第91話 首都侵攻・・・のフリ
エリュシール国内
=首都 ワンデス=
レジスタンス達からの有志隊と、ヴォルクが大将として、アイハンド軍団を率いる。
まぁ、軍団というには人数がそんなに多いわけではないのだが。
ヒロ、ミハエル、シルヴィ、ノイル、ルノアと、転生者の面々は揃っている。
ゴルドの元に残っているのは、美月だけだ。
「じゃ、作戦のおさらいだ」
首都から、まだ数キロ離れた山林で、キャンプを張って陣を構える。
ヴォルクがレジスタンスメンバーとヒロ達を前に、事前に説明していた作戦をもう一度言う。
「今回の目的は、首都を攻撃する。これだけだ。教皇を倒すことでも、敵兵を1人でも多く倒すことでもない。ここを履き違えるな」
ヴォルクは全員に目を合わせる。
暗に、死ぬ事は無意味であると告げている。
「攻撃方法は、ゲリラ戦法だ。少数に部隊を分けて、火薬による爆破、火付、流言による混乱、これらを首都内で一斉に起こす」
そして、と言葉を続けながら、ヴォルクは手のひら程の大きさの、無線機のようなものを持つ。
「これが、通信機だ。落としたりするなよ?魔術が仕込まれてて、使用者と距離が離れたら、転移してこの場から無くなる」
敵に無線機という機械が知られないよう、徹底されている。
「これで、動く合図や、引き下がる合図をする。それ以外にも、異常が発生すれば呼びかけろ。オレが指示をしてやる」
あとは、一通り、部隊の配置を、地図上で指示した。
首都を取り囲むように、8ヶ所から同時侵攻する。
「これほどの戦、体が疼きますなぁ」
モルアナが、ヴォルクに不敵な笑みで語りかける。
アイハンド家最強決定戦で、ヴォルクと戦って以来、ヴォルクの部下となっている。
ゲリラ戦において、彼ほど実践豊富な人物は、それこそヴォルクをおいて他にいない。
「あぁ・・・とうとう来てしまった、戦場に・・・」
「スケマツ、いい加減、腹くくりなよぉ」
宇宙組から唯一参戦の、スケマツとイチゴもいる。
スケマツは青い顔をしているが、イチゴは涼しい様子で、スケマツの背中をさすっている。
イチゴは、最強決定戦で着ていたスーツを着用していた。
そして、スケマツは、そんなに多くは無いが、いくつか宇宙組の便利機械を持ってきたので、そのメカニック要員である。
「お前らは無理すんなよぉ?」
特に小娘、お前な。
とビィンセントが指を刺してイチゴに言う。
「・・・戦場なら、味方への誤射も致し方ないよね」
「お前さんは銃使わんだろ。間違えてあっしを殴る気かい?」
イチゴが頬を膨らませてビィンセントを睨む。
スケマツがまぁまぁとイチゴに言って、少し空気が軽くなった。
「さて、アイハンド軍団はオレが率いるが、今からいう奴らは他のレジスタンス部隊に混じって欲しい」
ヴォルクは8ヶ所に、メンバーを振り分ける。
ヒロとクローナを1番目に。
ミハエルを2番目に。
ノイル、ルノア、キャロットを3番目に。
シルヴィを4番目に。
ビィンセントを5番目に。
モルアナを6番目に。
イチゴを7番目に。
「騎士団員がそれぞれパートナーで1人つく。判断に困れば、無線機かその団員に聞け」
「んだよ。レジスタンスのお守りか?」
ノイルが口悪くつまらなそうに言うが、ヴォルクは即座に否定した。
「違う、効果的な攻撃と、1ヶ所でお前らが固まっていたら、レジスタンスのフリをするのに、一部だけ強すぎて怪しまれるからだ」
あぁ~、確かに。
と、全員が納得したところで、移動にそれぞれが入る。
ー同時刻、アイハンド領
ゴルドは、執務室で貧乏ゆすりをしていた。
両手で祈るように拳を組み合わせ、顎を乗せている。
リンゼがそれを見つめる。
特に話しかけはしない。
前回の奴隷商人との戦闘の時よりは、いくらかマシなので、もう言うことはない。
「ゴルドさん、入るよ」
美月とワカバが、無線機を持って入ってくる。
作戦の指示はヴォルクは担うが、せっかく無線で聞けるならと、ワカバが用意する。
「い、いざとなれば、ベルネシアに頼んで転移をオレがして・・・」
「ゴルド様だけ行ってどうするんですか、私たちと変わらない非戦闘員なのに・・・」
ワカバが呆れた様子で答える。
その間に、さっさと無線機を準備する。
領の守備として、ローガン、ベルネシアが残っているが、過剰ではないか?とゴルドはいまだに思っている。
まぁ、2人を今回戦場に送らなかったのは、敵相手にやりすぎて、レジスタンスじゃなくない?と思われる可能性があるからなのだが。
「・・・役にたたねぇなぁ、オレって」
ゴルドはため息をつきながら、自虐的に笑う。
それを見て、美月、ワカバが、こいつマジか?という目で、ゴルドを見る。
リンゼは変わらず無表情だ。
「あの、レジスタンスまとめ上げて、貴族派のトップ暗殺して、貴族派による内乱起こさせたのに、未だに自分達の存在を隠せていて・・・それで、役立たず??」
ワカバが震えながら言う。
「いやいや!なにそのまるでオレがやったみたいな!?違うから!なんかそうなっちゃっただけだし!ていうか、ワカバのロボットとかの方がすごいだろうが!」
「その私たちを呼んだのが、ゴルド様でしょ」
ワカバが、まっすぐにゴルドを見て、そう言った。
真剣な目で、ゴルドの瞳を見て離さない。
ゴルドも、目線を外せず、見入る。
「ゴルド様の魅力がなければ、ここまでがそもそも成り立たないんです。ヒロさんを筆頭に、誰も来ないし、この領の為に戦おうとなんてしません」
ゴルドは、気付かされる。
気付いた様子のゴルドに、満足そうにワカバは笑って、無線の電源を入れた。
「さぁ・・・みんなの頑張りを、見てください」
無線の先から、ノイズ音の後、鮮明なヴォルクの声が聞こえる。
『ーーー作戦開始!』
その声が、アイハンド家とエリュシール国の開戦を、高らかに告げた。




