手紙が届いたら、お祖父様がいた
さーて。
これで、また一つ案件が無くなったわ!
金メッキの髪飾りは、お母様に丸投げした。
やっぱり、丸投げできるのは楽ね!
私は満足して頷いた。
「クルークお嬢!」
「ん? なーに? リヒトさん!」
「手紙が来たので、渡しておきますよ!」
「手紙?」
誰からだろう?
「お祖父様からですよ!」
「お祖父様?」
私は手紙を受け取った。
「あと、お昼ご飯を作っておきましたので、大部屋へどうぞ」
「分かったわ!」
よし!まずはお昼ご飯!手紙はその後だ。
……いや、やっぱり気になる。
私は封を開けた。
『可愛いクルークへ。
お前さんが買った奴隷の件だが、ぼちぼち第三集落に到着しつつある。
体力が落ちていたり、怪我をしている者は、ここで休息させることにした。怪我が治ってから、今後のことを考えようと思う。
体力がある者は、わしが案内するので、またそちらへ連れていく。 お爺ちゃんより』
「ほうほう」
私は手紙を読み終えた。まあ、そりゃそうだ。
この領地は山の中。
道だって、平坦な街道とは違う。体力が落ちていたり、怪我をしていたりすれば、移動するだけでも大変だろう。
無理をさせず、第三集落で休ませるのは正しい判断だ。
「お祖父様、ちゃんと考えてくれてるのね」
私は手紙を畳んだ。そういえば、お祖父様が帰ってから、もう数十日になるのか。
……いや。数十日?
「うーん……」
あの人、帰る時も嵐のようだった。
来たと思ったら、訓練して、鹿を持ってきて、バーベキューをして、椎茸料理を食べて。
そして、あっという間に帰っていった。
「本当に嵐みたいな人だったわ……」
まあ、また来ると言っていたし。
こうして手紙もくれる。
お祖父様には感謝しないとね!
「さて。お昼! お昼!」
私は手紙を置き、大部屋へ向かった。
◇
ガチャッ!
「お昼ご飯は何かなー?」
私は大部屋の扉を開けた。
すると――。
「よーう! クルーク! 元気だったか?」
「なっ!?」
私は固まった。そこにいたのは――。
「お、お祖父様!?」
「おう!」
お祖父様が、当たり前のように座っていた。
「そんなに驚くな!」
いやいやいや!驚くでしょ!
「手紙にも書いて出しただろ?」
「…………」
私は、ついさっき受け取った手紙を思い出す。
確かに書いてあった。
体力がある者は、わしが案内するので、またそちらへ連れていく……うん。
書いてある。でも!
「いやいや! その手紙、貰ったのついさっきなんですが!?」
「おう! そうか!」
「そうか、じゃないでしょ!」
私は思わず叫んだ。手紙を受け取り読んだ。
そして、大部屋に来た。その間、ほんのわずか。なのに――。
「なんで、もういるのよ!?」
お祖父様は豪快に笑った。
「はっはっは! 驚かせちまったか!」
驚いたどころじゃない!
私は頭を抱えた。
「……待って」
そもそも、おかしい。
お祖父様は第三集落から来たんだよね?
第三集落から、ここまで山道を歩いてきたんだよね?
「手紙は……」
私は手紙を握りしめる。
「手紙は第三集落から、ここまでどれだけかかったの!?」
お祖父様が首を傾げた。
「さあ?」
「さあ、じゃない!」
私は叫んだ。
距離と日数が、私の中でバグっている。
お祖父様が速すぎるのか?
それとも、手紙が届くのが遅すぎるのか?
いや、待て。
そもそも、お祖父様は以前、第三集落からここまで来るのに、普通の人なら三日かかる道を一日半で来ると言っていた。
それでも十分おかしい。
なのに今回は、手紙を受け取った直後に本人がいる。
「……お祖父様」
「なんじゃ?」
「どうやって来たんですか?」
「歩いてきたぞ!」
「…………」
私は天井を見上げた。駄目だ。
聞いた私が悪かった。
「クルーク、飯を食おう!」
「……はい」
お祖父様は楽しそうに笑っている。
私は椅子に座った。
目の前には、お昼ご飯。
そして、向かいには規格外のお祖父様。
「……この家、普通の人はいないのかしら」
小さく呟く。
「なんじゃ?」
「何でもありません!」
クルークは慌てて首を振った。
とりあえず、お昼ご飯を食べよう。
うん。そうしよう……でも。
手紙と本人、どっちが速いのよ!?
クルークは、もう一度だけ手紙を見つめた。




