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冷徹令嬢は王国最強戦力たちを乱しがち。最強魔導騎士は今日も赤面しています  作者: 荒木カルメン
第一章 溶けた気持ちと強き想い

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第11話 海風に揺られて


海へご旅行ですと!!

香油は三種類ほど、いや五種類持っていきましょう。

甘美な香りも持っていき、お嬢様に合わせて調合しましょう。

海風が強い時に肩にかけられるショール。

海には何と言っても、白いサマードレスもお嬢様にはお似合いでしょう。綺麗な薄だいだい色もいいですね。日差しで肌が痛まないようにケア用品も持っていかなければ。

リゼリア公爵令嬢の筆頭従者エレネは大興奮であった。


殿下とルーク様がお嬢様に積極的に動かれており、エレネはお嬢さまの良さをもっともっと知ってほしい。そんな思いも加速しています。


◇◇◇

夏季休暇が始まり、学園は日頃の賑わいから一転して静まり返っている。各生徒は寮から自宅に戻り、久々の自由を満喫しているのだろう。

本日、晴れ渡り青い空がどこまでも広がっていた。絶好の視察もとい、旅行日和であった。王家の海の保養地は馬車で三時間ほどの場所に位置する。

昼の暑い日差しや熱気を避けるため、早朝に出発した。

馬車は三台。

一台目はラインハルト、ルーク、カイル、

二台目はラインハルトの従者たち、

三台目にリゼリア、ユリウス、エレネ

三台目の荷台だけ大量の荷物が詰め込まれており、遠征にでも行くかのようだった。


馬車の中では王太子が真剣な眼差しで何かを言おうとしていた。

「どうしたんですか殿下? 何かありましたか?」


「カイル、私は本気だ。幼馴染の私から変化が欲しい。男になった王太子としてリゼリアに見てもらいたい。『殿下、素敵です』って菓子だけでは勝ち取れない。」


「まったくその通りです。次の手を考えていらっしゃいましたか。殿下、素敵です」


「お前に言われてもな、カイル。というわけで提案だ」


ラインハルトは眠たそうなルークを見て言った。

「ルーク、リゼリアと過ごすのは交代制で行こう。今日は私の番でリゼリアと過ごす時間を少し設けたい。ルークは明日の午前中でどうだ。もちろん皆で過ごす時間も食事の他にも大いにある。独占はしない」


「リゼとユリウスが良ければいいよ」

ルークは別にかまわないと思いながらも、心が少しざわつくのを感じた。


「皆さんに良きことがあらんことを。リゼリア様が疲れないようにお願いしますね」


早朝ということもあり、馬車の揺れが適度に気持ちよく、リゼリアとユリウスは珍しく眠ったまま移動を終えた。


父親のラレド公爵が医療領域の改善に関する追加資料を持って帰ってきたため、二人で夜遅くまで確認していたのだ。ラレド公爵は領地の医師と薬師に調査をしていた。彼らも病人が初期症状で相談にきてくれれば、回復も早い。遅すぎる来院は医師も薬師も手が施せず辛い思いをしているとのことで、ぜひ協力したいという資料だった。


◇◇◇

海の離宮がある港町ノハ。王都からもそう離れておらず、利便性もいいため小さいながらも栄えた町だ。離宮は断崖に位置しており夕日や星空も美しく見える。


到着するとすぐさまラインハルトは馬車から降りて、リゼリアが乗っている馬車へ向かった。馬車のドアが開くまで静かに待つラインハルトは非常に爽やかな雰囲気だった。

ドアが開きリゼリアが降りようとした時、ラインハルトは声をかけた。

「リゼリア、長旅疲れただろう。すまなかった。お手をどうぞ。」

右手を差し出し、リゼリアの手が自分の手の上に置かれるのを待つ。

足を台にそっとかけて手を伸ばすリゼリアは少し恥じらいながらラインハルトに応えた。

「お願いします、殿下」

ラインハルトはリゼリアに微笑むと、ゆっくりと彼女が馬車から降りやすいように少し背を支えながらエスコートした。

行きたくないと言って、ほとんど参加してこなかった夜会。

リゼリアにとってエスコートされる経験はわずかであり慣れていない。

リゼリアがラインハルトとともに前で皆を待つ。


馬車から降りてきたユリウスにカイルが近づいてきて言った。

「殿下は男を見せたいそうで、リゼリア様と過ごす時間を確保したいと話されていました。本日は殿下の番だそうです。許可します?」


「男って何? 姉上はお疲れなのに気がかりすぎます。許可制なら絶対に不可ですから」


「ただ、張り切って甘やかしたいだけでしょう。許してあげてくださいよ」


「俺は明日の朝らしい。明日また考えればいいよ」


「休みにきたのに、どうして姉上の予定がすでに埋まっているんですか。明日も不可」


少し前にいたリゼリアが後ろを向いて声をかけた。

「ユリウス、殿下が皆を部屋に案内してくださるそうですよ。すでにベッドでくつろげる状態とのことなので、ゆっくり休んではどうですか。昨日は遅かったですしね。」


「ああ、旅路の疲れがあるだろうから休むといい。

昼食はダイニングに軽食をいつでも食べられるようにしている。各自で好きにしてほしい。ただ、早めの夕食にして皆で食べよう。

この町の名物料理で魚や肉などを外で網焼きにして食べる。楽しみにしてくれ」


「僕はまだ寝足りないので、部屋でもう少し休ませていただきます。姉上はどうしますか?」

「ユリウス、リゼリアを休ませるから問題ない。」

ラインハルトが笑顔でユリウスに圧を加えた。


「頼みたくないけど、頼みますよ、殿下」

ユリウスは疲れで気力もないのか、いつもよりおとなしく引き下がった。


「ラインハルト。俺はさっき、馬車で見かけた露店通りにいってくる」

「ルーク様、私もご一緒していいですか」

「カイルが大丈夫なら、今から行こうか」

「はい」


「ああ、海にちなんだ食べものや小物、土産もいろんなものがあって面白いぞ」


それぞれが予定を決め、目的地に向かっていった。


☆☆☆

「リゼリア、君とユリウスは6歳くらいの時に一度こちらへ来ているのを覚えているか。」

「はい、覚えています。はしゃぎすぎて、夕方には寝てしまいましたよね。」

「そうだ。また君とこちらへ来られて嬉しい。ここの星空は格別だ。夜また寝てしまうといけないから一緒に休める場所を用意した。」


ラインハルトは離宮に入らず、壁に沿って進んでいく。海を見渡しそびえるこの離宮は、高く登ろうとしている太陽の日差しを受けて白く輝いていた。そこへ大きな日陰が見えてきた。小さな庭のようになっており、木と木の間に布が二つぶら下がっている。そのそばには小さなテーブルと二脚の椅子がおかれていた。

風が通り、この場所だけは涼しく心地よい。


「騎士団長がご実家で使ったことがあると作ってくれたハンモックというものだそうだ。あの布の上で横になったりくつろいだりできるぞ。」


「初めて見ました。宙に浮いており、安定するのでしょうか?」

「リゼリア、あの上で本を読むのもいいし、揺れるから身を任せてみるのも良い。案外眠りやすく私のお気に入りの場所なんだ。」


「試してみてもよろしいのですか?」

「どうぞ。私の肩に手を置き、ゆっくり上に乗ってくれ」

ラインハルトはリゼリアが乗りやすいようにリゼリアの手を支えながら、ハンモックの布を引っ張り支えていた。

リゼリアがラインハルトの肩に手をそっと置いたとき、二人の距離は近かった。リゼリアからかすかに甘く優しい花の香りがした。その香りはラインハルトの心に触れてくるような香りでリゼリアにもっと意識が引き寄せられてしまう。


「リゼリア…良い香りがした」

自然と声が甘くなってリゼリアをみつめていた。


「はい、エレネが海に合う香りをほんの少し加えたと言っていましたよ。ジャスミンという花だそうです。きゃっ」


ハンモックに乗り上がろうとしたリゼリアはバランスを崩し、横に倒れそうになっていた。ラインハルトの肩にかけている手が思わず力む。ラインハルトは咄嗟にリゼリアの肩を支え近づいた


「大丈夫だリゼリア、そのままゆっくり上を向くように体を回してみてくれ。」


リゼリアはハンモックに身をまかせるように仰向けとなり、ラインハルトはハンモック上にあったクッションをリゼリアの頭の後ろに置き、ブランケットを腰から下にそおっとかけた。


「果実水と果物のサンドイッチを持ってくるように伝えている。いつ食べても構わない。寝てもいいし、本を読んでもいい。いくつか君が好きそうな本も用意している。」


見上げるとそこは真っ青な空と日陰をつくる大きな木の葉が見えた。心地よい風が頬を触る。少し体を動かすと揺れるハンモックに、リゼリアの体の力が抜けるように感じた。

「殿下、とても良いものですね。体の力が抜けるように気持ち良いです。」

横で心配そうにリゼリアを眺めていたラインハルトは、好感触のリゼリアの感想にとても喜びを感じていた。


「良かった。私も隣で君とくつろぎたい。いいかな」


「こちらこそ、お気遣いありがとうございます。」


馬車の中でリゼリアは寝ていたので眠くはなく、ラインハルトと本を読んだり、会話をしたりと夕食まで過ごした。向かい合って時には笑う。果実水を飲む時はハンモックを乗り降りするので、ラインハルトが体を支えてくれていた。こんなにラインハルトを近くで意識したのは初めてだろう。トクンッと胸が高鳴ったのをリゼリアは感じた。


☆☆☆

路店通りは人も多く賑わいを見せていた。貝殻をモチーフにした壁飾りやアクセサリーなどを多く見かける。店ごとにデザインが異なり、見ていて飽きない。

時折、屋台もありおいしい匂いもやってくる。そんな中、ルークは小さな銀細工の店の前で止まった。大きなアクセサリーや指輪、ネックレスなどがあった。ルークは小さな髪飾りに目がいった。少し大きな星と小さな星がいくつも並んでおり、細く小さな鎖につけられた星は揺れるようになっていた。その大きな星の中に天然石が一粒埋め込まれており、いろんな種類のものがあった。ルークは自然とハニーブラウンのような光る石のものを手に取っていた。

「そちらには茶水晶を使用しています。安定と守護、また癒しや浄化というような効果があると言われます。」

「守護か。」

「ルーク様、あなたの目にとても似ている石ですね。そして効果も守護。それはかなり意味ある贈り物に見えますが、よろしいのですか?」

「俺はリゼのそばにいたい。リゼを守りたい。迷惑だろうか。」

「リゼリア様が迷惑と言われると思いますか?そうですね。ルーク様は自分の気持ちに真っすぐ動かれている方が良いでしょう。後で考えたら良いことも世の中沢山あります」

「今日のカイルは大人だな。」

「商家の三男は空気を読むんです。」

「この髪飾りをつけると、飾りの星が揺れてとてもきれいだ。リゼが喜ぶといいな」

ルークはこの髪飾りを買って、そわそわしながらカイルと離宮に帰っていった。



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