招きした。
「クルーク専属のメイドを付ける」
「……はい?」
専属メイド?私に?
「この子じゃ」
お祖父様の隣に立っていたのは、十二歳前後に見える少女だった。
少女は緊張した様子で一歩前に出る。
「は、初めまして! 私はヴァイプです! よろしくお願いします!」
「…………」
私はヴァイプを見つめた。
そして、お祖父様を見る。
「……なぜ、私に?」
「なぜって、お前さんは色々と面白いことを考えておるじゃろう?」
「はあ……」
「ならば、その手伝いをする者が必要じゃ」
お祖父様は、当然のことのように言った。
「お前のばあさんに、常識を叩き込んでもらっておる。読み書きも計算も問題ない。これからお前の補佐をさせるには、ちょうどよいじゃろう」
……お祖母様に?常識を?いや。
お祖母様って、あの人よね?
暗殺部隊にいたとか、さらっと口を滑らせる人よね?
「……常識」
私は思わず呟いた。
ヴァイプ、大丈夫かな。
いや、むしろ色々と鍛えられて優秀になっている可能性もある。
「それに、この子がおれば、第一集落にも好きな時に行けるようになるぞ」
「本当ですか!?」
思わず身を乗り出した。
今までは、集落へ行くにも大人の都合を考えなければならなかった。
でも、専属メイドが一緒なら、行動しやすくなる。
これは大きい!
「うむ。お前の父にはエルンがおるが、あやつも領主の補佐で手一杯じゃ」
お祖父様は指を折りながら説明する。
「リヒトは、あれで一応は調理人じゃ。母親も集落同士の管理をしておる。ブレイは長男としてやるべきことがあるし、ワイズもそうじゃ」
……なるほど。
みんな、それぞれ仕事がある。
私の思いつきに付き合ってばかりはいられない。
「だから、お前の手伝いをする者を付けることにした」
お祖父様が笑う。
「ありがとうございます!」
私は素直に頭を下げた。
「じゃあ、わしは帰るのでなぁ」
「お祖父様!気をつけて!」
◇
これは助かる。本当に助かる!
「お嬢様! よろしくお願いします!」
ヴァイプが、もう一度頭を下げた。
「こちらこそ、よろしくね!」
私は笑顔で答えた。
これから一緒に行動する仲間だ。
仲良くしないとね!
「ヴァイプは、読み書きも計算も問題ない。仕事も覚えが早い。優秀なメイドじゃぞ!」
「そうなんですね!」
「はい! 精一杯、お仕えいたします!」
ヴァイプは真剣な表情で頷いた。
うん。やる気も十分。これは期待できそうだ。
……ただ。
「お祖父様」
「なんじゃ?」
「お祖母様から、どんな常識を教わったんですか?」
「はっはっは! それは本人に聞いてみるとよい!」
「…………」
絶対に何かある。
私はヴァイプを見た。ヴァイプは、にこやかに微笑んでいる……うん。
今は聞かないでおこう。
「ヴァイプ、これからよろしくね!」
「はい、お嬢様!」
こうして――私に専属メイドができた。
これで第一集落にも行きやすくなる。
領地開発だって、今まで以上に進められるはず!
「ふふふ……」
私は小さく笑った。
二百人の受け入れ準備もある。
新しい商品も考えたい。
やりたいことは、まだまだ山ほどある。
「よーし! 頑張ろう!」
「お嬢様、まずは何から始めましょうか?」
「え?」
……そうだった。
専属メイドができたということは、仕事を手伝ってもらえるということ。
つまり――。
「これで、私も少しは楽ができる!」
「……お嬢様?」
「あっ、何でもないよ!」
私は慌てて笑顔を作った。
ふふふ。これからは、今まで以上に領地開発を進められそうだ!




