焼肉のタレ、商品化します
夕食。食卓には――。
「おお!」
「これは美味そうじゃ!」
椎茸料理がずらりと並んでいた。
焼き椎茸。椎茸の肉詰め。椎茸のチーズ焼き。
椎茸の煮物。そして、椎茸の炊き込みご飯。
「これは凄いのう!」
お祖父様は大喜びだ。
「椎茸が更に、美味しくなるとは!」
「うむ。どれも美味しいのう」
お祖母様も嬉しそうに食べている。
リヒトさん、頑張ったな……まあ。
私はというと。
「クルーク……」
お祖父様が私の皿を見る。
「なんじゃ、その料理は?」
「松茸です」
「…………」
お祖父様が、目の前に並ぶ椎茸料理を見る。
そして、私の皿を見る。
「せっかくの高級品を目の前にして、椎茸ではなく松茸か?」
「はい」
私は普通に答える。
「私は松茸が好きなので」
「そうか……」
お祖父様は少し困ったような顔をした。
でも仕方ない。前世では、松茸なんてほとんど食べたことがなかった。スーパーで見かけても、
「高っ!」
で終わっていた。食べる機会なんて、ほとんどなかった。だからこそ――。
「やっぱり松茸よ!」
心の中で、私は叫んでいた。
せっかく異世界に来てしかも貴族の家に生まれたのだ。食べられるものなら、食べたい。
「クルークちゃんは、本当に食べるのが好きじゃな」
お祖母様が笑う。
「はい!」
私は元気よく答えた。
美味しいものは正義なのだ。
◇
翌朝。
「今日は訓練はないのね」
私は自分の部屋で、のんびりしていた。
昨日は椎茸料理をたくさん食べた。
お祖父様もお祖母様も大喜び。
でも――。
「お兄様、夕食の時にはぐったりしてたけど……」
ブレイお兄様の姿を思い出す。
昨日の夕食では、明らかに疲れ切っていた。
「一体、何をしていたのかしら……」
私は考える……聞くのが怖い。
いや聞かない方がいい気がする。
お祖父様とお祖母様が来てから、我が家の訓練は明らかにおかしくなっている。
「さて……今日は何するかなぁ」
私は伸びをする。
油菜の芽が出るのはまだ先。
椎茸はリヒトさんに任せてある。
新しい商品を考えるのもいい。
そんなことを考えていると――。
「ん?」
どこからか声が聞こえてきた。
「……調理場?」
私は耳を澄ます。
「リヒト! もっと作れ!」
「は、はい!」
お祖父様の声だ。
「作る?」
私は首を傾げる。
「何をだ?」
気になった私は、調理場へ向かう。
すると――。
「リヒト!」
「はい!」
「バーベキューの、あれじゃ!」
「焼肉のタレですか?」
「そうじゃ!」
お祖父様が勢いよく答える。
「もっと作れ!」
「は、はい……」
リヒトさんが困ったように頷いている。
「焼肉のタレを売りさばくぞ!」
「…………」
私は、その場で立ち止まった。
「焼肉のタレ……」
そういえば、お祖父様もお祖母様も、かなり気に入っていた。特にお祖父様なんて――。
「肉がいくらでも食える!」
とか言っていた気がする。
「あー……」
私は納得した。
「余程、美味しかったのね」
お祖父様が焼肉のタレを商品にするつもりらしい。
「また一つ、売り物が増えたわね」
私はニヤリと笑う。いい感じだ。
木材。竹製品。炭。蜂蜜。
そして――焼肉のタレ。
「ふふふ……」
商品が少しずつ増えていく。
売れるものが増えれば、お金も増える。
お金が増えれば――。
「もっと贅沢できる!」
これだ。これこそ私が目指していた生活。
「この調子で、どんどん売り物を増やして……」
私は拳を握る。
「贅沢三昧するぞー!」
「クルークお嬢、朝から何を企んでいるんですか?」
「え?」
いつの間にか、リヒトさんがこちらを見ていた。
「何でもないです!」
私は笑顔で答えた。
でも私の頭の中では――次の商品探しが、もう始まっていた。




