第21話 家族の時間
ラレド公爵家一行はラレド領の収穫祭へやってきていた。
リゼリアやユリウスにとっては何年振りだろうか。
大通りだけでなく、いくつもの細い路地にも出店やテーブルが並んでおり人々はグラスを片手にワインを楽しんでいた。
領地で収穫したブドウで造られたワインをメインにジャムや飴、焼き菓子など、様々な食べ物も販売されている。
ぶどうの甘く濃厚な香りが鼻をくすぐりつつ、香ばしいお肉やスパイシーな香りまで飛んでくる。
ラレド公爵家の者たちは領民たちが次々に挨拶をしてくれており、挨拶をかわしながらリゼリア達は立ち止まっては進み、会場を楽しんでいた。
「ラレド様、今日は親子水入らずですね。
リゼリア様もユリウス様も大きくなってびっくりしましたよ。
このジャムは今年収穫した早摘みのぶどうから作りました。
パンと一緒に食べていってください」
気さくな店主が声をかけてくれた。
アルベルトは、その様子を少し後ろから見ていた」
昔もこうやって、あれを食べて、これを試して、と笑顔の領民たちが子どもたちに試食を渡していたなあ。
今年も大きな災害もなく、こうして実りのある収穫を無事に行えてアルベルトは一安心していた。
「姉上、あちらにおいしそうなぶどう飴が売っていますよ。
見にいきましょう」
ユリウスがリザリアの手を引っ張る。
背は伸びたものの、行動は子どもの時とかわっていない。
そんな子ども達の様子をみて自然と笑顔になった。
「待ってくれ、私も行く」
キラキラ輝くぶどう飴の串刺しを二本購入し、二人は食べながら再び歩く。
祭りの醍醐味である。
路地裏に小さな雑貨店があった
外に並べられた文房具の中に、小さなぶどうの葉っぱが上に飾られたペンに目を奪われた。
「ユリウス、あのぶどうの葉が飾られているペンをカイルにどうでしょうか。お土産に買っていきましょう」
リゼリアは店の中に入り、紫色の表紙にぶどうの模様が入ったノートも手に取って会計に向かった。
「贈り物ですか?」
「はい、大切な友人に」
リゼリアは笑顔で答えていた。
その後皆へのお土産選びを楽しむリゼリア。
「殿下には、この紅茶にします。喜んでくださるでしょうか」
ラインハルトには、ブドウの香りや味がする領地限定の紅茶を選んだ。
「ルークには、これかな」
ブドウの形をした小さな銀色のチャームだった。
「戦いが必要になった時、これが彼を守ってくれますように」
そんな思いを込めてリゼリアは選んだ。
「父上とユリウスと私にはこれを買いましょう」
それはぶどう畑とぶどう、ワインボトルやグラスが小さく刺繍されたハンカチだった。実りのあるラレド領を象徴するぶどうが可愛らしく主張していた。
「家族でおそろいか。ありがとうリゼリア」
「姉上、嬉しいです」
この前まで家族での会話は途絶え、距離のあった様子は思い浮かばない。
自然に三人は一緒の時間を楽しんでいた。
「リゼリア、ユリウス、また来年も一緒に収穫祭へ行こう」
手渡されたハンカチを使いそうになるくらい父の目は潤んでいた。
「父上、楽しみができました」
リゼリアはアルベルトにそういって微笑む。
〇〇〇
後日。
リゼリアがお土産をそれぞれに渡した。
「リゼ、ありがとう。これは肌身離さず、ずっと俺と一緒だよ」
感激するルーク。
「リゼリア、一緒にこのお茶を楽しもう」
ラインハルトも感激し、お土産が次回のお茶のお誘いの口実になっていた。
「リゼリア様、ありがとうございます。さっそく毎日使わせていただきます」
カイルは可愛いペンとノートを抱きしめていた。
喜んでもらえて嬉しいリゼリアだった。
今まで、お土産を買いたくなる人がいただろうか。友人と呼べる人がいただろうか。
自分の周りが少し賑やかになったことがとても心地よく感じていた。




