椎茸、こんなに増えていました
さて。油菜の種も無事に植えた。
芽が出て、花が咲けば、蜂の餌にも困らなくなるはず。
あとは――。
「早く芽が出てくれないかなぁ〜」
植えたばかりの土を眺めながら、私は呟く。
「芽が出るのが楽しみじゃな〜」
「ですね。お祖母様!」
お祖母様も楽しそうに笑っている。
「うんうん。種を採れば、どんどん増やせるからなー。楽しみじゃな」
「はい!」
これで蜂も喜ひ、蜂蜜も増える。
そして油菜からは、葉も食べられるし、種から油も取れる。なかなか良い作物だ……とはいえ。
まだ芽すら出ていない。
今すぐできることはない。
「クルークちゃんは、他には何を育ててるんじゃ?」
「うーん……」
私は少し考える。
直接、私が育てているわけではないけど。
「今はリヒトさんに任せてる椎茸かな?」
「…………椎茸!?」
お祖母様の声が大きくなった。
「はい!」
「椎茸!?」
「はい!」
「育てておるのか!?」
「はい!」
私は頷いた。
「家の裏にあります。こっちです!」
「ちょ、ちょっと待つんじゃ!」
私はお祖母様の手を引いて、家の裏へ向かう。
そして――。
「なっ!?」
お祖母様が立ち止まった。
「椎茸!?」
「はい」
「こんなに沢山!?」
そこには、木に植え付けられた椎茸がずらりと並んでいた。まだ試験段階ではある。
でも、最初に比べればかなり数が増えている。
「はい! 今はリヒトさんに丸投げで、どんどん増やして、集落でも育ててもらうための実験です!」
「丸投げ……」
お祖母様が、少し遠い目をする。
「リヒトも大変じゃのう……」
「でも、ちゃんと育ててくれてますよ!」
「それは見れば分かる」
お祖母様は椎茸を一つ一つ眺めている。
「これは……凄いのう」
「でしょう?」
「山には木がいくらでもある。椎茸を育てられるなら、食べ物を増やせるということか」
「そうです!」
私は胸を張る。
「しかも、干しておけば長く保存できます!」
「干し椎茸か」
「多分、どこかに……」
私は周囲を見回す。
「あっ、これかな?」
少し離れたところに、干している椎茸が並んでいた。
「今は干しておいて、使う時に水に浸けて戻して使います」
「ほう……」
お祖母様が干し椎茸を手に取る。
「これなら保存もできるのう」
「はい!」
「山の中で採れるものを、育てて増やして、保存までできる……」
お祖母様が感心したように頷く。
「これは、かなり良いのう」
「でしょう?」
「しかも椎茸なら、畑を使わんでもよい」
「そうなんです!」
そこが大事なのだ。パンパ領は平地が少ない。
だから、畑を増やすにも限界がある。
でも椎茸なら――日陰も利用できる。
「集落でも育ててもらえれば、食べ物も増えますし、上手くいけば売ることもできます!」
「なるほどのう」
お祖母様が椎茸を見る。
「これは、領地に合っておるな」
「はい!」
山には木がある。その木を使って食料を増やせるなら、こんなにありがたいことはない。
しかも。
「後で、みんなで食べましょう!」
「おお、それは楽しみじゃ!」
お祖母様の顔がぱっと明るくなる。
「今日は椎茸料理か!」
「はい!」
「なら、ワシも手伝おう!」
「え?」
「美味しく食べるなら、料理も大事じゃろう?」
「……確かに」
私は頷いた。
椎茸を育て干し椎茸にする。そして食べる。
うん。やっぱり食べ物の開発は楽しい……まあ私は育ててないんだけどね。
「リヒトさん、頑張ってください!」
「クルークちゃん、丸投げはほどほどにな」
「…………」
お祖母様の言葉が、妙に胸に刺さった。
「……はい」
でも椎茸はちゃんと増えている!なら、よし!




