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冷徹令嬢は王国最強戦力たちを乱しがち。最強魔導騎士は今日も赤面しています  作者: 荒木カルメン
第一章 溶けた気持ちと強き想い

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第13話 安らかな居場所

13話 安らかな居場所


朝の陽ざしが注がれ、今日も海はきらきら輝いている。

静けさの中に波の音が規則的に聞こえてくる。


リゼリアは朝早くに目を覚まし、窓から外を眺めていた。


エレネに身支度を整えてもらい、すでに用意は終わっていた。

エレネの選んだ珊瑚のような色のサマードレスは辞退して、薄い青色の落ち着いたサマードレスを選んだ。

明るい色の服はまぶしく見え、自分にはふさわしくない、似合わないような気がしている。


昨日のことがまた急に起きたらどうしようか不安がないと言えば嘘になる。


今までのノアとの関わりの中で悪いものではないと感じつつも、得体の知れない力が怖いと改めて実感した。今は気持ちが不安定でなんだか落ち着かない。


そろそろ朝食をいただきにいこうかしらと、立ち上がった時に扉を叩く音がした。


「おはよう、リゼ。調子はどう?

一緒に朝食に行こうかと思って、誘いにきたよ。」

ルークだった。


「おはようございます。今行きます」


扉を開けるとルークが小さな白い箱を渡そうとしていた。


「昨日、町の店で見つけたんだ。リゼに似合うと思ってね」


「ありがとうございます。良かったらお部屋にお入りください。

そちらで見てもよろしいですか?」


「ああ、お邪魔するね」


エレネはそっとルークを窓際のテーブルのほうへ案内をした。


リゼリアが椅子に座り、箱を開けると中から銀色の髪飾りがでてきた。


「可愛らしい髪飾りですね。いただけるのですか?」


「使ってくれたら嬉しい。」


「嬉しいです。可愛い星がたくさん。それに、この石…ルークの瞳みたいです」


「お嬢様、つけてみましょうか」

「お願いしますエレネ」


左側の髪につけてもらい、リゼリアは鏡で確認する。


「似合いますか?ルーク?」


「うん。。。とっても似合っている。着けてくれてありがとう」


ルーク様ったら、ご自分の瞳の色をお嬢様に贈るなんて。なかなか大胆です。

ほのかに顔が赤くなるルークと微笑みかけるリゼリアをエレネは幸せそうに見ていた。

「近くの浜辺に、カフェテリアがあったんだ。そこで朝食を食べよう」


朝早くにもかかわらず賑わいをみせている浜辺の人気店のようだ。

テラスから眺めることができる海と離宮は特別綺麗に見えた。


「昨日は王太子がここの名物料理を食べておいしかった記念で、煙火を打ち上げてくださったそうだ。綺麗だったな」

「最初の光は殿下の魔法だったらしいですね。すごいです」


がやがやと客のほとんどが昨日の煙火の話題で楽しんでいた。


「リゼ、皆は煙火の話で盛り上がっている。気にしないで大丈夫。

さあ、ここはトマトのパンとチーズケーキが人気らしい。一緒に食べよう?」


町の人の声が聞こえてきて、海の方の話題は上がっていそうにない。

また離宮で食べるよりも気分転換になる。


昨日の出来事が気になっていたことを気遣ってくれたのだろう。

ルークの優しさが嬉しかった。


細かく刻んだ新鮮なトマトをのせたパン。

酸味と甘みがあり、思ったよりたくさん食べてしまった。


「リゼリアが気に入ってくれて嬉しいよ。おいしいね」


「おいしいですね。連れてきてくださりありがとうございました」


ルークと一緒にいると気持ちが温かくなる。

楽しいこと、嬉しいことをもっとルークと共有したいと思ってしまう。


パンを食べすぎて、注文できなかったチーズケーキは皆へのお土産となった。

店を出た後、二人は浜辺を一緒に歩いた。


朝の浜辺は人通りが少なく、波の音だけが近かった。


「リゼは海に入ったことある?」


「子どもの頃、足をつけたぐらいです。ちょうどこの浜辺でした。」


「俺もこどもの頃だった。初めて戦地に行った帰りに海に寄ったんだ。

師匠に海へ連れていかれて、みんなで海に浮かんだ。

洗っても洗っても取れない気がしていた戦地の匂いを、海が包んでくれたように思えた。

水は冷たいのに心が温かく感じた。」

ルークは一呼吸おいて続けて話した。


「リゼ、俺のこと怖い?」


「ルークは皆を守るために力を使っていると思います。だから怖くありません。」

リゼリアはゆっくり確かめるようにルークに語った。


「俺もリゼのこと、怖くないよ。

師匠は、わからないものほど怖くなる。だから知ればいい、と言っていた。」


「ノアのこと、知っている人に話をしてみてもいいかもしれない。ラレド公爵でも、陛下でもね。頼っていいんだよ、リゼ。」


一言、一言確かめるように話すルーク。

気が付けば二人とも立ち止まって見つめていた。


「正直にいうと、昨日は怖かったです。ノアが悪いことはしないと思いますが、分からないことばかり。どうしたらいいか分からないし、騒ぎになってもいけないと不安でした。」


「正直に話してくれて嬉しい。」

優しいルークの言葉にリゼリアは思わず涙がこぼれそうになる。昨日から張りつめていた緊張感や不安が少しずつほどけていった。


「リゼ、もう少し近づいてもいいかな?」


「…はい。」


ルークはリゼリアの肩をそっと引き寄せ、優しく両腕を背中に回した。

ルークの体温がリゼリアに伝わってくる。ぬくもりが心地よく感じる。


「怖いときは声をかけて、そばにいるよ。

俺は結構、強い方だと思う。安心して。

一緒に解決していきたい。


リゼが大事なんだ。そばにいたい」


「ルーク…」

リゼリアが顔を上げて、ルークを見る。


「。。。足りなかったら、もっと強くなる」

リゼの顔が近い。

この大切な一瞬を逃したくないと思った。

ルークはしっかり見つめた。


「ルーク、ありがとう。あなたといると…」


リゼリアは当てはまる言葉を見つけるのが難しかった。

ルークのことが大切で一緒にいたい。

そう思うが言葉として伝えるには、少しためらいがあった。


「安心します」


「リゼ!俺、すごく嬉しい」


ルークはリゼリアを思わず強く抱きしめた。


ルークの温もりを感じられるのが嬉しくて、リゼリアの鼓動が早まる。

だが、恥ずかしくなった。


「ルーク…苦しいです。」


「ごめんリゼ。少し歩こうか」


ルークは慌てて腕を緩めた。


☆☆☆

ルークとリゼリアが離宮に戻るとラインハルト、カイル、ユリウスたちは果実水を飲みながらハンモックの虜になっていた。


「最高だろう、ユリウス」


「これは良いものですね」


「反応がリゼリアと一緒だな。さすがだ。」


「姉上も試したのですか?これは家にも欲しいです。」


「私も気に入りました。商家で取引しても良い商品でしょう。確かに良いものです」


「俺も試してみたい」

「ルーク、リゼリア、帰ってきたのか。

リゼリア…。

その髪飾り、似合っているな。。。

私も何か贈り物をして良いかな?

すみれ色の石もリゼリアには似合うと思うぞ」


「対抗心ですね、殿下」


「姉上には石は必要ありませんよ」


「リゼリア様、ルーク様の石には、守護という意味があるそうですよ。

心強いですね。」


「そうですね。頼もしいです」


そっと嬉しそうに、リゼリアは髪飾りに手を当てた。 


☆☆☆

昼食は本日も名物料理を外で食べるらしい。

パエリアという大きな浅い鍋で米と海の幸で炊き上げる料理とのこと。

網焼きの上に乗せ、ぐつぐつと音を立てて良い香りが立ち込めている。


近くにはサラダや冷製スープが並び、食欲を刺激する。

準備が整い、皆で食べようとしていた時、来訪者が現れた。


「父上! ゼノス様」

「師匠!」


「ラインハルトか、皆の者、挨拶はよい。楽にしてくれ。」

陛下が手を上げて気さくに近づいてきた。


「ルークよ。久しいな。学園は楽しいか?」

「楽しいよ、師匠」

久しぶりに会った師弟は笑顔で挨拶を交わしていた。


「私たちは食事をしにきた。良い香りがする」


突然の国王のお出ましに護衛や従者が慌てて追加で準備を始めた。


「王様、食事の前に食前酒を楽しむとしようじゃないか」

ゼノスは笑顔で手に持って入るボトルを掲げて言った。


大きな長テーブルが設置され、皆でテーブルを囲むように座った。

陛下とゼノスは互いの小さなグラスに食前酒を注ぎ、飲みながら話し始めた。

他の皆は果実水を飲んでいる。


「ノアの件について、ラレド公爵と話をした。許可を得て、ゼノスにも話をした。

事後報告になってすまんな、リゼリア。


公爵、ゼノス、私で話し合った結果、ノアやリゼリアの力について色々確認していくことがリゼリアの安全につながるという結論に至った。


リゼリアの意思を尊重しながら進めていきたい。

どうだろうか。」


「はい。御配慮ありがとうございます。どうぞ宜しくお願いいたします。陛下」


「よし。私は、ここで皆と一緒にとる食事が好きでね。今日は一緒に宜しく頼む。」

「こちらこそです、陛下」


「ルーク!お前、剣術大会勝ったらしいな。騎士団三人とも対戦したって?あの団長に全員でかかってこいって言えば楽しいものを」

「無礼だよ、師匠」

「さすが世界最強戦力ゼノス様ですね。格が違います」

カイルはそっとノートを出した。


夏の日差しで濃くなった野菜を使ったサラダや冷製スープ、パエリアは最高の味だった。魚介のうまみが濃縮され、味わい深く皆であっという間に平らげた。


王様が食後に皆に声をかけた。


「学園祭では気を抜くでないぞ。ゼノスの部下を数人借りて学園内の警備にあたらせる。きな臭いことも懸念されておる。せっかくの祭りじゃ。楽しむことも忘れずに」


ラインハルトが真面目に頷く。


その隣で、ゼノスがルークをじっと見た。

「それにしても、ルーク」

「何、師匠」

「いい顔になったな」


ルークが一瞬止まる。

ラインハルトも止まる。


カイルが手帳を開いた。

「興味深い発言ですね」


「カイル」

ルークがすぐに言う。


ゼノスは楽しそうに笑った。

「王子とお前の距離が近く見えるぞ。良い仲だな」


「師匠」

「ゼノス殿」

ルークとラインハルトの声が同時に重なった。


ユリウスが冷静に果実水を飲む。

「姉上に近づきすぎるよりは、そちらで仲良くしていてください」


「ユリウス」

リゼリアは困ったように皆を見る。


学園祭にも、不穏な影はある。

それでも今、この場所は、笑顔に囲まれ、優しくて安心できた。


ここは、怖い場所ではない。

リゼリアにとって、少しだけ安らげる居場所だった。



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