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第84話 領主とメイド




レジスタンスのリーダー達は、ベルネシアの転移魔法で無事帰っていく。



今後も、定期的に密会は開かれる。



それらは、ベルネシアによる瞬間的な転移魔法で、アイハンド領に呼ばれる為、エリュシールに漏れることはない。




翌日。

今回の集めた情報をもとに、また作戦本部で協議が始まる。



ゴルドは前夜祭にてはしゃぎすぎたので、アラクネ達の見送りに慌ててやってくる。


その見送り後、また会議だ。





「会議ばっかしんどいなぁ~」




戦前だと言うのに、この男はどこまでも平常運転である。



会議の前に、まだ時間がある。


リンゼの入れた紅茶をすすりながら、ゴルドは窓の外を見る。





大筋の戦略は決まっている。



主となって戦うのはレジスタンス達だ。


これは祖国を取り戻し、自らの正当性を主張する為にも、レジスタンス達がせねばならない。



では、ゴルド達は支援だけしていれば良いかと言うと、そうではない。




レジスタンス達がどうしても勝てない理由。




それはエリュシールの持っている軍事技術の高さと転生者の存在だ。




ゴルドから見ても、その2つを持っていると言われたら、勝てる気がしない。




この世界の常識を超えた超常の類だ。


この世界の人間だけでどうにかできると思う方がおかしい。



だが、ヒロ、美月、ヴォルクが相次いで見解を示す。




「エリュシールの技術は古いから、僕らにとってはそこまで脅威じゃないよ」




ヒロの、淡々とした物言いは、憶測や苦し紛れのものではなく、ただ事実として述べているにすぎない様子だった。




「ヒロの言うとおりだ。オレ達の世界基準で行けば、軽く100年は昔の技術だ。そこまで恐れるもんじゃねぇ」




ヴォルクも賛同して言うが、どうしてもゴルドはピンと来なかった。





どっちにしろ、この世界の人間からすれば脅威でしかないのだ。



戦車、とかいった、鉄の馬車は、馬もなしで自由に動き回り、ヴォルクの持つ脅威的な鉄砲を絶え間なく撃ち続けられるという。






・・・いや、脅威だよ、めちゃくちゃ。





ゴルドは冷や汗をかきながら、ヒロとヴォルクの言葉を、信じられないわけではないが、そこまで優位とも思えなかった。




何故なら、ワカバ達宇宙組が技術の最先端を行っているのだが、戦車はオワコンとか言って、作ろうとしない。



「あんなの自走式棺桶ですよ」



ワカバはぷんぷんしながら言う。




だが、実際問題、どう対処するのだろうか。




ゴルドはそこについては、まだ方法を模索中とだけ言われて、答えを待っている。







「難しいお顔されていますね」





リンゼが、ゴルドの様子を見て声をかけた。




ゴルドは素直に、頷く。




「なんて言うかな・・・どことなく、皆、勝てると思いすぎと言うか・・・いや、まぁ、実際、うちの仲間の方が強いのは薄々分かるんだけど・・・なんか、嫌な予感する」




ゴルドの予感めいたプレッシャーは、消えることなくゴルドの頭の上にあった。


重くのしかかるその重圧は、優秀な仲間がいるとはいえ、懸念が拭い取れなかった。





「そうですね・・・ゴルド様は、ご存知ですから・・・」




リンゼは、一度うつむいて、そして、無表情のままだったが、一拍、決意をしたように一息吐いてから、ゴルドを見て言った。










「前の、スタンピートの時と、同じではありませんか?」








ゴルドは、目を見開いて、リンゼを見る。



ゴルドの顔は、強張り、手が震えていた。




だが、嫌な予感と、目先のことで頭がいっぱいだったが、確かにそうだ、あの時のスタンピートと同じだ。





父上が、兄2人が、我らがいれば問題なかろうと、朗らかに笑っていたのを思い出す。




事実、負ける姿など想像できなかった。




誰もが、過剰な人員だと思っていた。




避難だけは、用心のためしていたが、どこか、皆無事帰ってくると楽観視していた。








一緒じゃないか。



ヤバい相手だぞ。スタンピートだぞと、敵を調べて用意していたつもりなのに。



身内の強さに自惚れて、どこか勝てると慢心している。




「ゴルド様」




目が泳いでいたゴルドに、リンゼが目の前に顔を突き出して、ゴルドを呼びかける。



ゴルドはようやく、目の焦点を合わせて、リンゼを見た。






「私は、ゴルド様だけいてくれたら、それで幸せです」




リンゼが急にそんなことを言うので、ゴルドは、スタンピートの思い出が駆け巡った頭が、急にリンゼでいっぱいになるのを感じる。





「え?あ?り、リンゼ?」




「スタンピートも、此度の戦争も・・・いざという時は、私はゴルド様を連れて、2人で逃げます」




リンゼの告白に、ゴルドは口をパクパクさせる。






「・・・でも、知っています。ゴルド様は、それでは幸せになれません」






リンゼの、真剣な眼差しに、ゴルドは目が離せなかった。



リンゼは、同じくゴルドの目を見て、視線をそのままに、続ける。




「ゴルド様は、優しすぎますから。背負えない荷物を前に、諦めることなく、その荷物を守ろうとします」




領主になった頃を思い出して、リンゼは言う。




「出来ないと周りに助けを求めて、感情のままに言葉をかけますが・・・捨てることなく、なんとかしようとなさるんです」




リンゼは、ゴルドの手を掴み、愛おしそうに頬を擦り寄せる。




「ゴルド様にとって、私も含めて、きっと皆の事が大好きなんでしょう?・・・愛してくださっているの、すごく感じます・・・だから」





リンゼは、少しぎこちない、でも、気持ちを伝えたいのだろう、笑顔を作って、見せる。






「ーーー貴方様らしく、したいように、なさって下さい」






リンゼの、その愛おしい様子に、ゴルドは目を奪われる。




リンゼが手を掴んでいたので、そのまま、さり気なくゴルドはリンゼを引き寄せた。



リンゼの柔らかい身体を、優しく抱きしめるゴルド。



リンゼも、そのまま受け入れる。





どちらからともなく、2人は顔を合わせて、唇を重ねた。



そのまま、時が止まったかのように、2人のキスが続く。









「ガチャ」






ヒロが入ってきた。




後ろにクローナとキャロットもいたが、3人で目に入った光景を見て、固まる。



だが、キャロットは早かった。



ヒロとクローナを抱えて、速攻下がる。



リンゼが慌ててゴルドから離れて、顔を赤くしながら、無表情で取り繕う。



「会議ですね、すぐ向かわせます」


「えっ、あっ、いやっ!?」


キャロットがしどろもどろになってどう答えるかあたふたしていると、ゴルドが立ち上がって、後ろからリンゼを抱きしめながら、キャロットに言った。








「1時間ほど、会議遅れてしまう。すまないとみんなに伝えてくれ」





有無を言わせないゴルドの笑顔に、リンゼは頭から湯気を上げて、キャロットは、かしこまりましたと早口に言って、ゴルドの部屋を出るのであった。







今回、刺激強め?


いや、まぁ全然といえば全然ですけどね。


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