第23話 色づく日常
遅くなりすみません
朝の日の出が少しずつ遅くなり、寒さが際立ってきている。
リゼリアは登校の支度を終え、今にも扉を開けようとしているところだ。
制服に学園指定のケープを着用したものの、寒さが気になる。
エレネはスカーフをリゼリアの首にふわりとかけた。
先日開催された王城パーティの時に選んだドレスと同じ色のスカーフだった。
淡いオレンジ色のスカーフはリゼリアの銀色の髪にとても似合っていた。
エレネは三種類の色の冬用スカーフを取りそろえた。
淡いオレンジ色、空色、クリーム色。
「いってらっしゃいませ、リゼリア様」
「いってきます、エレネ。支度のお手伝いありがとうございました。」
学園に着いた。
以前と比較して変わった部分が最近はある。
他の生徒との交流だ。
急に距離を詰めてくるものはいないが、挨拶を交わしたり少し談笑をするくらいは増えていった。
周囲の視線が柔らかく異質なものを見るような視線はなくなった。
その距離感は居心地がよく感じる。
嬉しいのかな、たぶん。
確証が持てないときにたぶんとつけることが無意識に増えたように思う。
これはルークの影響かな。
ルークが自分の一部になっていることが面白く感じた。
閉ざしていた風景。
授業中は先生と板書以外に目を向けることはなかった。
ただ、少し前を向きやすくなった。
前の席にはラインハルトがいて、向こうの隅には朝声をかけてくれた女子生徒が座っている。
教室を始めて見渡し、見て取れる情報が多くなった。
◇◇◇
昼食の時間、
ラインハルトに誘われて一緒に食事をとろうと食堂に向かう。
「リゼリア、今日の放課後に皆に王城合宿について確認事項を伝えたい。
談話室を予約しているからまた授業が終わったら一緒に行こう」
「わかりました。お伝えくださりありがとうございます。
冬季休暇に入ってからでしたよね。
間もなくですね。」
「ああ、あっという間に二学期が終わったな」
「そうですね」
「殿下、リゼリア様。ご一緒だったんですね。私もご一緒してよろしいですか」
「カイルか」
「カイル、そちらのペンとノート使ってくださっていて嬉しいです」
カイルはリゼリアからお土産にもらったぶどうにちなんだペンとノートをしっかり両手で持っていた。
「はい、おかげで仕事が捗ります」
「収穫祭で見かけたときに、カイルを真っ先に思い出しました。
そのお店で殿下やルークへのお土産も買えたのでよかったです」
「リゼリア様、私へのお土産をまず初めに選んでくださったのですか?」
「はい」
「聞きましたか、殿下。
私へのお土産を買った後に殿下やルーク様のものを選ばれたそうですよ」
「うるさいぞカイル。順番なんて関係ない」
「ルーク様にもお伝えせねば」
リゼリアが一番初めにお土産を選んだことがカイルは嬉しいようだ。
小走りで食堂にいるルークを探しに行った。
「あっリゼ、ラインハルト。一緒に食べよう」
食堂の中ではカイルが嬉しそうにルークに話しかけている。
ルークはリゼリア達を見つけると手を上げて呼びかけた。
「仲が良くて楽しそうよね」
「そうね、にぎやかで殿下も嬉しそう」
食堂へ来ていた他の生徒達は微笑ましそうにラインハルト達を眺めていた。
◇◇◇
放課後の談話室、
皆がそろった後にラインハルトが話し始める。
「皆に王城合宿の内容を伝える。
まずはリゼリアの安全確保が目的の優先事項だ。
冬季休暇中は王城で暮らしてもらいたい。
その間に彼女の能力とノアについて調べていく。
これはリゼリアが自分に向き合う時間になる。
王城の書庫も解放するし、宮廷魔術師の信頼できる者もサポートについてくれる。
無理に進めていかなくていい。
自分のペースでな」
「わかりました。ありがとうございます」
リゼリアは不安もあるけれど何より知りたい気持ちが強い。
いままで知ってはいけないと言われていた自分の部分。
何かが良い方向にかわるかもしれない。そんな期待もある。
「次にゼノス様がいらっしゃりルークと私に稽古をつける。
内容は知らん」
「師匠らしい。体力と気力を用意していれば大丈夫だ、ラインハルト」
「そうか。覚悟しておこう」
「ユリウスは宮廷医師の医療チームとラレド公爵に任せている。
話は後にあるだろう」
「カイルは、陛下が『とっておきはとっておきだ』とだけ言って、
話してくださらなかった。」
「正直、怖いですね」
「そうだな」
「最後に聖王国や共和国、教会は表沙汰にはしないが警戒を続ける。
そこで帝国にも極秘に協力を申請した。
聖王国の血統に関わる資料がほしいと。
帝国は聖王国よりも歴史があるし広い。
聖王国以前の歴史的資料などにノアの手がかりがあるかもしれない。
陛下の手紙をゼノス様が皇帝にお渡しに行った結果、帝国第三皇子が合宿に合流することになった」
「?!」
皆がなぜ?と思いながら沈黙した。
空気をよんだラインハルトが続けて話し出す。
「皇帝が古い資料だし、帝国を知る者がいた方がいいだろう。
皇子を貸してやる。
だそうだ」
「ガイウス様ですか」
リゼリアが思い出したように声をあげた。
「そうだ。六歳ぐらいの時だろうか。
陛下と公爵が外交で帝国に行く際に同行して会った方だ。
ちょうどユリウスは風邪をひいていたので母君と王国に残っていた。
あの日は、体を鍛えろと走らされたな」
「そうでしたね。私も走りました。ふふ」
「え?姉上が?」
「リゼが?」
「リゼリア様が?」
ガイウス皇子とはいったいどんな人なんだろうと不安を抱いた瞬間だった。
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