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冷徹令嬢は王国最強戦力たちを乱しがち。最強魔導騎士は今日も赤面しています  作者: 荒木カルメン
第一章 溶けた気持ちと強き想い

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第10話 いつも通りに

いつも通りに


剣術大会終了後、休日明けから早くも数週間が経った。

初夏の日差しはまぶしく、開いた教室の窓は心地よく風が入ってくる。


生徒の興味は夏季休暇での過ごし方とその後の学園祭に向いていた。

学園祭の催し物は年々異なるものの、そのうちの一つはダンスパーティと決まっていた。日頃と違って着飾ることや、ダンスのパートナーはどうするのか。令嬢たちは悩ましくも楽しい議題に盛り上がっていた。


そんな明るい内容の中にも、時折入り混じって聞こえてくる悪意のある噂は日を追うごとに増えていっていた。


「冷徹令嬢は他の婚約者候補の悪口を殿下に伝え優位になるように仕向けている」


「殿下を無理やり昼食に誘っている公爵令嬢」


「自分に利益のある王家にしか敬意を払えない」


「騎士科一年の有望な生徒に目をつけ色目を使っている。」


「必要以上に接近し無垢な男性生徒をもて遊んでいる」


「弟でさえ自分の駒であり、従者のように側につけ働かせている」


そんな噂を多く耳にした生徒たちはリゼリアを拒み、軽蔑するかのような目を向けていた。

これらの噂は事実とは異なるのだが、そのように見てとれる自分にも落ち度があるかもしれない。


自分だけのことならまだいい。

けれど、今回は殿下やルーク、ユリウスに迷惑をかけてしまっている。

リゼリアは申し訳ない気持ちでいっぱいになっていた。


飛竜事件の調査協力で書庫に行くものの、皆に迷惑をかけたくないと自然と自室で資料を読むことが多くなっている。


噂を耳にしたラインハルト、カイル、ルーク、ユリウスたちは、リゼリアを苦しめている心無い行為に怒りが爆発寸前であった。


カイルが夜の男子寮の談話室を予約して彼らに声をかけた。

「皆さん、よく行動せずに堪えています」


カイルのその言葉を受け、真っ先に声を上げたのはラインハルトだった。


「私が行動したら、リゼリアを庇うのかと余計に噂を助長しかねない。

本当にリゼリアには申し訳ない。私の配慮が足りなかった事が原因だ」


「僕が姉上と一緒に居たいだけなのに。勝手な事言われるのは心外です」

リゼリアを悪く言われ悔しいのだろう。ユリウスは歯を食いしばっていた。


「俺の行動もリゼへの攻撃の原因になっている。

事実じゃないが、全く異なるわけじゃない。

俺たちからリゼを離そうとしている気がする。情報操作が上手い。」

ルークはかなり怒っているが、冷静に、そして静かに言った。


「今回は主だって動いている方がいると思います。恐らくリゼリア様の孤立を狙っています」


「商家の三男では潜入捜査は難しい場所であったため、やんごとなき方のお力をお借りしました。」


カイルが説明を始めた。

剣術大会終了後にルシア嬢はルークの元へ殿下と一緒に行きたかったが、殿下はリゼリアを理由に断った。その後ルシア嬢の不穏な様子が気がかりで調査を実施。

ルシア嬢は王都のある教会に出かけ、一枚の紙を内密に手に入れた。


その紙には

「孤立は誘導 母 血 悪 帰るべき 学園祭」

と書かれていた。


全員が紙を見つめていると、カイルが続けて見解を口にした。


「孤立は誘導とは、今回の噂の源はルシア様周囲の者による工作でしょう。リゼリア様と交流のある者を対象にそれぞれの噂が立てられています。実際、調査をしましたが、ルシア様自らは噂を何も流していません。ルシア様の従者が取り巻きにこんな話があると伝えています。また従者がルシア様は王家にふさわしい方と声をかけているのを確認済みです。我々の行動も検討しなければなりません。」


「ルシア嬢は本来曲がったことが嫌いな方だ。彼女の国への忠誠心や周囲への気配りも良くできているため婚約者候補に挙がった。問題があるとすれば、次の文字の母だろう。カティス侯爵夫人は、かつて父上の婚約者候補の一人だった。

結局父上が母上を選ばれたのだが。

ルシア嬢を妃にと執着が強い。

リゼリアを邪魔に思っているのは母だろうな。」

ラインハルトは納得したように話をした。


ルークは紙を見つめながら話す。

「元は母だとしても、ルシア様の意思はどうなんだ。王家にふさわしいと言われて、鵜呑みにしているのか。」


「もはや令嬢の妬みなどとは程遠い、大きな問題になっていますね。」

カイルは率直に意見を述べた。


「血、悪、帰るべき、は聖王国出身である僕たちの母上の血でしょうか。

母上は聖王国の第三王女でした。

王国へ留学中、父上と恋仲になり結婚に至ったと聞いています。

聖王国は認めませんでしたが、母上の強い意志を受け、父上が陛下に相談し保護してもらったそうです。

姉上を悪に仕立て上げ、聖王国に帰らせようという意味でしょうか。ちょっと極端ですが、教会が関連しているとそう思えます。」

ユリウスは長考後、確認するように答えていた。


カイルがまとめるように言った。

「最後の学園祭の文字ですが、この度は有能な王太子婚約候補の3名がともに学園祭準備委員をしてもらうのはどうだろうと声が上がっています。

カティス侯爵夫人の派閥の貴族からのようですが。

学園祭では保護者をはじめ、国内外からも多く来賓が訪れますから、対応には適していると。学園長は、この案でいくことをすでに決定しています。

また当日も何があるかわかりません。」


「悩ましいな。」


「ああ。リゼは問題ありませんと、戦場に飛び込むだろう。」


「姉上は今回僕らに申し訳なさを感じています。その為、僕たちの介入は遠慮するでしょう。」


「この準備対策委員には当然殿下。そして私が追加されています。今回はルーク様やユリウス様は別舞台で頑張りましょう。」


「リゼのそばにいる時間が減る。だけど、リゼのためにやる。」

「僕ももう一度、文字の意味や教会情報を探ってみます。姉上のために」


リゼリアのために。


各自が意気込みを語った。


「皆さん、学園祭の準備対策委員の顔合わせは間もなくです。

顔合わせだけで、実質の活動は夏季休暇後ですので、しばらく学園は静かでしょう。良いタイミングです。やんごとなき方が海の保養地へ行くようにと仰せです」


「カイル?父上か?父上だな」


「目的はリゼリア様が学園と距離をとることが一番の安全につながるとのこと。すでにラレド公爵にも許可をとっています」


「カイル、仕事が早いですね。父上にも連絡していたとは」


「海でリゼが安らげるといいな」

「そうだな」


ルークは少し間を置いて、話はじめた。

「やっぱり、明日から俺はリゼとはいつも通りに、できる限り一緒にいようと思う。


距離をとると、距離に慣れてリゼは戻れないような気がする。


リゼの周りはリゼを大切に思っていることを知ってもらいたい。


そして、リゼの優しさを他の生徒にも知ってもらえるといいと思う」


ルークは思いつめた顔から少し晴れたように変化していた。


「僕も姉上のことを思うなら、離れるべきではありませんでした。今回だけルークを認めましょう。」


「私も明日は良い茶葉と菓子をもってリゼリアに会いに行こう」


「みんなでリゼリア様にかまってもらいましょう。もしくは堂々とリゼリア様を甘やかしましょう」


◇◇◇

「姉上は休憩してください。後は僕がやります」

「もうすぐ終わる予定ですよ。問題ありません」

「姉上のもうすぐは、だいぶ先という意味ですから、ダメです。横で紅茶でもお飲みください」


「噂とは少し違いますわね。ユリウス様は普通に冷徹令嬢のそばにいらっしゃいますわ」

「確かに。むしろユリウス様が離れたくないように話かけていらっしゃいますね」




「その資料、貸して。俺が持つよ」

「いいえ、このくらい問題ありません」

「俺が持ちたいの。いい?」

リゼリアが両手で抱えていた数冊の本と何束もの資料。

ルークは渡して欲しいと声をかけると同時に資料に手もかけている。真正面に向かい合っており、お互いの顔の距離は非常に近い。


「バルケラ様が積極的ですわ。優しくて素敵」

「リゼリア様は断っていますわね。」



「リゼリア、良い茶葉が手に入ったんだ。それと、菓子の流行について君の意見も聞きたい。いくつか揃えているから今からどうだ?」

「殿下、すみません。菓子の流行とは?私の意見は参考になりますか?」

「なぜ一時的にみんなが欲しがるのか、気になるだろう。

調査の一環だ。私は多くは食べられないからな。君の力が借りたい」



「殿下がお菓子を用意ですって?」

「リゼリア様が無理にお誘いしていたんじゃなかったの?」


カイルは早期に噂が払拭されていくのを確認した。

「事実ではない噂には、事実で対応するのが効果的でしたね。

皆さんは正直にいつも通り動いているだけでしょうが」


◇◇◇

学園祭準備委員顔合わせ当日。


学園祭準備委員

委員長   特別科2年 ラインハルト・デ・アルバ

委員長補佐 騎士科3年 オビエド・デ・カルネ

記録    特別科1年 カイル・プリオラート


特別科2年 リゼリア・デ・ラレド

特別科1年 スザンナ・デ・マッパス

貴族科3年 ルシア・デ・カティス


以上六名


学園の会議室には、すでにほとんどの委員の生徒は着席していた。

最後に遅れてカイルが扉を開け、ラインハルトが入ってきた。


ご令嬢三名は、すぐさま完璧な所作で立ち上がり、礼をした。

「顔を上げてくれ。皆、よろしく頼む。」ラインハルトが爽やかに声をかけた。


ルシアはラインハルトに真っすぐな視線を向け、誰よりも堂々とその場所に立っていた。



◇◇◇

「リゼ不足、、、リゼが足りない」

「何、気持ち悪いこと言ってるんですか。危険発言ですよルーク。」

「ねえ、海って泳いでいい?最近暑いよね?昔、師匠と海で泳いだり遊んだりした。」

「姉上は泳ぎませんからね!!!!決して想像しないでくださいよ。」

「え?考えてなかった。。。ユリウスが言ったから余計想像しちゃうって。」

「あなたの頭から姉上の記憶を抹消したい。」

「怖いよ、弟くん。。。」



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