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冷徹令嬢は王国最強戦力たちを乱しがち。最強魔導騎士は今日も赤面しています  作者: 荒木カルメン
第2章 動き出したもの

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第25話 月光花

7/3 初回投稿時に誤って26話を25話として投稿してしまいました。5分以内に修正して再投稿しております。もし誤って読まれた方がいらっしゃいましたらご迷惑おかけしました。すみません。気を付けます。

 ローザから受け取った訓練着を着たリゼリアは、髪も自分で後ろに縛ってまとめた。


外に出ると、少し薄暗くなっていた。


走り始めると、ローザとガイウスがゆっくりとリゼリアのペースに合わせてくれる。


いつぶりか、分からない。

貴族の令嬢が走るなんて言ったら、きっと驚かれるだろう。


けれど、帝国では貴族令嬢も散歩をするらしい。

また、ローザのように騎士を目指す女性も珍しくないとのことだった。


王国よりも、女性が力を発揮できる環境がある。

それを少し羨ましいと思った。


「久しぶりに走ったにしては、綺麗に安定して走っているぞ」


「リゼリア様、きつい場合や痛みが生じた場合は、すぐに教えてください」


ガイウスとローザは軽やかに走っている。

日頃から走って鍛えている二人にとって、今はかなり遅い速度なのだろう。


それでも、一緒に楽しそうに走ってくれていることが嬉しかった。


ガイウスがいなければ、走ろうとは思わなかっただろう。

新しい自分を見つけたようで、少し嬉しかった。


走ることは、今の自分に必要だったのかもしれない。


トン、トン、と一定のリズムで足を出し、腕を振る。

自分の体を前に押し出しながら進む。


自分で自分の体を動かしている。

そのことを、はっきりと実感できた。


訓練場に着くころには、息が上がっていた。

少し苦しい。

それなのに、走った後の体はとても心地よかった。


ルークとラインハルトがリゼリアに気づいた。


「リゼ!」


「リゼリア! どうしたんだ」


ガイウス殿下が、にこっとリゼリアに声をかける。


「なっ」


「殿下、ルーク。私は自分で走りたいと思ったんですよ。ガイウス殿下が付き添ってくれました」


「そうか……。リゼリア、無理はしないように」


「そうだよ、リゼ」


「ははは、大変だな、リゼリア」


「少し大変です、たぶん。はは」


リゼリアは笑った。


◇◇◇


ガイウス殿下は、本日はぜひ網焼きを、と所望していたらしい。


途中の町で食べたこの郷土料理を、とても気に入ったようだ。

王と面会した際、開口一番の頼みが食事の話だったという。


肉を多めにしてほしい。

魔牛も良いものだった。

野菜は、むしろ用意しなくてもよい。


そう言った時、護衛が静かに否定したという。


「ガイウス殿下、野菜を省いてはなりません」


「ローザ、俺ももう良い年なのだから、野菜を食べろと言われるのは恥ずかしいぞ」


「ガイウス様が省こうとなさるのがいけないのです」


「用意するのも手間をかける。申し訳ないではないか」


「大変ご都合がよろしいですね」


そのやり取りを聞いて、王は笑いを抑えられなくなった。


「ははは、相変わらずだ。今も野菜を拒むか、ガイウスよ」


「拒んではいません。手間を配慮したにすぎません」


◇◇◇


あたりはすっかり暗くなっていたが、間隔を空けて置かれた光る置物が周囲を照らしていた。


すでに肉や野菜は焼かれており、食欲を刺激する香りに包まれている。


リゼリアは久しぶりの運動に疲労を感じていたが、不思議と心地よかった。

体の感覚が、はっきりと分かる。


空腹で、食事を欲していた。


ガイウス殿下を歓迎する内輪の網焼きパーティは、何を話してもよいように配慮されていた。


陛下、ゼノス、ラインハルト、ルーク、カイル、ユリウス、ガイウス、ローザのみが参加を許され、防音魔法も展開されている。


周囲にも人払いがされており、誰も近くにはいなかった。


ゼノスもルークもいる。

ここは、ある意味で一番安全な場所だろう。


網焼きの火もあって、外は寒くなかった。


ルークも、皆が寒くないように火を多めに準備したらしい。


今日は満月の日。

大きな円が黄色く光り、あたりを照らしていた。


リゼリアは厚手のロングドレスを着ていた。

落ち着いた黄色で、温かみを感じる色と素材だった。

念のため、上にはケープも羽織っている。


「お嬢ちゃん、走ったのか! ガイウスはやっぱり面白いな」


リゼリアより先に、陛下とゼノス、そしてカイルが会場にいた。

陛下とゼノスは、すでに食前酒を楽しんでいる。


リゼリアがガイウスたちと走ったことを報告すると、ゼノスが楽しそうに話し出した。


「あれは面倒見が良い。時に強引だが、しっかり見極める男よ」


国王が一口飲んだ後に続けた。


「聡明な方ですね、ガイウス様は。ですが、参戦者ではないようですので安心しました」


カイルが頷きながら言う。


「うーん。今はな。そんなに決めつけちゃ、面白くないだろうよ」


「ゼノス、楽しんでいるのか」


「あの二人が面白いからな」


ガイウスとローザ、ラインハルトとルークが後からやってきた。


「リゼリア! 腹が減って一番乗りか! 待たせたな」


「リゼリア、そのドレスも素敵だ」


「リゼ、疲れてない?」


思い思いに声をかけられる。


皆が違う思いを口にしている。

それが面白くて、リゼリアは笑った。


そんな時、リゼリアの胸の前が光った。


この感覚は分かる。

ノアだ。


小さな光は体を形どり、みるみるうちに小さな女の子の姿へ変わっていった。


手には花を持っている。


「ノアです」


リゼリアは、皆に紹介するように伝えた。


今度は不思議と怖くない。


守られた環境。

頼もしい仲間。

自分でも、変化が分かった。


ノアが、近寄ってきていたガイウスに反応を示した。


ローザが、ガイウスに近づくノアに向けて一瞬剣を構えようとしたが、ガイウスは手のひらを向けて制止した。


ノアは喜んでいるようにぴょんぴょんと飛び跳ね、ガイウスの肩の上に飛び乗った。


そして、跳ねるようにして頬へ近寄る。


「俺はガイウスという。ノア、よろしくな」


ノアは明らかに嬉しそうに、ガイウスへ近づいた。


手に持つ花を、嬉しそうに揺らしている。


「月光花だな、ノア」


ノアはこくりとうなずいたかと思うと、花を振り、きらきらした光をガイウスに向けた。


何かが起こっている。


ルークは以前、リゼリアと星を眺めた日に、同じようにノアが疲れを取ってくれたような、体に力が戻るような感覚を思い出していた。


最後まで読んでいただきありがとうございました!


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