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冷徹令嬢は王国最強戦力たちを乱しがち。最強魔導騎士は今日も赤面しています  作者: 荒木カルメン
第一章 溶けた気持ちと強き想い

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第8話 強さと隠れた棘

入学してしばらく経ち、新緑が目を引く季節になった。王立学園では剣術大会が開催される。

参加制限はないので、この日に合わせ騎士団入団希望者や騎士科の生徒が主だって参加する。

ただ今日の剣術大会は観客席が特別な熱気を放っていた。


『王国最強戦力が出場する。』


前線で活躍しその至高の二つ名を持つ男の姿が見られるとあって、

恩義があり応援したいもの。

一目剣技を見てみたいもの。

美丈夫という噂を確かめたい令嬢達。


いつも以上に賑わっていた。


功績からルークの参加は準決勝からとなっていた。

学園生徒は生徒用観客席があり、リゼリアはユリウスと共に後部に席をとった。王子は国王も観戦するため、特別席で国王の隣にいた。カイルは王子の後ろに立ち、国王の後ろには王国一の剣士、騎士団長が控えていた。


王が隣の王子に話しかける。

「ラインハルト、ルークとは友となったか。

報告では最近仲が良いと聞いているぞ。

魔法に剣術に、そして甘い方面にも精を出し共に成長してくれると嬉しいぞ。

前にも教えたが、特に菓子は大事じゃ。疲れた思い人には甘いものを口に放り込んでやれ。

リゼリアの母君は、私にも容赦なかったぞ、


『甘いものは魔法のお薬よ』とな。


沢山救われた。私はお前を応援しとる」


ラインハルトがカイルを見た。

「カイル。仕事は順調なようだな」


「はい。報告する案件が多く実はとても忙しいです。」


「そう責めてやるな。国家政策に必要な重要事項だ。王子と王国最強戦力のいわゆる弱点を突かれるのは国の危機だ。この動向は私が注視しなければならない」

国王は笑って言った。


試合が始まり、それぞれの試合は白熱し、大きな歓声が鳴り響いていた。

ルークの準決勝は熱気に包まれたものの一瞬で決着がつき、多くの者は何が起きたかわからなかった。


あっという間に決勝となった。

ルークが競技場に現れ、名前を紹介されると、とたんに静まり返った。

今までの熱気からは明らかに異質だ。会場は期待が高まり思わず黙ったのだ。

今度はどんな動きも見逃さぬようにと。そしてその姿に女性陣は見惚れた。


決勝のルークの相手は オビエド・デ・カルネ 騎士科3年生だった。

ルークより体格が良いが、その手はわずかながらにも震えていた。

「私は全力を出すのみ」

自分に言い聞かせるようにつぶやいた。


「お願いします」


「はじめ」


短い合図から先に動いたのはオビエドだった。

勢いよく走り込み剣をルークに振りかざす。ルークはオビエドの剣を剣で受け、その勢いを横に流した。

すっと剣を戻し、剣先を彼の胸元で止めた。大振りになったオビエドはそのまま対応できずにおり、


「勝者、ルーク・デ・バルケラ」


一瞬だった。


「始まる前は怖かったが、試合は一瞬だった。稽古をつけられたような気分だ。ありがとう」

オビエドはすがすがしい顔で満足そうにルークに言った。


「こちらこそ。緊張からか大振りになっていましたね。また試合をしてみたいです。

ありがとうございました。」

ルークは穏やかに礼をし、共に握手をした。


その後ちらっと目線を観客席後部へ向ける。リゼリアはルークと目が合った。


リゼリアは反射的に微笑んだ。


ルークは耳を赤くし顔がゆるんでいた。


「かわいい。。。」と思わずつぶやいてしまったが、

誰にも聞こえてはいないだろうと当の本人は思っている。


「あっ、あの人に姉上は微笑んではいけません。剣士の緊張感を奪ってしまいますので。」


「そうでしたか、ユリウス教えてくれてありがとう。ルークには申し訳ないことをしました。

後で謝らなくては」


「謝罪は不要ですよ、姉上。そばに行っては危険ですから」


必死に距離をとらせようと声をかけるも瞬時に近寄ってくるやつは危険だとユリウスはハラハラする。


最後の決勝が終わり、表彰に移るのだと誰もが思っていた中、


重装備の騎士団副団長が部下を数人引き連れ、競技場に現れた。


「ルーク・デ・バルケラ、優勝おめでとう。まだ動けるか?手合わせを願おう」


「はい、お願いします」

ルークは振り向き副団長に礼をした。


特別席で見ていたラインハルトが後方に立つ騎士団長に声をかける。

「どうなっている?」


「さすがに剣術大会で王国最強戦力の戦力を分析することは難しいと思いまして、私から指示を出しました。どの程度のものか。本当は私が一手願いたかったですが、副団長に止められましたよ。見物ですね、殿下、陛下」

騎士団長はラインハルトに悔しそうに話をした。


国王は口を開いた。

「今のところ、奴は礼儀正しい騎士科生徒だ。その戦力がどの程度か見たい。

また奴がこの学園にいること、リゼリアの近くにいることを見せることも未だ掴めぬ悪しき手には必要だろうよ。」


合図はなく、その場は突然戦いの場となった。

副団長は一気に走り間合いを詰め、打ち込もうとする。

隙のない動きで、一撃は重い。ルークは一度受けて流し、距離をとった。


「初手はかわしたな。よし、二名加勢しろ」


副団長の言葉にすぐさま反応した二名が走ってやってくると、ルークを囲み、臨戦態勢をとる。


会場は混乱と期待でざわついていた。


「副団長はフル装備で三人体制だぞ。どうなるんだ。」

「副団長の初手が入らなかった。あんなに速かったのに」

「ルーク様を応援したいですわ」


同時だった。

左の騎士がルークに勢い良く打ち込むが

ルークは一瞬でしゃがみ込み、立ち上がる反動とともに自らの剣先を騎士の持ち手近くを打つと、剣は地面に転がって落ちた。


副団長は一撃を入れようとルークに剣を向けるが、ルークは右へ飛び剣の柄頭で右の騎士の剣の根本を打つと、騎士は剣を離した。


一瞬で二名が離脱し、残るは副団長との一騎打ちに戻ってしまった。


「振り出しに戻ったな。私も立場があるので本気で行かせてもらう」

「お願いします」


副団長は重く素早い一撃をルークに容赦なく振っていった。

ルークは後方に動きながら何度か剣をかわして一気に後ろへ飛び距離をとった瞬間、前に走り出し飛ぶ。上方から勢いをつけて切り込んだ一振りを副団長はかろうじて受け止めるも、相当重そうだ。ルークは次の一手に切り替え、重心をわずかにずらした副団長の剣を剣で払い胸元を開いた。ルークの剣は副団長の胸元の寸でのところで止めていた。


流れるような実戦仕様の動きを見せたルーク。

前線は一対一など悠長ではないのだろう。

どれほどの余力があるのかと騎士団や有識者は恐れを覚えた。


「私の負けだ。バルケラ。お前の剣はどこに捧げる?」


「お相手ありがとうございました。俺の剣は笑顔のために」


「誰の?」

「目の前の人と、その人の大事な人たちです」


「そうだな」


一礼をしたルーク。

苦笑する副団長はルークの肩をぽんと叩き、部下を連れて会場を後にした。


鳴りやまない拍手の中、王は声を上げた。


「優勝おめでとう、騎士科 ルーク・デ・バルケラ。

その剣で騎士団を鍛えてやってくれ。

だが、今は学生。多くを学び、楽しみ、その無限なる成長を楽しみにしている」


「ありがとうございます」

ルークは深く一礼をした。


満場の鳴りやまない拍手の中でルークは会場を出て行った。


「私、バルケラ様にご挨拶に伺おうかしら。」

「そうね、一緒に行きましょう」

「私もご一緒してよいかしら」


多くの令嬢がルークへの労いに行こうとする話が聞こえてきて、リゼリアは立ち止まっていた。


「ルークのもとは人が多そうです姉上、疲れているでしょうし、やめておきましょう。」

「そうね、ユリウス」


ルークのもとへ行くのをやめたリゼリアとユリウスは、しばらく自分たちの席に留まり人が引くのを待っていた。


そこへラインハルトとカイルがリゼリアとユリウスのところにやってきた。

「リゼリア」

「殿下」

リゼリアは姿勢正しく一礼する。


「礼はいい。あっという間の時間だったな。

ルークのところに一緒に労いにいかないか。君には菓子の差し入れを持ってきた。

君の好きなオレンジピールのチョコレートがけだ」


「私に、ですか?よいのですか?」

白熱した試合を立て続けに見ており、一息ついたところだったので一瞬目を見開いたリゼリア。


王子は微笑んでリゼリアに差し出した。

「応援を頑張っただろう。甘いものを食べる理由はつくればいい。」


「殿下、最近、容赦ないですね」

ユリウスが思わずラインハルトに嘆いてしまった。


楽しそうな雰囲気に割り込もうとしている令嬢がいた。


貴族科三年 ルシア・デ・カティス 侯爵令嬢

三名のラインハルト殿下の婚約者候補のうちの一人である。


「バルケラ様の戦いは大変すばらしかったですわね、殿下。

殿下もバルケラ様と交流があると聞いております。

これから労いにいかれるのでしたらご一緒してもよろしいでしょうか」


堂々とその場を制し、優雅な笑顔をラインハルトに向けていた。


「カティス嬢、誘ってくれてありがとう。しかし、すまない。

私はリゼリアと行きたい」


今まで殿下が他の令嬢の前でリゼリアの名前を出したことはなかった。

今まで彼女の話を聞いても、聞こえてないふりをしていないものとして扱ってきた。

私の誘いを受けてくださると当然に思っていたルシアは返す言葉が無かった。


しかし、目の前の殿下は、まっすぐな視線でルシアを断った。


「そうですか。失礼いたします」


ルシアはそう言うとすぐさま後ろを向いて帰っていく。

取り巻きの彼女たちはついていき、口々に不満を述べていた。


「ルシア様、気にすることはありません。どうせ、冷徹令嬢が無理に殿下をお誘いしたのでしょう。」

「そうですわ。殿下は先約を守られただけですわ」


ルシアの表情が歪んだ。

「冷徹令嬢は王国にとっても、殿下にとっても悪しき存在なのです。

私が殿下をお守りしなければ。

あの方に助言をいただかなければ。」


パンッ、と扇子が閉じられた。

強く握りすぎたせいで、端が歪み、閉まりが悪くなってしまった。




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