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冷徹令嬢は王国最強戦力たちを乱しがち。最強魔導騎士は今日も赤面しています  作者: 荒木カルメン


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第2話 書庫での距離

早朝、まだ薄暗いが日の光が上がりだして淡いグラデーションの空が好きだ。

澄んだ空気の中、ビュンビュン、真剣が空を斬る音が鳴り響く。

音の主は昨日飛竜を制圧した活躍者だった。


眠れなかった。

飛竜を制圧することで高揚しているのではない。入学して初めての学園生活になるからではない。無心を意識しなければ何度も何度も思い出してしまう。


『大丈夫ですか?』


ふわりと柔らかく甘い花とオレンジの爽やかな香り、柔らかい感触、星空を見ているかのような深い青色の瞳に銀色の髪、くすぐったく温かい吐息。。。

「リゼリア。。。様」


◇◇◇

昨日事件後に呼ばれて向かった先は学園長室だった。

『バルケラ君、飛竜の対応感謝する。そして君が助けたのはリゼリア・デ・ラレド公爵令嬢。そして王子の婚約者候補だ。』

『間に合ってよかったです』

『腰には剣もあったようだが、なぜ使用しなかった?』

『郵便飛竜の目が赤く、首の登録及び通行許可紋からは黒い靄が見えました。異常状態であること、学生が多く殺傷は精神的なダメージになると考慮し気絶対応を選択しました。』


あの状況下でそこまで考えるか…。

魔法も周囲の損害がでるから最小限にとどめたというところかな。


学園長は静かに考察し、ルークの師匠であるゼノスの言葉を思いだし声にだす。


『バルケラ君、君の恩師ゼノス様は世界最強だ、そして国王の友人でもある。

その師が弟子に学ばせたいと話していた。

王国最強戦力と呼ばれるようになった魔導騎士の少年は戦力は高いが知らない世界がある。交流、社会、政治、貴族、国。学び苦悩し自分の力をどのように使いたいか、使わなくともよい。自分のやりたいことを見つけなさい。自分のことに目をむけなさい。とね。年齢は18歳で本来は3年生なのだが、騎士科1年生に入学手続きしてある』


◇◇◇

頭が強制的に昨日のことを思い出させる。

飛竜ではない。リゼリア様のことだ。


「綺麗で…優しかったな。 。。。リゼ」


ルークの頭の中で何度も行き交うその名前は「短縮されていた」


◇◇◇

朝はどのクラスも昨日の事件でにぎわっていた。

「飛竜を瞬殺だった。すごいな」

「王国最強戦力とも呼ばれるバルケラ様とおっしゃるそうよ。お顔も素敵だったわ」

「本当の騎士様のようで、私も助けられたいわ。」

「ちょっとあなた、不敬よ。ふふふ」

「なんで冷徹令嬢はあんな場所にいたのかしら、危なくなくて?」

「皆のために魔法を行使したと教師との会話が聞こえてきましたけど、何をしたのかわかりませんわ」


賞賛の中に時折聞こえてくる嫌悪感が耳に刺さる。リゼリアの弟ユリウスは罪悪感といらだちでいっぱいだった。


向かう場所がある。騎士科 ルーク・デ・バルケラのもとへ。


午前の騎士科の授業が終わった時をみはからって彼に会いに行った。

模擬戦で相手だった生徒がルークを絶賛している最中だった。


「バルケラ様、昨日は姉を助けてくださりありがとうございました。リゼリアの弟、ユリウス・デ・ラレドです。姉がバルケラ様のご体調を心配しておりましたが、その後いかがでしょうか。」


反射的に思い出す感触映像はルークの顔を赤面させた。


リゼリアに似た透明感のある肌と瞳。中性的な顔立ちに少し幼い容姿にみえるが、瞳の奥に感謝だけではない感情が垣間見える。


「わざわざありがとうございます、ユリウス様。私の体調は問題ありません。リゼリア様はその後大丈夫でしょうか。本日は学園に出席されているのでしょうか。」


「だいじょうぶ…たぶん。とバルケラ様はおっしゃったときいています。たぶんは姉が心配する材料になっていました。問題なくて何よりです。姉は授業を受けています」


「あーーー。その、綺麗で。。。びっくりしてたら、いい匂いで。。。柔らかくて。。。優しくて。なんか大丈夫じゃなかったとも思いました」


「 なんなんだ。正直か!声に出していわなくていいって。」


貴族の微笑みを維持できなくなったユリウスは目の前でデレているルークに声を張っていってしまった。


「知っている。姉上は優しすぎるんだ。昨日も鎮静魔法を展開し、皆がパニックにならないように配慮していたし、困っている人に結界を張って、自分は飛竜に突進されていた。」


「僕が助けに行きたかったのに、動けなかった。やれることは沢山あったのに。周りも姉上に助けられたなんて気づいてない。悔しい。」


「いい匂いって…。あなたは姉上にとって危険です!!!」


「弟くん…怖いよ。別に俺は危険じゃない。守った側だよ」


「意味が違うんです! もうっ、調子が狂う。あなたは素を出した方が本心をだしそうなので、その話し方でお願いしますね。」

「もう話したくありませんが。」


「わかった。魔導騎士として現場のみだったから、かしこまるのは慣れていない。ありがとう。ユリウス。リゼリア様にも宜しく伝えてね。」


「宜しくなんて伝えません。失礼します!!!」

 

その場を離れたユリウスを呆然と眺めるだけだったルーク。

しかし正直な言葉が口からでた自分にも責任はあるなと苦笑いしかなかった。


◇◇◇

リゼリアが授業にでていると聞いて、特別科の方が気になってしかたがない。

休み時間の度に少し距離のある特別科の方に行こうと体が動くも、自然と自分の熱を感じてしまう。結局動き回るだけで、今日の授業は終了してしまった。

カフェテリアの方へ向かうと書庫に入ろうとしたリゼリアが令嬢達に止められているのを見つけた。

「飛竜がリゼリア様をねらったかのようにみえましたわ。美しいのも災いを呼ぶもとなのですわね。殿下に何かあってはいけませんよね。」


「殿下や皆様が怪我をしなくてよかったです」

リゼリアは前を向いて、安堵を伝えた。


昨日の功労者であり一番の被害者なのに、このような言われようは辛いはずだ。けん制、王太子婚約者候補をおりろという意味か。ルークは心がきゅっと痛むのを感じた。

「失礼します。ご令嬢がた。書庫に通していただいてもよろしいでしょうか」


「バルケラ様。昨日はとても素敵で勇敢でしたわ。皆のためにありがとうございました」

一人の令嬢が熱いまなざしを送りながら近寄り話す。

「ありがとうございます」

ルークは話しかけられた令嬢に一礼をした。


「リゼリア様、ルーク・デ・バルケラです。挨拶が遅れて申し訳ありません。体調面に問題はなかったでしょうか」


「はい、昨日はありがとうございました。体は」


「バルケラ様。そうですわ、体調は問題ないのですか?」

リゼリアの言葉をさえぎり構わずに話しかけてくる令嬢。

ル―クは笑顔のみを令嬢に向けて、その後振り返りリゼリアに話した。


「リゼリア様、書庫に用事があるご様子ですね。

私も調べたいことがありますからご一緒してもよろしいですか」

「はい、こちらです。」


「バルケラ様が冷徹令嬢を?公爵で美人だからと好き勝手にされては困ります」

「そうですわ、ルシア様を差し置いての行動はゆるせません。」

令嬢達はいら立ちながらカフェテリアに向かっていった。


◇◇◇

書庫ではルークとリゼリアの2人のみであった。

「飛竜について、許可通行紋について、そして赤い目の理由を知りたいと思っていました。バルケラ様はどのようなご用件でこられたのですか」


「同じです。」

リゼをみつけたからなんていえない。


飛竜と通行許可紋の資料は普段誰も読まない内容のため一番奥の専門書コーナーに位置している。狭くて人が一人通れれば良いほどの幅でしかない。

「飛竜の生態大全」「紋章魔術規則集」「偽造紋事件記録」

次々と手に取り、これらの本は厚みもあり両手で本を抱えている。


「禁忌魔術」という本が気になったがリゼリアの頭上を越えた場所にあった。


「この本とりますよ」

本棚前面にいるリゼリアのすぐ後方にいたルークは声をかける。

本をとる時、少し前に向かった為リゼリアの肩に自分が触れないように気をつけていた。本をリゼリアに渡すと思ったより重かったらしく、本が両手からになっていた。


「オッと」

ルークは本を支えた。リゼリアごと。

後ろからみていたため

後ろからリゼリアを抱きしめて両手の本を一緒にもつかたちとなった。


まただ。甘くも爽やかさのあるフローラル系の香りが鼻から直接脳に作用する。

スイッチのように顔が赤くなり、心臓が高鳴るのを感じた。


どうしよう。離れて手を放すと本が落ちる。本を支えたかっただけなのに。。。


思考が追い付かない。飛竜を倒すより、どう離れて、本を無事に持つかが、よっぽど難しいんですけど。。。


動けないルークにリゼリアは振り返り声をかえた。

「バルケラ様、ありがとうございます。

私が本を落としそうになってしまいご迷惑をおかけしました。

上の本を片手で持っていただいてもよろしいですか?」


振り返ったリゼリアは自分を見上げて少し頬を染めていた。


破壊力がすごい。

ルークの心臓に何かしらのダメージが強烈に入った。

「わかった。。。そうする。。。」

ルークは赤面し、たどたどしく答えた。


「大丈夫ですか?」心配するリゼリア。

「だいじょうぶ。。。たぶん」

「また、たぶん ですか?」

少し微笑んで聞き返したリゼリアにルークはさらに赤面した。


「リゼは強い。。。」

心の声がでてしまったルークは、我にかえった。


動揺しすぎて公爵令嬢に途中から丁寧な言葉を用いていないことやリゼと呼んでしまっている。

「リゼ?私のことですか?」

「はい、失礼しました」

「リゼで構いません。丁寧なお言葉も必要ありません。あなたの自由にしていただきたいです。」

「じゃあ、俺もルークと呼んでほしい」

「わかりました。宜しくお願いしますね」


「姉上!!!!何をしているのですか。そいつが離さないのですね」

「あー、大胆ですね、王国最強戦力くんは。ほんと早い動きでびっくりします。」

弟のユリアスとカイルは後ろからルークがリゼリアを抱きよせ、話をしている姿をとらえていた。


「本を支えていただいただけですよルーク」

「姉上は本ではありませんよね」

ユリウスはリゼリアの心配をしお茶でも一緒にどうかと探しているところ、一年の特別科 カイル・プリオラートとともにきた。

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