危ない!転生者だとバレるところだった
これで上手く行くかな?
私は、少し離れたところから父様とリヒトさんの話を聞いていた。
私自身は表に出ていない。
固形炭を作ったのは、兄と姉と私。
でも、大人たちから見れば、子供たちが何かを作っただけ。
ここから先は、大人に任せればいい。
上手く産業に持っていければ――木と竹しかない我が領地が、少しは変わるかもしれない。
「…………」
せっかく貴族に生まれたんだ。
前世では、しがないホームセンター勤務だった。今度はお金持ちになって――ガンガン稼いで、贅沢三昧の生活を送るんだ!
そう思っていた。二日前までは。
「クルーク」
「…………」
ん?父様?
「クルーク」
「はい!」
振り返る。
お父様がこちらを見ている。
「この固形炭の作り方を、どうやって知った?」
「…………」
……え?なんで私に?
「なぜ私に……?」
思わず口に出してしまった。
「ブレイとワイズから聞いた」
「…………」
ですよね。
「てっきり二人が思いついたのかと思ったんだがな」
「…………」
嫌な予感がする。
「二人から聞いたら、元はクルークが思いついたそうじゃないか」
「…………」
終わった?いや。まだだ。落ち着け。
四歳児。私は四歳児。
前世の記憶があることを知られるわけにはいかない。
「それは……」
どうする?どうする?
「…………」
そうだ。書庫。
「お祖父様の書庫で見つけました!」
「書庫?」
「はい!」
「そんな記述があったのか?」
「…………」
やばい。細かく聞かれるか?
「はい!」
私は勢いよく頷いた。
「これなら私にも作れるかな? と思って!」
「なるほど……」
お父様は少し考え込む。
「お祖父様の書庫か……」
よし。今のところは誤魔化せている。
「それで、作り方は?」
「…………」
やっぱり聞くよね。
私は覚えている限り説明した。
炭を細かくする。のりを混ぜる。形を整える。
乾燥させる。そして使う。
「なるほど」
お父様は頷いた。
「分かった。また何かあったら、私にも話してくれ」
「はい!」
よし!話は終わった。
「…………」
危なかった。ものすごく危なかった。
前世の記憶があることまで、あと一歩だった。
私は心の中で胸を撫で下ろす。
セーフ!セーフ!
……いや。待て。よく考えたら――。
「…………」
私。今後も何か作るつもりなんだけど。
「…………」
そのたびに、これ聞かれるんじゃないか?
「どうやって知った?」
「どこで覚えた?」
「誰に教わった?」
「…………」
まずい。これは――ちゃんと設定を考えておかないと。私は心の中で、今後の言い訳を考え始めた。
お祖父様の書庫。便利だ。ものすごく便利だ。
これからも、しばらくはお世話になろう。
そして――。
「よし」
私は改めて決意する。
絶対に前世のことはバレない。
その上で――パンパ領を発展させる。
そして、お金持ちになるぞー!
「クルーク?」
「はい!?」
「何でもないならいいんだが……」
「なんでもないです!」
……危ない。本当に危ない。
転生者として生きるのも、なかなか大変だ。




