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第93話 首都侵攻3



「はい、皆さん。今回は攻めるフリですので、この火矢をありったけ打ち込んでください」



モルアナが丁寧に説明する。




「無理は禁物です。怪我せず。相手からの迎撃があれば、すぐに移動しますよ」




どこまでも慎重で、徹底的に火矢による攻撃を、ネチネチと続ける。



すると、矢が打ってこられたりなど、ある程度反応があったのに、とうとう何の反応も無くなった。





「あ、頃合いですね。他の皆さんの方が攻めが厳しいので、こっちは後回しと捨てられたようです。これなら皆さん安全に壁登れますよ」




モルアナはさも当然のように壁を飛ぶように登り、数秒で登頂する。



「え?あの・・・・・・わ、我々は登れないのですが?」



レジスタンスが置いてかれて、ポカンとしている。



だが、数秒もせず、モルアナがハシゴを下ろしてきた。




「全く敵兵がいないですね。せっかくここまで無傷で入り込めたので、皆さん、プランCの、市民のふりをして流言しまくりますよ」



全員が登りきったのち、各々が持ってきた服装に着替えて、市民になりすます。




「はい、じゃあ2人1組で、予定の時間になれば逃げてくださいね」




モルアナの部隊は散り散りとなり、流言に向かう。






モルアナ自身は、私服に着替えたところで、エルフなので市民には紛れ込めない。



なので、1人で諜報活動に切り替える。





屋根を飛び越え、こそこそと大胆に動きつつ、誰にも見られず首都を飛び回る。




「んー、兵士はそれぞれ散っていて、首都の街中には全くいませんねぇ」




のんびりとした街中は、いつもの日常を謳歌している。



だが、そこへ慌ただしく走る人間がいる。




「たた、大変だぁ!貴族派が攻めてきた!しかも包囲されているぞぉ!」



部隊の人間ではない。


おそらく、流行を聞いて、更に広める伝言リレーを勝手にしてくれている、本物の市民だろう。




恐怖はすぐに伝播する。



池に投げられた石により、波紋ができるように、広く、大きく波が立つ。




市民の、まだ目に見えないのに、攻められたという言葉と、兵士が1人もいないことで、想像がいつしか現実にすり替わる。




人々の戸惑いと、家に隠れるものと、家財道具を持って、首都から逃げようとする者とで、街中は混乱の種が仕込まれる。



あとは、この渦が、どこまでも広がればいい。



モルアナは教皇のいる教会本殿を目指す。






所変わって。



イチゴとレジスタンス達が、壁に相対して、火矢を撃ち込みつつも、そこそこ敵から応戦を受けていた。




イチゴは弓矢を撃てない。


というか、宇宙では廃れた技術だし、銃の方が早い。


イチゴだけ世界観の違うビーム銃を撃ちまくっていた。



しかし、戦況をそこまで変える決定打にはならない。



イチゴはそろそろかと用意していた道具を手に持つ。




「みんな、大きな音と光がするから、隠れて目と耳を塞いで」



イチゴが前もって伝えていたおかげで、レジスタンス達も、いよいよ実行かと頷き、全員が伏せる。




イチゴはサングラスに防音イヤーマフラーをつけて、壁に向けて違う銃を撃つ。




放たれたのは、黒い塊で、壁の上まで打ち上げられると、目を潰さんばかりの光と、耳をつんざく破裂音が響き渡る。




敵兵はモロにそれを浴びて、視覚と聴覚を奪われる。


最早、攻撃どころではない。



イチゴがその様子をしかと見て、光と音が収まったところで、レジスタンス達に声をかける。



「よし、では壁を登り侵入しましょう!」



「あ、待って。潰した方が早いよ」




イチゴはまた別の機械を取り出し、壁にセットする。



手のひらほどの大きさの黒い箱が、適当に距離を空けて3箇所設置する。



そのままイチゴはトテトテと走って離れる。





「イチゴ殿?そのような小さい箱でなにを?」


レジスタンスが不思議そうな顔をするが、イチゴは、離れて見てて、とだけ言う。




イチゴが、テレビのリモンコンでスイッチを入れるようにピッとボタンを押すと。



壁が震え始めた。




てっきり爆発でもするかと思ったレジスタンス達は、身を屈めて顔を覆ったが、振動している音を聞いて、拍子抜けする。




「な、なんです?これ?」




「振動起こしてる。ただの石の壁にはこれが効く」


「本当ですか~?」



レジスタンスが信じ難い、という顔をすると、次第に、あの硬い石の壁が、波打って震え出したのを、目の当たりにする。




そして、亀裂が入り、ガラガラと音を立てて壁は崩れた。





「ね?言った通りでしょ?」




イチゴはフンス、と鼻息をする。


「お、お見それいたしました・・・」




レジスタンスはそう言うしか無かった。




そのまま、イチゴはズカズカと入ろうとする。


だが、その瞬間、イチゴの着ていた強化スーツver2が、攻撃を察知して、自動回避行動を強制的に取らせる。



前転してその場から離れたイチゴは、元の位置に、日本刀が振り下ろされるのを見る。






「むぅ・・・避けられましたか」






目を閉じている、着物を着た若い女が、そこに居た。




「敵か!?迎撃を!」



「待って!」



レジスタンス達が剣で斬りかかろうとする。


だが、イチゴがすぐさまヤバいと勘付き、カンフーで女に応戦する。



イチゴの呼びかけで、咄嗟に立ち止まったレジスタンス達は、間一髪で、女の刀のギリギリ範囲外で掠める。




そして、イチゴの繰り出す打撃に、女は難なく避けて、後ろに下がり距離を取る。




その全てを、目を閉じて行っている。




「ん~、拙者もまだまだ精進が足りませんね。目が潰された程度で、この体たらく・・・」




どこか、涼しい感じで答える女は、しかし、刀をまっすぐにイチゴに向けて言う。




「子供。殺す気のない攻撃なら、一生当たりませんよ?・・・殺す気がないなら、戦場から去りなさい。拙者の慈悲です」





イチゴは冷や汗をかく。




ビィンセントと戦ったが、あの辛かった試合すら、やはりただの試合だと痛感させられる。





本物の殺気とは、こんなにも嫌なものなのか。




イチゴは、即座に決断した。





目で、レジスタンスに合図する。




レジスタンス達も、さすがにこの状況は理解して、頷く。





「なんです?作戦会議ですか?やるのなら、もう容赦しませんよ?」






女が今一度、刀を光らせ、集中する。








その瞬間、イチゴとレジスタンス達は速攻で背中を向けて走る。




一切、無駄口を叩かず、女に何も言わず、ただ綺麗に走り去る。






「・・・思い切りのいい」




女は苦虫を噛み潰す顔をする。


挑発のつもりだった。



何故なら、さすがの女も、先の閃光で目を潰されているので、逃げる敵を追いかけて斬ることはできない。



近い間合いの相手しか斬れない。



だから、相手を挑発して、戦闘を誘発しなければならなかった。






「あぁ・・・斬りたかったな」





恨めしそうに女は、見えない目で、イチゴの走り去った後を見ていた。






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