お祖母様、残像になる
「クルークちゃんや!」
「はい?」
声の方を見ると、お祖母様が立っていた。
「買ってきたよ」
「……」
早くね?さっき出ていったばかりだよね?
「ありがとうございます!」
「ほれ」
お祖母様から袋を受け取る。
「どれどれ……」
中身を見る。
「確か、小さくて黒っぽいつぶつぶの……」
クルークは前世の記憶を頼りに種を探す。
「あれ?」
出てきたのは――。
「何じゃこれ?」
大豆くらいの大きさの種。
「これが油菜の種?」
「そうじゃよ?」
お祖母様は頷く。
「葉も食べられるし、実も炒ったり、煮たりできる」
「ほうほう」
「絞れば油も採れるんじゃ」
「油も!?」
それは便利だ。やっぱ私の知ってる油菜。種を手のひらに乗せる。
種の大きさは違うけど……見た目は私の知っている油菜とは少し違う。
まあ、この世界の植物だ。
多少違っていても不思議じゃない。
「早速、蒔いてみます!」
「私も側で見てみるとするか」
お祖母様が隣に立つ。
「軽く掘って蒔くだけじゃ。水を与えて、それで終わり」
「簡単ですね!」
「クルークちゃんでも出来るじゃろ」
「はい!」
クルークはスコップを持つ。
「よいしょ……」
土を軽く掘り、種を一粒。また掘り、種を一粒。
「スコップで、掘っては蒔いて……」
そして最後に水を与える。
「これでよし!」
あとは芽が出るのを待つだけ。
「ちゃんと育つかなぁ」
クルークは土を見る。
黄色い花がたくさん咲くところを想像する。
そして、その花に蜂が集まる。
「ふふふ……」
蜂蜜が楽しみだ。
「クルークちゃんや?」
「はい?」
お祖母様が養蜂箱を見る。
「これか? 蜂の箱は?」
「そうです!」
「ほう……」
お祖母様が養蜂箱へ近づく。
「私も近くで蜂を見てみるか」
「え!?」
私は慌てる。
「防護する服を着ないと!」
でも、お祖母様は気にした様子もない。
「大丈夫じゃ」
「え?」
「蜂は巣にいたずらしなければ、攻撃してこない」
「……」
おお。さすが。それも知っているのか!クルークは感心する。
「やるな!お祖母様は!」
「まあ、このくらいはな」
お祖母様は平然としている。
そして養蜂箱の近くへ。
「どれどれ……」
「お祖母様、気をつけてくださいよ?」
「大丈夫じゃ」
シュッ!
「……?」
シュッ!
ん?何だ、この音?
クルークはお祖母様を見る。
シュッ!シュッ!
「……」
何だ?この音は?蜂の羽音じゃない。もっと速い。
「ん?」
クルークは目を細め、お祖母様の方から聞こえてくる。
「……」
おかしい。私の目が変なのか?
「お祖母様?」
「ん?」
そこにいる……いるはずなのに。
「……」
なんだ?お祖母様が――残像に見える。
シュッ!シュッ!
「……」
クルークは目をこすり、もう一度見る。
やっぱり。
「何だ!?」
私の目がおかしいのか!?お祖母様に焦点が合わない。姿が一瞬消えたと思ったら、少し離れた場所にいる。そしてまた元の場所に戻っている。
「ん!?」
お祖母様がこちらを見る。
「クルークちゃんや?」
「は、はい!」
「ちゃんと蜂は住み着いとるぞ」
「……」
「このまま放っておけば、数ヶ月後には蜂蜜が採れるじゃろ」
「……」
何だ?何なんだ?クルークは目を細める。
お祖母様に焦点が合わない。
いや。違う。焦点が合わないんじゃない。
お祖母様の動きが速すぎて、私の目が追いついていない!?まさか蜂をかわしてるのか!?
「……」
クルークは悟った。やっぱりこの家は、おかしい。お祖父様だけじゃない――お祖母様……も?
「なんじゃ?」
「……なんでもないです」
聞かないほうがいい。
絶対にクルークは、そう心に決めた。




