第85話 転生者を知る領主だから
ゴルドが遅れて会議に登場する。
「いやぁ、遅れて申し訳ない」
いつもの笑顔に、磨きがかかって爽やかである。
ヒロ、ヴォルク、ローガン騎士団長、家令、そしてエドガー伯爵と、男性陣は、もう何も言うまいと、特に反応せずにいた。
美月とミハエルはすごい目でゴルドを見ている。
他にも女性陣、フィオやワカバもらいるが、彼女達も何も気にしない顔をしている。
美月とミハエルだけ、ジト目でずっとゴルドを見ていた。
「はい。では戦略会議を始めます」
家令が宣言して、会議は始まる。
ヴォルクが代表して、レジスタンス主軸の戦略を説明する。
そして、今回の会議のメインである、アイハンド家の戦力は、とのようにして戦闘に参加するかの説明に入る。
「レジスタンスは5つ組織がある。だから、我らの戦力も、5つに分けて、レジスタンスをフォローする」
ヴォルクの提案は、実に堅実なものだった。
レジスタンスに紛れて、アイハンド家の戦力を目立たせず、力を貸す。
そして、ローガン達騎士団は、基本防衛に回る。
スタンピートが予期せぬ動きをする可能性があるからだ。
「異論は、あるだろうか?」
ヴォルクの質問に、手を挙げるものはいなかった。
ローガンも、定石通りであると安心する。
エドガー伯爵も、あとはどのように人を振り分けるかが重要だと先を考えている。
「じゃあ、次に・・」
「ちょっといいか?」
1人、手を挙げて割って入った。
ゴルドが、ニコニコ笑みを崩さず、手を挙げていた。
ヴォルクは、基本作戦に口を出さないゴルドが手を挙げたことに、驚く。
ヴォルクだけではない、会議に参加している者全てが、ゴルドに目を向けている。
「何か、質問ですかボス?」
ヴォルクが聞くと、ゴルドは真剣な顔になる。
「ヒロやヴォルク、みんなを5つのチームに分けるということか?」
ざっくりと、ゴルドは確認で聞く。
「あぁ、そのつもりだ」
「分けすぎて危険じゃね?」
ヴォルクが答えると、間髪入れずにゴルドは思ったことを言った。
笑顔が消えて、ゴルドは席を立つ。
「相手の戦力を、測りきれていないと思う。確実に、敵は我々よりも弱いと断定できるのか?」
ゴルドの落ち着いた問いは、この会議にいる全員に聞いている。
ヒロが、自信を持って手を挙げる。
「ゴッド様!僕らは勝てます!研究でも、その後の食糧庫襲撃でも、敵を完封しました!」
ヒロの自信満々の笑みに、ゴルドは笑顔で答える。
「ありがとう・・・食糧庫襲撃は確か、ヒロにクローナ、キャロット、ノイル殿にルノア殿だな・・・」
「はい!」
ヒロが親指を立てて嬉しそうにする。
「奇襲で5人1チームを組んでいたが、足りるか?ヒロレベルで戦える転生者、レジスタンスに送るとなると、うちに25人いたか?」
ヒロの目が泳ぐ。
ヴォルクも、ゴルドの言わんとしたい事に気づく。
「ヒロレベルを求めるのは酷だぜ?エルフ達や冒険者たちも、そこらの兵よりレベルが高い」
ヴォルクの尤もな返しに、ゴルドは頷く。
「それは分かる。相手が、同じ土俵のこの世界基準の兵士なら、心配性なだけだと、笑われるだろうな」
だが、ゴルドは続ける。
「ヒロレベルではない彼らは、敵の転生者を倒せると思うか?」
ゴルドの指摘に、ヴォルクは難しい顔をする。
「彼等だけでは難しい。だから、オレ達が分散して、対応できるようにする」
「そこだよ。心配している所がね」
ゴルドは、にっこりと笑いはっきりと言った。
「敵に合わせて分散なら分かるが、レジスタンスに合わせて分散じゃあ、敵が各個撃破に動いた際、遅れを取る。そうは思わないか?」
美月は何となく、ゴルドじゃないみたいだと、不思議な感覚で見ていた。
目の前で、戦略、戦術に意見を言う男は、情けなくダラダラするいつもの感じではなかった。
「・・・ローガン団長とエドガー閣下も同じ指摘を言いましたが、逆に、それはチャンスでもある。敵が1つに釘だけになっていれば、残り4つが好きに動ける。国取りは有利だ」
ヴォルクの指摘に、ローガンとエドガー閣下も、頷く。
すでに考えて、通った道であると顔が言う。
「残りで、敵の親玉だけ倒せば良いってことか?」
ゴルドは、少し意地悪な言い方をする。
だが、ヴォルクは変わらない姿勢で答える。
「国にはトップがいて、そこに従って軍も動いてる。どこもそうさ、どの時代も、どの異世界でも、頭を取られたら終わりだ」
ゴルドは、いまいち納得した顔をせず、周りを一瞥する。
全員の顔を、一通り見て、最後にヒロを見る。
「なぁ、ヒロ」
ゴルドが呼びかけて、ヒロは返事をして顔を上げる。
「オレ死んだら、諦める?」
どこか、ゴルドは困り顔だ。
ゴルドの問いかけに、ヒロは詰まる。
いや、ヒロだけじゃない。
ヴォルクに、美月、ミハエル、ワカバと、転生組は、固い顔をする。
「アイハンド家のトップはオレだよな?・・・オレ死んだら、諦めて、敵の指示受け入れられる?」
「・・・そ、それ、は・・・」
ヒロが、青い顔をして、何を言うべきか、分からなくなる。
「うん。ありがとう。嫌なこと想像させてごめんな」
ゴルドはスッと切り替えて、話を切る。
「転生者相手となると、この手の常識も通用しない。レジスタンス達みたいに、時間をかけて潜伏するわけじゃない。きっと、すぐに爆発する・・・だから」
ゴルドはもう一度、全員を見て、言葉をためる。
各々の、聞いていた者たちの顔付きが変わった。
「もう一度考えよう。敵は・・・俺たちと同じ、転生者だ・・・時代遅れとか、こっちが有利とか、そんなものは無い」
会議の空気が、変わった。
ワカバ「ゴルド様、領主みたいですね」
家令「領主ですよ?」




