金メッキ、売ってもいいですか?
数日後。
「届いた!」
私の机の上には、依頼していた髪飾りが並んでいた。数は数十個。あれ?十個くらいのつもりだったんだけど……まあ、いいか!
「ふむふむ。シンプルで、なかなか良い感じだわ」
丸いもの、細長いもの、花や葉を模したもの。
どれも余計な装飾は少なく、なかなかいい出来だ。
職人さん、やるじゃない!
そして、髪飾りと一緒に手紙も添えられていた。
何々……。
『ご依頼の品を作成いたしました。このような感じでよろしいのでしょうか。見た目は少々地味ですが、ご確認ください』
「問題ナッシング!」
私は思わず声を上げた。
これくらいが丁度いい。
最初から豪華すぎるものを作ってもらっても困るし、まずは金メッキを施した時に、どんな見た目になるかを確かめたい。
「ふふふ……」
私は不敵な笑みを浮かべる。
さて。早速、金メッキ作業を始めよう!
◇
そして。
「くくく……」
私は出来上がった髪飾りを眺めていた。
金ピカ。金メッキ。
どれも金色に輝いている。
見た目だけなら、まるで金製品だ。
「これは……凄いわね」
思わず感心してしまう。
もちろん、よく調べれば違いは分かるかもしれない。でも、この世界の人たちがパッと見ただけで、金製品と金メッキ製品を区別できるとは思えない。
「うーむ……」
私は髪飾りを手に取った。
「騙すのは、よくないわよね?」
……いや、待て。
金メッキ自体は、別に悪いものではない。
表面に本物の金を使っているのだから、完全な偽物というわけでもない。
問題は――。
「どうやって売り捌くか、なのよね」
金メッキだと説明せずに売れば、金製品だと思われる可能性がある。
かといって、金メッキですと説明しても、この世界の人たちにどこまで理解してもらえるのか分からない。
「安くて、見た目は金製品と変わらない……」
商品としては魅力的だ。
でも、売り方を間違えれば、後々面倒なことになるかもしれない。
「うーん……」
せっかくここまで作ったのに。いざ販売となると、判断に迷う。
「……ここは、大人に判断してもらうか」
うん。それがいい!
私は髪飾りをまとめて、お母様のところへ向かった。
◇
「お母様!」
「あら、クルーク。どうしたの?」
「これを見てください!」
私は髪飾りを机の上に並べた。
「ん? 金の髪飾りじゃないの!?」
お母様が目を丸くする。
「いったい、こんな物をどうしたの!?」
「実は……」
クルークは、これまでの経緯を説明した。
金メッキの方法を考えたこと。
発電機を作ったこと。
水車を利用して発電できるようにしたこと。
そして、髪飾りに金メッキを施したこと。
「なるほど……いまいちよく分からないけど」
お母様は、金色に輝く髪飾りを手に取った。
「見た目は金。でも、中身は別の金属というわけね」
「はい!」
「表面だけ、本物の金で覆っているのね」
「その通りです!」
クルークは頷く。
「強く削れば、金の部分が剥がれてしまいます。それに、長く使っていると、表面がすり減る可能性もあります」
「ふむ……」
お母様は、髪飾りを裏返したり、光にかざしたりしている。
「これは……取り扱いに迷う製品ね」
「やっぱり、そうですよね?」
「でも、安く作れて、見た目は金製品に近い。そういう商品を欲しがる人もいるでしょうね」
お母様は、しばらく考えていた。
そして――。
「ふふふ。クルーク!」
「はい?」
「これは私が預かります!」
「えっ?」
「金メッキとやらの製造方法を、書面にまとめて提出しなさい!」
「分かりました!」
即答した。よし!大人に丸投げ完了!
販売する時の説明も、値段も、どこに売るかも。私が考える必要はない!
……いや、製造方法の書類は書かないといけないけど。
「まあ、マニュアルを書くだけだし!」
クルークは心の中でガッツポーズをした。
これで、お母様が販売方法を考えてくれるはず。上手くいけば、金メッキの髪飾りが商品になる。
さらに――。
「ふふふ……」
クルークは笑みを浮かべる。
金メッキの技術があれば、髪飾り以外にも応用できる。ブローチだって、指輪だって、ペンダントだって。
色々な商品が作れるかもしれない。
「これで、また新商品が増えるわね!」
クルークは満足して頷いた。
技術を考え試作品を作り大人に渡す。
あとは任せる!うん。
我ながら、素晴らしい役割分担だ。
「クルーク、ちゃんと書類を書くのよ?」
「はーい!」
……四歳児なのに、どうしてこんなに仕事があるのかしら。まあ、いいか。
そのうち、また新しい商品が完成するだろう。
そして私は――。
「贅沢三昧の生活に、一歩前進!」
小さく拳を握った。




