発明品、商品化へ
ふぅ〜。
とりあえず、お祖父様の書斎へ逃げ込むと。
ここには何度も入っているけど……。
改めて見ると、これほどの本を集めたのは凄いわ。この世界のことも、うっすらとは分かってきたし。
さて。また本を読むか。
私は適当な本を手に取る。すると。
隣はお父様の執務室。
壁がそれほど厚くないせいか、声がよく聞こえる。
……ん?どうやら、木工師と炭焼師の方が呼ばれたようだ。
私は本を置くと、そっと壁際へ。
そして――壁に耳を当てる。
盗み聞き?いやいや。これは情報収集よ。
領地開発には情報が大事なのだ。
「ほぅ。このような物が……」
炭焼師の声が聞こえてくる。
「確かに。理屈はともかく、実際に目の前に完成品がありますからなぁ」
おっ。ちゃんと評価してくれている。
「このペンも?」
今度は木工師の声。
「四角くて持ちづらいですが……角を落として、六角形にして、軽く削れば……」
おお!やっぱり分かる人が見ると違うわね。
私たちが作ったものは、まだただの試作品。
四角い木の棒に炭を詰めただけ。
持ちやすさなんて、まったく考えていなかった。
でも。
「これを参考に、改良してみてくれ」
お父様の声がする。
「「はい。分かりました」」
おお。話が早い!これでいい。
これでいいのよ!
私が作り方を教えて、後は専門家に任せる。
私が全部作る必要なんてない。
むしろ、私が作り続けたらおかしい。
四歳児が工房に入り浸って、職人顔負けの技術を発揮していたら、それこそ怪しい。
その点、大人たちが改良してくれるなら問題ない。
ふむふむ。いい流れだわ。
これなら二つの商品が完成するはず。
固形炭は炭焼師が。
鉛筆……いや、この世界ではまだ名前のない筆記具は木工師が。
それぞれ専門家が改良してくれる。
しかも、お父様も商売になる可能性を考えてくれている。
完璧じゃない?
私は壁から耳を離す。そして、ニヤリと笑う。
くくく。
これで金持ちになれるか!?
いや、待て。まだ商品が完成しただけ。
売れるとは限らない。
でも……売れたら?
領地で大量生産できたら?
木も炭も、この領地には大量にある。
原料は山ほどあるのだ。
それを加工して、今までより高い値段で売る。
そうすれば――
「……儲かる!」
思わず声が出そうになり、慌てて口を押さえる。
危ない。
またお父様に聞かれるところだった。
そして、本を開きながら考える。
ふふふ。
最初の商品は二つ。
でも、領地には木と竹が大量にある。
ならば……まだまだ作れる物はあるんじゃない?
私はニヤニヤしながら、本のページをめくった。領地開発は、まだ始まったばかりだ。




