第83話 この男の底とは?
子供作ろうぜ発言にて、絶賛フリーズ中のゴルド。
その側にて仕えていた美月が、スッと手を挙げる。
「・・・み、ミツキ殿?」
ゴルドが辛うじて反応をすると、美月は恭しく一礼をして話しだす。
「この場での発言をお許し下さい。アイハンド家客将の平塚と申します」
美月は顔を上げて、真正面を見る。
ナギを見てではなく、あくまでも全体を見るようにして、話し始めた。
「皆様の懸念される、此度の戦いにてエリュシールを見事打ち倒した後のことですが・・・もちろん、国、及び家の再興。それらは、皆様が自ら手にする権利といえます。ここで明言できますのは、我々はエリュシールを侵略し、土地を獲る意思はない、ということです」
美月の宣言に、リーダー達は改めて反応をする。
驚き、えっ?という漏れ出る声。
無理もない。
戦争する上で、見返りはいらないと豪語するようなものだ。
土地を奪い、そして人なり特産品なり農地を手に入れて、初めてようやく金になる。
その大事な要素となる土地を要らないとは、信じられないのも、無理はないだろう。
「驚きは尤もです。そして、不信感を持つのも、重々理解しております」
そう、美月は言う。
不信感。
それはそうだろう。
血を流し戦う理由として、利益がなければ、人は必死にならない。
レジスタンスは、それこそ命を投げ打って血を流し戦うだろうが、ゴルド側は、理由こそ先に述べた親兄弟の敵とは言うが、それでは腹は膨れない。
実まで捨てて、敵に躍起になるような性格に見えない。
アイハンド卿は、上手く言って、我々にだけ血を流させる魂胆では?
そう、捉えているリーダーの顔も見える。
「我々、アイハンド家は、グラン国王より、此度の戦いの全権を委任されました」
「おぉ・・・」
「やはり・・・」
リーダー達の口々の納得の言葉に、畳み掛けるように美月は言う。
「言ってしまえば、我々男爵家は、戦争を勝利した際には国王より褒賞を頂きます。その国王より、侵略し、土地を獲ってくることは不要として、命には含まれていません」
ここでようやく、数名のリーダーは安堵する。
考えてもみれば、アイハンド家は男爵家。
美月の説明は筋が通っていると理解したのだ。
「そして、こちらが皆様の国の復興に、あまり手を貸しても、お互いのためにはならないかと。皆様は自ら立ち上がられて、それぞれの矜持のもと、戦い、勝ち取った再興。そこへ、不用意に他国の・・・援助ならまだしも、血を分ける行為は、あまりに越権しているかと」
美月の言うことは、至極当然と言えた。
リーダー達は、ほぼその考えに同意している。
ナギを除いては。
「ヒラツカ殿、説明に感謝する」
ナギは堂々とした姿勢で、美月に礼を述べる。
ナギは、美月をしっかりと目で捉えて見据えていた。
「手の出し過ぎ・・・なるほど、確かにそう見えるのだろう。我が帝国の常識と、周囲の国との溝には、在し日から手を焼いていたのを思い出す」
ナギはなんて事のないように言う。
そして、にこやかに笑みを浮かべながら説明を始めた。
「今は亡き我が帝国は、女性優位の社会である。その価値観でいえば、男性が女性を選ぶのではなく、逆なのだ」
ナギは不敵に笑みを浮かべながら、今度はゴルドに目を向ける。
「まだ、ただの予感だが・・・傑物となり得る男の予感がする・・・その男が欲しいと感じたのだ。婚姻の類は、そちらも困るだろう。だから、割り切って種だけを貰いたい」
なんと、男前な宣言か。
ナギの視線に、ゴルドは困惑して目線を逸らす。
もはやどっちが女々しいのやら。
美月は頭脳を高速回転する。
言い訳はいくらでも思いつくし、はぐらかす交渉の話も思いつく。
だが、別に乙女の純潔を守っている訳でもなく、割り切った体だけの関係なら、もう別に良いんじゃね?とも思い始めている美月は、ここで無理して論破すべきか、ゴルドの反応を見る。
美月の視線にゴルドが気付き、どうしよう?と困り顔を見せるゴルド。
美月はコソコソと耳打ちする。
「もう分かったと答えますか?」
「いやいやいや!そんな簡単に決めちゃあれでしょ!?生まれる子供の人生がかかっているんだよ!?」
なんと言うか、ゴルドのこういうところは、本当に貴族らしくない。
いや、人としては好ましい、良い部分なので、美月はどことなく嬉しく感じるのだが、ここにおいてはどうしたものかと悩む。
「フィオに、1番影響力あるのは、あの女帝の娘ナギ様だって言われてるのよね~」
だから、心象悪くなりたくはない。
「帝国の後継とか、そんな大それた器しゃないのは分かっている。だから、オレとの子供はきっと不憫だ。他国の男爵との子供なんて、あっさり位を落とされるか、後からきた跡目争いで絶対負けると思う。そんな可哀想な目に遭うのは、耐えられない!」
コイツ、どこまで想像しているんだ?
まるで子を産む母のような目線で、我が子の将来を不安視するあまり、子供を作りたくないとごねるゴルド。
「もう少し考えさせてと引き延ばそうかしら?」
「返事を延ばせば、より断りづらくなるぞ?こんなに頑張ったのに、くれないのか?ってな」
ゴルドも、それなりに貴族の交渉の知恵があるようだ。
美月はうーん、とうなり、最終確認する。
「子供の将来が安泰なら、いい?」
ゴルドは、色々と悩む顔をするが、最後はこくんと頷いた。
「ブランディア様」
美月が改めて、今度はナギを見て、口を開く。
ナギは変わらず、堂々とした佇まいで目線を向ける。
「我が主への評価、恐悦至極に存じます・・・血を分ける事も、前向きに検討いたします」
「・・・検討?」
ナギは、美月のその物言いに、引っかかっていると露にする。
「恐れながら、申し上げます。我が主は、今や天涯孤独の身。ご存知の通り、先のスタンピートで父と兄君達を亡くされ、母君も幼き頃に病で亡くし、親兄弟がおりませぬ」
ナギは、天涯孤独という言葉に、つまる。
そこに、自分もそうであるが故の、悲しみを理解でき、ハッとさせられる。
「それ故に、我が主は、子を残すならば、その子の幸せを第一にしたいと仰せです」
美月の提案に、ナギは聞き入って、遮る事もしない。
「なので・・・検討する為にも、幾つかお約束を頂きたい。その一つに、もし我が主との子が、復興した帝国で必要にならなくなれば、お返しいただきたい」
「・・・子を、案じるのか?」
ナギの言葉には、驚きや、そんな事を?という雰囲気が混じっていた。
「当たり前だ。家族なんだから」
急に、ゴルドが口を挟む。
ナギも、リーダー達も、驚く。
急に、底の見えない傑物が、ほんわかとした凡夫のような、柔らかさを見せた。
ゴルドは、当然だと言わんばかりに、堂々と言い放っていた。
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いつでも待ってまーす!
ヒロ「さすがゴッド様!家族って大事ですよね!子供を大切に思う!素晴らしいです!」
ヴォルク「お前が言うと、重さが段違いだな・・・」




