蜂蜜を増やすなら、花を育てよう
「クルーク!」
「はい! お姉様!」
朝からワイズお姉様がやって来た。
「防護服っての、どうにか完成したわよ!」
「おー!!」
クルークは思わず両手を上げる。
「ありがとうございます!」
ついに完成した!
前に私が考えた設計を、ワイズお姉様とお母様が形にしてくれたのだ。厚手の布で身体を覆い、手袋や靴も用意されている。
そして――。
「私が作った、この防護メガネも!おお!」
顔もしっかり守れる。これなら蜂に近づける!
……たぶん。
「しかし……」
ワイズお姉様が防護服を見る。
「こんなの何に使うの?」
「これを着てですね……」
クルークは防護服を指差す。
「この防護メガネをしまして……」
そして、庭の養蜂箱を見る。
「蜂に近づいて、蜂の巣の観察です!」
「はい?」
ワイズお姉様の顔が固まった。
「何でそんなことを!?」
「蜂を大きく育てて、蜂蜜を採るのです!」
「蜂蜜!?」
「そうです!」
蜂蜜。甘くて美味しい。そして、この世界では貴重品になる可能性もある。
「でも、蜂の巣なんて見つけられるの?」
「それがですね!」
クルークは得意げに胸を張る。
「蜂が住みやすいように養蜂箱を作りました」
「養蜂箱?」
「はい!」
クルークは庭の隅に置かれた箱を見る。
「何と、そこには蜂が住み始めているのです!」
「本当に?」
「本当です!」
だからこそ、どんな様子なのか近づいて確認したい。蜂が巣を作っているのか。どれくらい増えているのか。ちゃんと暮らしているのか。
それを確認するための防護服だ。
「気になるなぁ……」
ワイズお姉様も養蜂箱を見る。
「私も自分のを作ろうかしら?」
「それなら!」
クルークは用意していたものを持ってくる。
「メガネは何個か試しに作りましたので、いい具合のを差し上げます!」
「そう?」
ワイズお姉様がメガネを受け取る。
「ありがとう!」
「いえいえ!」
これで二人とも準備完了。
「早速、服とメガネをしてっと」
クルークは、防護服を着て、養蜂箱へ向かう。
◇
「ブーン……ブーン……」
周囲から蜂の羽音が聞こえる。
「結構いるわね……」
少し離れたところから養蜂箱を見る。
クルークは慎重に近づいていく。
前世の知識では、蜂は巣に危害がない限り、むやみに襲ってくるわけではない。
もちろん、絶対ではない。だから防護服を着ている。
「……」
養蜂箱の近くまで来る。
蜂が何匹も出入りしている。
「結構いそうだけど……」
クルークは耳を澄まし、養蜂箱に耳を近づける。
「ブーン……」
箱の中からも音が聞こえる。
「すごい……」
たくさんの蜂がいる。
ちゃんと住み着いてくれたらしい。
「一年くらい大きくするのに掛かったんだっけな?」
最初に養蜂箱を作ってから、まだそれほど経っていない。それでも、こうして蜂が暮らしている。
「まあ、楽しみだ!」
これなら、そのうち蜂蜜が採れるかもしれない。
クルークは養蜂箱を眺める。
……ん?そこで、ふと気づいた。
「でも……」
周囲を見渡す。
「この辺り、花があまりないような……」
庭に花はある。でも、蜂が蜜を集めるには少ない気がする。
「遠くまで採りに行ってるのかな?」
蜂なら、自分で飛んで行ける。
かなり遠くまで行っている可能性もある。
でも。
「だったら……」
クルークは少し考える。
「花畑までは行かないけど……」
広い花畑を作るのは大変だ。ただ蜂のために、花を少し増やすくらいならできる。
「花を育てるか?」
蜂蜜を採るなら、蜂だけ育てても仕方がない。
蜂が蜜を集められる環境も必要だ。
「うん」
クルークは養蜂箱を見る。
「蜂蜜を増やすなら……」
その周りに、蜜を集められる花を増やせばいい。
「花も育てよう!」
また一つパンパ領で、やることが増えた。




